実施日 : 2006年05月24日
「東京の木で造る家」プレスツアー
投稿日 : 2013年08月24日
西多摩の森林と住宅施工主をつなぎ、東京の森林を再生する新たな取り組み
国土の7割近くを森林が占めている日本。東京に限ってみても、面積の約4割が森林であり、そのほとんどが西多摩地域に集中している。このように日本は木材の自給が可能であるとも言われる森林国であるにもかかわらず、コスト面や林業の担い手不足等の影響から、実際はそのほとんどを外材(輸入材)に頼っているのが現状だ。2003年度の木材自給率は18.5%。1955年度が94.5%であったことを考えると、この半世紀のうちに日本の林業がいかに大きく衰退したかが分かる。
一方、日本の住宅事情に目を向けると、都市部の集合住宅の好調な販売に影響を受け、伝統的な木造一戸建て住宅の新築着工数は年々減少している。戸建て住宅だけに限れば、その8割以上が依然として木造住宅であるものの、そのほとんどがプレカット材と呼ばれるコンピューターでカット加工された材木を用いており、都市部近郊で伝統的な大工仕事を目にすることはほとんどなくなった。建築業界では、日本が誇る木造建築技術の衰退を嘆く声も多くあがっている。
今年活動10年目を迎える「東京の木で家を造る会」では、木材の川上(西多摩地域の林業家)と川下(首都圏で新たに戸建て住宅を建てる施工主)、それに設計士や製材所、工務店や建具店も独自のネットワークに組み入れることで、東京の木材で家を建てる取り組みを続けている。一般に公開して行う林業体験や勉強会などの定期開催により、その活動への関心は年々高まっており、これまでに手がけた建物はのべ90軒にものぼる。同会の目的は、地元の職人が地元の木材を使って家を建てる本来の姿を取り戻し、東京の自然環境を守ること。地元産木材を使用することで、運搬時に発生する二酸化炭素の量を減らすことができ、結果的に地球の環境負荷を軽減するという調査結果も出ており、エコロジーの観点からも期待が寄せられている。
今回のプレスツアーでは、実際に西多摩の森林を訪れるとともに、同会の活動を支える製材所、工務店、建具店も取材することで、上記のような日本の林業を取り巻く問題点に対し、同会の活動がどのような役割を果たしているのかを考察する。また、実際に自宅を竣工した家庭も訪問し、東京の木で造られた家の住み心地や住まい観についても、家主と設計士から直接話を聞く。
取材内容
○東京の木で家を造る会>> Link
「東京の木で家を造る会」では、林家、製材所、設計士、工務店、そして建主が、おたがいに顔の見える関係で家造りに取り組み、東京育ちの木材で家造りをすることで、山林を育て、ひいては都市環境の保全に役立つことを目的としている。トータルの会員数は200名を超え、独自に木材の流通ルートを確保しているのが最大の強みである。事務局長の稲木清貴氏は、「東京の木で家を建てた人の多くが、その建てるプロセスも含めて大いに楽しんでいるのが誇り」だという。
一方同会では、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という考え方に基づき、今後は「建築」「使用」「廃棄」のそれぞれのステージで、「より環境負荷のかからない家づくり」を目指す。そのため東京の木で造る家における二酸化炭素排出量を想定するなどの取り組みも、独自に始めている。稲木氏は、「木材の地産地消を進めれば、木材にとっても、住む人にとっても、環境にとってもベスト。生涯で最も高い買い物となる“家造り”のプロセスを、もっと多くの人に、主体的に関わって欲しい」と話す。
○西多摩の森林(日の出町)
西多摩はかつて一大林業地であったが、都市部での住宅建築における外材利用の急増にともない同エリアの林業は衰退。昭和40年代には500名をこえるといわれた林業従事者も、現在は100人をきるという数まで減り、60年後、70年後となる木材の収穫時を見据えながら林業を専業で営む林家は皆無に等しい。
西多摩に限らず、全国的に林家が抱える問題は深刻である。諸外国に比べて傾斜がきつい日本の山では、人件費や輸送費などが膨らみ、後継者を育て、林業を維持することは容易ではない。現在では、山に手を入れれば入れるほど赤字が膨らむことを嫌い、下草刈りも間伐も放棄し、「放置林」として山を捨て置く林家も少なくない。こうして健全な状態を保てなくなった山は荒れ、その天然ダムとしての保水力を失い、下流での水害や土砂災害につながる危険すら秘めるようになっている。
今回訪問する日の出町の森林は、羽生卓史氏が所有するもの。「東京の木で家を造る会」に林家として所属する同氏所有の森林では、あらかじめ家を建てる人々に立ち木の状態で木を選んでもらい、「旬伐り」という、一番適切な時期を選んで伐採する方法を採用している。「旬伐り」の際には、関係者が一同に立ち会うことが多く、これにより適材適所に木を余すことなく使い、建主・林家・設計士・製材が同じ時と気持ちを共有することが出来る。
○浜中材木店(日の出町)
「東京の木で家を造る会」に所属する、唯一の製材所。従業員は8名。地元の国産材を主に取り扱い、木材の個性や納入先の要望に忠実に、一本一本職人の手によって製材される。同会に関する業務は全体の2割程度。代表取締役社長の浜中英治氏は「将来的にはこの割合をもっと高めていきたい」と意気込む。浜中氏は西多摩地域の森林についても詳しく、同会の会員が家を建てる時には、建主や設計士立会いの元で木を挽き、木材がどのように使われるかを十分吟味した上で製材。西多摩の林業を正しく伝え、山と建主の距離を縮める重要な役割を果たしている。
一説によると、このまま外材頼みの状況が続けば、中国・インドをはじめとする新興国の隆盛に伴い、世界的な木材争奪戦になるという。「林業は常に50年先、60年先を見つめる仕事。このまま放置林が増えれば、将来木材が不足したときに大変なことになる。そのためにも、今ここで西多摩をはじめとする日本の林業を立て直さなくてはならない」と浜中氏は言う。
○並木工務店(あきる野市)/武井建具店(日の出町)
並木工務店では、現代の建材の主流であるプレカット材を用いず、すべて「手刻み」と呼ばれるオーダーメイド工法により、「東京の木で家を造る会」の建物を手がけている。工務店としての規模は中規模ながら、無垢の木材を生かした伝統工法による家造りは高い評価を得ている。棟梁(親方)が、弟子に技術を継承するという昔ながらの制度を保ち、将来を担う若い職人が多いことも特徴のひとつである。
武井建具店は、西多摩材を扱う、今は数少なくなった建具店のひとつ。見栄え・精度を重要視する建具製造において、「東京にだっていい木があるということをアピールしたい」と、多くの材料ストックと広い加工場でオーダーメイドのすぐれた製品づくりに取り組む。親方は跡継ぎに技の継承を託している。
○岡野邸(福生市)
2004年春に完成した岡野邸は、西多摩産のスギ・ヒノキをふんだんに使用。木造・二階建て約36坪。建主自らが山に入り、林家・設計士とともに木を選び「我家の木」として、家造りに関わった。木造の伝統工法を活かした、木組みが特徴。がっしりとした構造と、無垢の木肌が心地よい空間を作っている。
東京の木で家を造る会事務局長の稲木氏は、「家を建てるお客様の強い思いに支えられて会を運営している」と言うが、岡野邸をはじめ、同会を通じて建てられた家に住む人の多くは環境意識や住まいに対する意識が高く、その後も継続的に同会のイベントに参加し今後家を建てる人への情報提供にも協力するなど、会の運営において欠かせない存在となっている。
今回のツアーでは、岡野望美氏と、岡野邸の設計を担当した新井氏に取材し、実際に「東京の木で造った家」について、そこに込められた思いを詳しく聞く。
実施要領
1.日程:2006年5月24日(水)
8:00 JR立川駅(中央線・南武線)北口集合
8:10 立川発(貸切バス)
(バス車中にて、「東京の木で家を造る会」事務局長・稲木清貴氏より概要説明)
9:40-11:00 西多摩の森林視察・取材、林家・羽生氏へのインタビュー
11:15 浜中材木店 到着
11:15-11:50 西多摩材の製材風景 視察・取材
11:50-12:30 浜中英治代表取締役社長との昼食懇談
13:00 並木工務店 到着
13:00-13:40 並木工務店 視察・取材
13:50 武井建具店 到着
13:50-14:30 武井建具店 視察・取材
14:50 岡野邸到着
14:50-16:00 岡野邸 視察・取材
建主の岡野望美氏、設計士の新井則夫氏へのインタビュー
16:30 JR立川駅着後、解散
2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用:1人1,500円(バス、昼食代等含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後程参加者にご連絡します。
4.募集人数:先着順12名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が12名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定
することがあります。
5.参加申込:
FPCホームページ
「メディア・アシスタンス」の「プレスツアー情報」ページより直接お申し込み下さい。
(「申し込み」ページへはユーザー名:fpcj、パスワード:membersでアクセスできます)
6.FPC担当:山代・小泉(Tel: 03-3501-3405)
7.備考:
(1)写真・TV撮影は担当者の指示に従ってください。
(2)FPCはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
(3)当日は動きやすい服装、歩きやすい靴でご参加ください。