プレスツアー(案内)

一覧に戻る

実施日 : 2020年02月26日 - 27日

案内:福島プレスツアー

投稿日 : 2020年02月07日

ホープツーリズム

「福島のありのままの姿(光と影)や復興に挑戦する人々との対話、

世界初の複合災害からの復興へのチャレンジストーリー」にフォーカスした学びの旅


 

 

人口減少、高齢化、コミュニティの分断、エネルギー問題。日本だけではなく、世界中の国や地域が今後抱えるであろうこれらの課題を、福島県は震災と原発事故により一度に経験することとなった。未曾有の災害を経験し、数々の難題を前に、「福島だけの問題」ではなく、日本社会全体が取り組むべき課題として未来に向けて挑戦が続いている。


本ツアーでは、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から9年を目前に控えた福島県を訪れ、コミュニティや農業の再生と共に高齢者や障がい者の活躍の場を作る取り組みや、震災・原発事故の経験を生かして、世界レベルの人材育成に挑む教育現場、また住民目線での継続的な情報発信の取り組みなどを取材する。

 

 

【取材内容】


226日(水)


1.世界初の複合災害を経験した福島でしか学べない新しい学びの旅「ホープツーリズム


 地震、津波、原発事故、風評被害を一度に経験した世界で唯一の場所である福島県が、「今、福島でしか学べないことがある」として取り組んでいるのが「ホープツーリズム」だ。福島の「ありのままの姿(光と影)」を見て、「復興に向け挑戦し続ける福島の人々との対話」を通して、「震災・原発事故の教訓を未来にどう生かすのか、他人事から自分事へ」と考えるまでを一つのツアーにまとめる。全国の中学・高校生を始め、企業、個人に向けて企画し、留学生を含む外国人旅行者などの参加者も年々増えている。4年目を迎える今年度は約50件のツアーが開催される予定。

 今回のツアーでは、ホープツーリズムのプログラムの中から、元東京電力社員、まちづくり団体、住民、教育現場、農業再生と高齢者・障がい者の仕事づくりなど、復興を担う各地域のリーダーやチャレンジする人々を取材する。

 

「ホープツーリズム」について福島県観光交流課から説明を受け、福島をフィールドとした新しい学びのプログラム造成に向けた取り組みを取材する。

 

 

 

2. 町村を越えた新しい復興の形と住民目線の情報発信拠点「ふたばいんふぉ(富岡町)

 

 2017年4月に一部を除き避難指示が解除された双葉郡富岡町。町内でホテル業を営む平山勉(ひらやま・つとむ)氏は、20118月、避難でバラバラになってしまった町民や全国の人々に向けて「富岡は負けん!」という横断幕を、24時間誰でも見ることのできるライブカメラ前の歩道橋に設置し、注目を浴びた。その後、双葉郡内で誰も住まなくなった住宅の片づけや草刈りなどを行う「相双ボランティア」のほか、離散した双葉郡の住民が情報を共有し、助け合える場として「双葉郡未来会議」、住民目線での正しい情報を発信したいと「ふたばいんふぉ」を立ち上げた。自ら経営するホテルの事業再開にも取り組みながら、双葉郡全体の今後を見据え、行政では対処できない、町村を超えた支援と情報発信へ身を投じてきた。

 中でも「双葉郡未来会議」は、避難した双葉郡の住民がもう一度集まり年齢や肩書を超えて課題を話し合い、情報を共有してきた。若い人が増えてきており家を失った双葉郡出身の学生同士が再会できる貴重な場ともなっている。

 「双葉郡未来会議」が運営する「ふたばいんふぉ」は、メディアやネットに真実とは異なる情報が蔓延していると懸念をいだいた平山氏が、「住民自らが正しい情報を調べ、共有し、伝えたい」と、自費で建設した双葉8町村の情報発信拠点だ。2018年にオープン、国内外から訪れる年間約1,000人を相手に、Uターンした双葉郡出身の若者を含むスタッフが、ありのままの姿を伝えている。

 

平山氏から、震災・原発事故からこれまでの道のりや双葉郡の現状と共に、「ふたばいんふぉ」と「双葉郡未来会議」の取り組みと課題について話を聞く。



 

3. 「帰還困難区域」からの再生へ(大熊町)


 大熊町は、福島第一原発の立地自治体である。町全域が避難指示区域に指定されたが、20194月に一部地域の避難指示が解除された。

 避難指示解除を見据え、町は「避難先での安定した生活の確立」と「帰町を選択できる環境整備」に力を入れてきた。放射線の影響で制限されてきた、避難先への墓地の移動や、避難により連絡先が分からなくなってしまった町民への電話を取り次ぐサービスなど、避難が長期化する大熊町ならではの、住民に寄り添った新しい行政サービスも生まれている。また、避難先での定住を決めた元住民にも町に関する情報提供を続けている。

 帰町に向けての環境整備については、大川原地区を復興拠点として、町役場の新庁舎のほか、帰還者や移住者向けの住宅が整備され、昨年12月時点で56世帯が居住している。今春のJR常磐線全線開通に伴う駅周辺の避難指示解除に向けた新しいまちづくりも本格化している。未だ9,000名近い町外に避難している町民も、帰町を選ぶ町民も、全てが安心して暮らしていくための、町の挑戦は続いている。

 

大熊町役場にて、おおくままちづくり公社・髙田事務局長から、現在の復興状況や課題について話を聞くと共に、避難指示解除から約1年が経過する大川原地区を視察する。


 

 

4.(一社)AFW、元東京電力社員が問いかける原発と地域社会


 元東京電力の社員で、震災当時は福島第二原子力発電所に勤務していた吉川彰浩(よしかわ・あきひろ)さんが代表を務めるのが、一般社団法人AFW(Appreciate FUKUSHIMA Workers)。原発事故を社会全体で考えるものにしたいと、2018年、国の協力を得て現地調査をし、民間企業と共同で持ち運び可能な第一原発のジオラマを作成した。全国での講演や福島を訪れる人々との対話の場でこのジオラマを使用し、原発をより身近に感じながら廃炉問題などについて考えてもらっている。「東電社員の立場では言えないことを、自分が伝えたい」と、原発で働いていた者として、また一住民としての経験を真摯に伝えている。

 震災後、多くの同僚が東電を辞めた。東電の社員というだけで周囲からバッシングを受け、堂々と外を歩けない日々だったという。吉川さんも2012年に東電を辞め、原発内で働く同僚へ物資を送る活動を始めた。それと同時に、住民の声を拾い上げ、国や関係機関との間に立ち、橋渡し役を担ってきた。その結果、経産省の廃炉に向けた中長期ロードマップに初めて「地域の発展」に言及する文言が加えられたという。

 「原発で働いていた者として、伝え続ける責任がある」。後悔の念を抱えながら「原発は社会ともっと繋がりあうべき場」であるとの信念のもと、第一原発のジオラマを囲んでの将来を担う学生たちとの対話を通じて、原発事故の教訓を伝え続けている。

 

吉川氏へのインタビューを通して、元東電社員及び双葉郡の住民としての思いやジオラマを活用した対話活動について取材する。


 

227日(木)


5.復興を担う国際人材を育成する福島県立ふたば未来学園高等学校(広野町)


 ふたば未来学園高等学校は、震災後休校していた双葉郡内の県立校5校を集約し、双葉郡の教育再生のシンボルとして20154月に広野町に開校、中学校は20194月に開校して併設型の中高一貫校となった。多様な生徒に対応し、幅広い学びを可能とした高校は、開校とともに文科省によって福島県内で初めてスーパーグローバルハイスク―ル(SGH)に指定され、国内外での研修や地域での実践活動を通して、復興を担う国際的な視野を持つ人材の育成に取り組んでいる。バドミントン専用体育館を有するなど施設や環境が整っており、バドミントン世界ランク1位の桃田賢斗選手も卒業生(旧富岡中学・高校)の一人。

 独自の学習として、生徒自ら多面的に地域の復興の課題を見つめ、立場や考え方の違いによる課題を表現する舞台を創り上げる「演劇」や、解決策を考える「未来創造探究」では、地域コミュニティ再生や少子高齢化などの課題研究に取り組み、その研究成果を国内外で発表している。さらに、校舎内で高校生が部活動として20196月よりカフェを運営し、地域活性化に取り組む住民やNPO関係者などでにぎわっている。カフェチームは、同年8月に「第4回全国高校生ソーシャルビジネスプロジェクト(SBP)チャレンジアワード」の文部科学大臣賞を受賞した。

 副校長の南郷市兵氏は、民間企業に就職後2010年から文部科学省に出向。復興担当として、NPO、企業、大学、国際機関等と連携しての学校支援のほか、復興を担う力を育成する創造的復興教育に取り組み、東北各校のカリキュラム転換を推進。震災・原発事故の影響を受けた双葉郡の教育再生の柱となる中高一貫校の開校に尽力し、20154月に副校長に就任。双葉郡から「新しい教育モデルを創る」をテーマに挑戦を続けている。

 

南郷副校長から、学園の革新的な取り組みについて聞き、カフェや校舎内施設などを視察する。また、海外研修に出発直前の学生へのインタビューを予定している。(現在調整中)


 

 

6.津波・原子力災害の爪痕が残る浪江町(請戸小学校~大平山霊園)


 福島県浜通り(沿岸部)北部に位置する双葉郡浪江町は、20173月末に帰還困難区域を除き避難指示解除となった。震災前は2万人を超えていた町の人口は、201912月の時点で1,734人、町民の帰還率は10%以下にとどまっているが、現在毎月2030名ずつ増加している。町は全国に避難した住民が再び町に戻れるよう、住民の帰還を促す環境作りを一歩ずつ進めている。

 請戸(うけど)地区は、津波で127人の命が奪われ壊滅的な被害を受けただけでなく、震災翌日に原発事故による避難指示が出された場所。現場からは、廃炉に向けた作業が進む福島第一原発が遠望できる。海岸から300mほど離れたところにあり、津波で校舎1階や体育館が被災した町立請戸小学校の旧校舎は、震災当時の姿を残している。請戸小学校では、地震発生直後に校舎にいた児童82名・教職員13名が互いに助け合い走って2㎞先の高台へ避難、全員が無事だった。町は20193月に教訓を伝える震災遺構として校舎を保存・活用することを正式に決定。

 また、今年4月にオープン予定の魚の仕分けや競りなどができる水産業共同利用施設が請戸漁港に完成したり、一部の漁船が戻るなど、復興に向けた動きが活発化している。漁港近くでは、盛り土の上にいずれは防災林となる木の苗を植えた場所も見られる。

 

◎沿道の家屋や店舗の入り口に施されたバリケードや警備員が立つ様子など、一部帰還困難区域となっている国道6号の風景を車窓から見ながら浪江町に入る(国道6号を走行中に車両を降車しての撮影は不可)。

◎地元住民の案内のもと、請戸小学校の外観(敷地内は立ち入り禁止)、請戸地区を見渡せる高台にあり「東日本大震災慰霊碑」が建立された大平山霊園を視察する。

◎2016年に新たな住民交流の場として開設した、浪江町役場敷地内にある仮設商業施設「まち・なみ・まるしぇ」で昼食をいただく。


 

7.NPO法人 Jinが挑む「花のまち」(浪江町)


 震災後、浪江町は「花のまち」として花の一大産地化を目標に掲げ、花卉(観賞用植物)栽培に力を入れている。「土地を活用した農業をやりたい」との想いで震災後に花卉栽培を始めたNPO法人Jinの代表の川村博(かわむら・ひろし)氏は、高品質なトルコギキョウ等の栽培に取り組んでおり、2017年にフラワーオークションジャパン(FAJ)オブ・ザ・イヤーの優秀賞を受賞した。

 川村代表は、震災前は浪江町で高齢者や障がい者のデイサービスやリハビリを行う事業所を運営。震災後、利用者とともに町から避難したが、震災から2年後、町への立ち入りが可能になった浪江町にいち早く戻り、事業所の隣に農園を造り、農業による町の復興を目指した。手始めに野菜を作ったが、基準値を上回る放射性物質を検出したため出荷を断念。福島県からの提案もあり、風評被害が少なく、収益性の高い花での営農を再開した。ビニールハウスでのトルコギキョウ等の栽培などで花卸市場からも注目されるようになり、川村代表は町全体で1億円の出荷が当面の目標と意気込む。一方、避難指示が解除されても耕作する若い人は戻っておらず、荒地が点在する状況で、今後、管理のための補助金がなくなれば農地を放棄する人がさらに増えるかもしれないと懸念する。観賞用の花木を植えると、季節が来れば一面の花畑になり、観光客や若い人たちも呼び込めるかもしれないと期待する。Jinでは高齢者や障がい者に加え、有給の研修生を受け入れており、中には栽培者として独立した人もいる。「若い人に営農で稼げると思われる環境を整えたい」と川村代表の挑戦は続く。

 

高齢者や障がい者らが自分にできることを担い、皆が豊かに暮らせるよう、ともに復興の道を歩む姿は、「地域共生社会」の実現に向けた日本の福祉の近い将来の縮図ともいえる。「人が元気になる取り組み」を続け、花卉栽培の第一人者となった川村代表から、営農を通したまちづくりや真の復興への課題や夢などを聞く。




 

 

【実施要領】


1.日程

※日程は調整中のものであり、予告なく変更になる可能性があります。


<226日(水)>

8:00-10:51     上野駅~いわき駅(ひたち3号)~広野駅(常磐線)

11:10-11:50    福島県よりホープツーリズムに関する説明(「ハタゴイン福島広野」会議室)

11:50-12:30    昼食(弁当)

13:10-14:20    ふたばいんふぉ(富岡町)

14:40-16:00    大熊町役場・大川原地区

17:10-18:30   (一社)AFW(「ハタゴイン福島広野」会議室)

ハタゴイン福島広野泊>

 

<227日(木)>

8:20           宿舎発

8:30-9:50       福島県立ふたば未来学園高等学校

          国道6号通過(一部帰還困難区域通過)

11:00-12:10    請戸地区(請戸小学校~大平山霊園)

12:20-13:00    昼食

13:10-14:20    NPO法人 Jin

14:30-15:30    福島いこいの村なみえ(福島県関係者との意見交換)

15:30-17:30   (バス移動)

18:16-19:48    福島駅~東京駅(やまびこ154)

 

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

 

3.参加費用:10,000

(全行程交通費、宿泊費(夕食、朝食込み)、昼食を含む)

*お支払い方法、キャンセル料等については、参加者にご連絡します。

 

 

4.募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TV12名まで)

※申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

 

5.FPCJ担当:大宮、山田

Tel: 03-3501-5251E-mail: sc@fpcjpn.or.jp

 

 

6.備考:

1)本プレスツアーは福島県が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。

2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。

3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

4)福島県とFPCJは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。

5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。

 

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信