プレスツアー(案内)

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実施日 : 2012年09月04日

案内:プレスツアー「首都圏直下型地震に備える東京」(2012年9月4日)

投稿日 : 2013年08月23日

今年4月、東京都は、首都直下型、マグニチュード7.3の東京湾北部地震が発生した場合の被害想定を新たに発表した。
これよると、想定される都内の死者数は約9,700人、23区内の7割が震度6強以上になるという。揺れによる死者は約5,600人、火災による死者は、木造住宅密集地域を中心に約4,100人に上る想定だ。

 

こうした被害想定を基に、東京都は、倒壊や火災のリスクが高い木造住宅密集地域への対策や、建築物の耐震化を推進するとしている。さらに、昨年の東日本大震災で首都圏でも多くの帰宅困難者が発生した経験から、行政(区)と企業と間で災害時の帰宅困難者受け入れに関する協力が進められている。

 

また、災害時に被害を最小限に抑え、命を守るには、個人の意識(自助)や近隣住民同士の助け合い(共助)が鍵となることが指摘されており、3.11以後、特に地域のコミュニティづくり、絆の重要性が改めて注目されている。なお、1995年の阪神大震災では、生き埋めや閉じ込められた後に助かった人のうちの97.5%が、周囲の人々(家族・隣人・友人・通行人)に助けられたか(62.6%)、自力で脱出した(34.9%)ことが知られている。(救助隊による救出は1.7%に留まった)。

 

本プレスツアーでは、東京大学地震研究所の酒井慎一准教授に、東京都が発表した被害想定の概要について説明を受けると共に、この被害想定の算出に貢献した地震観測網を視察する。次に墨田区を訪問し、重要な課題である木造住宅密集地問題と帰宅困難者問題に対する取組みの事例を取材する。墨田区は、古くからの木造住宅密集地域が残り、危険度ランキング都内ワースト10に入っているが、日頃から災害時に助け合えるコミュニティを築く地域住民と行政によるユニークな活動を見ることができる。同じく墨田区には今年開業した世界一の高さのタワー、東京スカイツリー(r)があるが、区はこの中にサテライト防災拠点「危機管理ベース」(※)を設け、避難指示や物資供給の新たな基地としている。また、区はスカイツリーの高さ260メートルの地点に高性能カメラを取り付けており、災害時には、どこで火災が起きているかなどの映像情報がリアルタイムで区の防災センターに送られ、避難指示に役立つ仕組みになっている。

 

本ツアーではこれらの現場を取材する。1923年に甚大な被害をもたらした関東大震災が発生した9月1日は日本政府が定めた「防災の日」であり、8月30日~9月5日は防災週間に指定されている。このタイミングを捉え、首都圏直下型地震に備える東京の姿を追う。

 

 

*本ツアーは、フォーリン・プレスセンターが主催・企画運営するものです。

 

<取材内容>

 

1.東京大学地震研究所 酒井慎一准教授ブリーフィング(当センター会見室)
~首都圏の小・中学校296か所に地震計を設置、新たな被害想定の算出に貢献~

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/shuto/
4月に東京都が発表した「首都圏直下型地震の新たな被害想定」の算出に貢献したのが、東京大学地震研究所を中心に、文部科学省が2007年から進めてきた「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」の一環で整備された地震観測網(MeSO-net)である。観測場所の確保が難しい首都圏において、小・中学校の校庭に地震計を埋設するというアイデアにより、2~5キロ間隔で、地震計が296か所に設置され、大規模な観測網を整備することができたのだ。校庭などに埋め込まれた地震計が捉えた地震のデータは即座に地震研究所に送られ、地下構造を明らかにしていった。これで新たに分かったのが、地震の発生源であるプレートとプレートの境界点の位置である。従来考えられていたよりも境界点が地表に近いことが判明したため、被害想定が見直されたのだ。
東京大学地震研究所では、地震計を設置してある学校からのリクエストに応え、子供たち向けに出張授業を行っている。酒井准教授によると「自分の学校に地震計があることが子供たちの関心を高めるのに役立っており、特に震災後、子供たちの意識が変わってきている」という。
冒頭、東京都が発表した首都圏直下型地震の新たな被害想定の概要について、酒井准教授の説明を受ける。次に、小中学校に設置された地震観測網や、自然災害の多い日本における防災教育の意義、3.11後の子供たちの意識の変化などについて話を聞く。

 

 

2.墨田区立横川小学校 校庭に設置された地震観測装置の視察 
http://www.sumida.ed.jp/yokokawasho/
東京スカイツリーに隣接する墨田区の横川小学校を訪問し、東京大学地震研究所が設置した地震観測装置を酒井准教授の案内で視察する。また、同校の和田眞樹子校長や子供たちにも話を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.墨田区役所 防災センター
~「危険度の高い」まちを、最新技術と人の絆で守る墨田区~
http://www.city.sumida.lg.jp/sumida_info/bousaitaisaku/index.html
江戸時代(1603年~1868年)から栄えてきた下町情緒溢れる墨田区。大相撲が行われる両国国技館もある伝統的なたたずまいが残る一方、今年開業した世界一高いタワー、東京スカイツリーが新たな観光スポットとして人気を集めている。

 

 

 

 

 

・木造住宅密集地対策
墨田区には、老朽化した木造住宅が密集する地域が多くある。1950年代~70年代の高度経済成長期に無秩序に建物が造られたのが原因とされる「木造住宅密集地域」は、地震の際の建物倒壊の危険性が高いだけではなく、道幅が狭く、隙間なく家屋が立ち並んでいるために火災発生時の被害拡大のリスクも高い。東京都が発表した「総合危険度ランキング」では、ワースト10位以内に墨田区の3つの地域がランクインしている。この「危険」な地域を抱える墨田区では、全国に先駆けて「不燃化促進事業」を進めており、延焼を防ぐための道路の拡張や公園や広場の整備を行っている。さらに、いざ災害が発生した時に住民同士が助け合えるコミュニティづくりを促進するユニークな試みも行われている。

 

 

・東京スカイツリーの高さ260メートル地点に設置されたカメラが、被害状況をリアルタイムで捉える
墨田区では、区内数カ所の高所に防災カメラを設置。地震による大規模火災に備えている。カメラが捉える映像で火の手が上がっている場所や風向きを迅速に把握し、的確な避難対策を講じるのに役立つ仕組みだ。東京スカイツリーの高さ260メートル地点にも2台の高性能カメラを設置し、区内360度全てをカバーしている。災害時には、これらのカメラが区内全域の様子を撮影し、区役所内の防災センターに映像を届け、どこが危険でどこが安全かといった判断の材料を常時伝える。
墨田区役所内の防災センターを訪問。区の担当者より、区の防災政策の概要、木造住宅密集地域対策、帰宅困難者対策、東京スカイツリーとの連携について話を聞く。また、スカイツリーに設置された高所カメラから届けられる映像を映し出し、遠隔操作でカメラの角度やズームを変えるデモンストレーションを視察する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.防災拠点としての東京スカイツリー(帰宅困難者対策・企業との連携)
~墨田区がスカイツリー内にサテライト防災基地を設置~
~災害情報を収集するスカイツリー高さ260メートル地点のカメラ~

http://www.city.sumida.lg.jp/kakuka/kikikanrita/bousai/info/keikaku23.files/
keikaku23.pdf

http://www.tokyo-skytree.jp/

東京スカイツリーの開業によって、墨田区には観光客を始め、より多くの人が訪れている。このような状況で大規模な災害が発生した場合、多くの帰宅困難者が発生することが予想される。そのため区では、東京スカイツリー周辺を新たな防災の拠点として位置づけ、スカイツリー内(中二階部分)に、区の防災センター(墨田区役所内)の補完機能を持った「危機管理ベース」を設けている。避難の指示や物資供給の拠点となる施設で、食料等も備蓄される。スカイツリーができたことで、高さ260メートルの2台のカメラと、新たな「危機管理ベース」という新たな機能が加わり、区の災害対応力や情報収集能力が強化されたと言える。
右写真:(c)TOKYO-SKYTREE
墨田区防災課責任者の案内でスカイツリー内の「危機管理ベース」を視察する。また、スカイツリーの協力を得て、スカイツリーの避難階段も視察する。

 

 

5.墨田区向島 一寺言問(いちてらこととい)地区(木造住宅密集地対策)
~「危険」地域をコミュニティの力で「安心」なまちに変える~

http://hitokotokai.com/
東京都墨田区の一寺言問(いちてらこととい)地区は、細い路地に老朽化した木造建築物が並び、地震や火災などの災害危険度では都内でも最も高い部類に入っている(都内ワースト10位)。その一方で、歴史ある神社仏閣、料亭街、路地裏などがあり、風情を感じるまちでもある。
この地域で、地域住民による組織「一言会(ひとことかい)※」が結成され、「百年後に残せるまち」を目標に、もしもの時にも助け合えるようなコミュニティ内の人間関係を日頃から構築していくためのユニークな活動を行っている。
日本全国には町会と呼ばれる住民によって組織される任意団体があるが、多くの場合、長年その地域に住む人々が中心で若い世代の参加が少なく、高齢化が問題となっている。「一言会」では、新たにマンションに入居した住人など、最近地域に移り住んで来た人々にもコミュニティに参加して貰うために、子供向けに小学校での防災訓練を主催している。子供を対象にすることで、その親である若い世代も多く参加し、ラップや新聞での防寒や、廃油を使ったランタン作りなど、災害時の避難を想定した訓練を行った。特に3.11以降、新しい住民に意識の変化が見られ、町会組織に入る若い世代も増えているという。なお、東日本大震災の際は、都心から千葉方面に帰る途中の帰宅困難者をこの地域の小学校でいち早く受け入れたが、その時にも町会の婦人部が小学校に非常食の作り方を教えに行き、日頃の訓練の成果を発揮した。

 

また、「一言会」では、墨田区と共に、路地に、雨水供給装置(「路地尊」(ろじそん))や防災小緑地(「有季園」(ゆうきえん))の整備を進めている。雨水供給装置は、隣接する民家の屋根に降った雨を地下のタンクに溜め、手押しポンプで汲み上げる仕組みで、災害時には濾過して飲料水にしたり、消火に用いたりすることもでき、防災用具を収納するストリートファーニチャーにもなっている。雨水供給装置も防災小緑地も、真の目的は、日頃から近隣の住民同士が植物の手入れやおしゃべりをする場としてコミュニティの形成・維持に貢献することだという。さらに「一言会」では、9月から、町会と協力して地域の空き家の実態調査を行う。高齢化が進み、老朽化した木造住宅が空き家として放置されると、倒壊や火事の危険が高まる。この実態を把握し、新たな借り手を探すなど、これからの対策を検討していきたいという。これらの活動には、建築の専門家や、建築学や社会学を学ぶ大学生も参加している。

 

※「一言会」(正式名称:「一寺言問を防災のまちにする会」) 佐原滋元(さはらしげもと)さん
「一言会」は、墨田区の一寺言問地区(約7ha、人口12,000 人弱)を対象に、6 つの町会と、有志の会である「わいわい会」とで結成されている。中心メンバーである佐原さんは、江戸時代に、この地の花の名所である庭園「向島百花園」を作った佐原鞠塢(さはらきくう)の8代目の子孫にあたる。佐原さんは、「ハードを整えても、助け合う気持ちがなければ防災は成り立たない。どんな災害が来ても安心して暮らせるコミュニティを作ることが大切だ」と語る。
地域住民の組織「一言会」のメンバーの皆さんに話を聞いた後、佐原滋元さんの案内で、一寺言問地区の木造住宅密集地域を歩き、路地に整備された雨水供給装置や防災小緑地などを視察する。

 

 

◎本プレスツアーは、参加者に経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<実施要領>

 

1.日程案: 2012年9月4日(火

 

8:45   受付開始
9:00    東京大学 地震研究所 酒井准教授ブリーフィング@フォーリン・プレスセンター
     (東京都千代田区内幸町2-2-1 日本プレスセンタービル6階)
10:15   借り上げ上げバスで移動(フォーリン・プレスセンター発)
10:45   墨田区立 横川小学校 地震計視察
12:10   昼食
13:20   墨田区役所防災センター
14:15   東京スカイツリー 墨田区「タワー危機管理ベース」など視察
15:35   借り上げバスで移動
15:45   墨田区 一寺言問地区訪問
      ・「一言会」佐原滋元氏、ほかメンバーによるブリーフィング
      ・木造住宅密集地域の散策(佐原氏ご案内)
17:15   借り上げバスで移動
17:45   日本プレスセンタービル着

 

2.参加資格:  外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費用:  1人2,000円(全行程交通費、昼食費を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4.募集人数:  10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5.FPCJ担当:  吉田、石川(TEL: 03-3501-3405)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
(了)

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