実施日 : 2012年10月01日 - 02日
案内:静岡プレスツアー「世界文化遺産登録を目指す富士山」(2012年10月1-2日)
投稿日 : 2013年08月23日
~山を神として畏れ敬い、その恵みと共に生きる~
日本のシンボルとも言える富士山。標高3,776 メートルの日本最高峰であり、美しい円錐形の姿で世界中にその名を知られている。年間の登山者数は約32万人(2010年)、外国からの観光客も多く訪れる。浮世絵を始め、古くから多くの芸術作品に描かれ、親しまれてきた一方、荒ぶる力を内側に秘めた活火山でもある。約40~10万年前から噴火や溶岩の流出を繰り返しながら現在の姿に形を変えていったとされており、人々がその力を畏怖し、敬ってきた歴史がある。紀元前27年には噴火を鎮めるために山麓に神社が建てられと言い伝えられており、それを起源とする富士山本宮浅間大社は、全国に1,300余りある浅間神社の総本宮である。富士山を神体として祀る同社には、火を鎮める水の神として「コノハナノサクヤヒメノミコト」も共に祀られている。古代から聖なる山として富士山を崇拝し、根付いていった富士信仰は、時代と共にその形を変えながら脈々と現代まで受け継がれてきた。
富士山は、畏れの対象であると同時に、人々に多くの恵みを与えてきた。その地下に蓄えられた豊富な伏流水が周辺地域に1日あたり約450万トンもの豊富な湧水もたらし、農業や産業を支えてきたのだ。
このように、人々の営み、文化、歴史に大きな影響を与えてきた富士山を守り、関連する文化遺産を未来に伝えていこうと、静岡県を始めとした地元自治体が中心となり、世界文化遺産への登録を目指す取組みを行っている。今年8月29日から9月5日には、UNESCOの諮問機関であるICOMOS(国際記念物遺跡会議)による現地調査が行われた。この現地調査と日本側が提出した推薦書などを参考に、ICOMOSは来年5月にも評価結果を勧告し、続く6月にプノンペンで開かれる世界遺産委員会で、最終的に登録の可否が決まる。
本プレスツアーでは、富士山本宮浅間大社を訪れ、富士山の歴史・歴史的背景について取材する。静岡県庁では、知事に富士山の世界文化遺産登録を目指す意義について聞くと共に、災害対策本部担当者より、防災先進県である静岡県の取組みについて説明を受ける。更に、富士山や周辺河川の環境保全に取り組んできた市民グループや、富士山の湧水の恩恵を活かした酒造りや養鱒の現場も取材する。
※本プレスツアーは静岡県とフォーリン・プレスセンターが共催、企画運営しています。
<取材内容>
1.富士山樹空の森
~富士山の誕生から現在に至る大地の歴史を知る~
http://jukuu.jp/
富士山の情報発信などの役割を担う御殿場市の新しい形の公園施設。立体スクリーンになっている富士山麓の模型に映し出される映像などを通じ、富士山の誕生から現在に至る大地の歴史や、活火山の仕組みについて学べるビジターセンターがある。
本プレスツアーでは、最初にこの施設を訪れ、富士山についての基本的な知識を得る。また、「富士山」の世界文化遺産登録を目指す取組みについて静岡県の世界遺産推進課担当者に説明を受ける。
2.富士山本宮浅間大社
~富士山を神として祀る、古代からの信仰の中心地~
http://fuji-hongu.or.jp/sengen/
富士山を神体として祀る神社で、古くからの富士信仰の中心地。全国に約1,300ある浅間神社の起源となる総本宮である。平安時代から信仰を集め、江戸時代には徳川家康の保護を受けた。現在の場所に建立されたのは806年で、東海地方最古の神社である。その起源は、富士山の大噴火により周辺地域が荒廃していた時代に、第11代垂仁天皇がこれを憂い、紀元前27年に山すそに社を築き、山霊を鎮めたことにさかのぼると言い伝えられている。これにより噴火が静まり、人々は平穏な日々が送れるようになったという。境内は広大で、約17,000㎡の本宮のほか、富士山の8合目以上の約385万㎡を御神体として管理している。本宮の本殿は徳川家康による造営で、国の重要文化財に指定されている。また、本宮境内には富士山の湧水が湧き出している湧玉池があり、国の特別天然記念物に指定されている。
*湧玉池(信仰に関する構成資産候補)
溶岩の隙間に蓄えられた富士山の伏流水が境内に湧き出したもの。一年を通じて清冽な湧水が湧き出し、富士宮市街を流れる神田川の水源ともなっている。2008年には環境省の「平成の水百選」に選定された。富士登山者のみそぎの場ともいわれる。国指定特別天然記念物。
同社を訪れ、日本で古代から信仰の対象として富士山が崇められてきた歴史や文化的背景について、中村 徳彦(なかむら のりひこ)宮司より説明を受ける。
3.静岡県 川勝 平太 知事による会見
~日本のシンボル、富士山を世界遺産に~
http://www.pref.shizuoka.jp/governor/
「国民の財産であり、日本のシンボルである富士山は、その類まれなる美しい自然景観により人の心を打ち、芸術や信仰を生み出してきました。2009年、偉大なる富士山を抱く地域において、富士山について学び、考え、想いを寄せ、富士山憲章の理念に基づき、後世に引き継ぐことを期する日として、2月23日を「富士山の日」とする条例を制定しました。
「富士山の日」の制定を契機として、『富士山百人一首』や『富士山万葉集』の編纂をはじめとした普及活動のほか、豊かな富士山の自然環境の保全活動を官民共同で進めるなど、富士山を後世に引き継ぐための運動に取り組んでいます。」
川勝 平太(かわかつ へいた)知事との会見を実施。富士山世界遺産登録に向ける想いなどについて訊く。
4.静岡県災害対策本部 総合司令室
~日本の防災先進県としての取組み~
http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/index.html
静岡県では、1976年に「東海地震説」が発表されて以来、地震およびこれに関連して発生する各種の災害に対し、国や市町村、自衛隊など関係機関との連携の下で30年以上に渡り、その備えを進めてきた。
この間、最新の知見に基づき、地震が発生したときの揺れの大きさや津波の状況を推測し、人的・物的被害の状況や、災害発生から復旧・復興へのシナリオなどを想定した静岡県独自の「地震被害想定」をこれまでに3回とりまとめている。この情報を基に、被害の軽減や応急対策の迅速化など各種の対策を構築・推進してきた。東日本大震災(従来の想定をはるかに超えた巨大な地震と津波)の発生を踏まえて国が南海トラフ巨大地震の震度分布や津波高・浸水域、人的・物的被害等を発表するなか、静岡県においても新たな地震・津波対策の目標を定めるため、現在、新たな(第4次)被害想定の策定に取組んでいる。
また、大規模災害時は近隣からの応援が困難なことから、在日米軍との連携、「顔の見える関係づくり」も強化している。5月には、ジョン・ルース駐日米国大使の立会いのもとで「下田ミーティング」を開催。米軍と国・県の防災関係者等が、「トモダチ作戦」など東日本大震災における日米連携に関する課題、教訓、それを今後の災害対応に生かすための方策について意見を交わしたほか、9月2日に行われた「静岡県総合防災訓練」では、米軍の災害派遣医療チーム(DMAT)と日本の自衛隊による放射線量のモニタリングや、がれきで通れなくなった道路の復旧など実践的な訓練を共同で行い、連携を強化している。このように
静岡県は、防災先進県として将来の大規模災害に対する備えを続けている。
静岡県庁内にある危機管理・災害対策の拠点を訪問、危機管理部 岩田 孝仁(いわた たかよし)危機報道監より、静岡県の災害対策(火山対策を含む)について説明を受ける。
5.NPO法人グラウンドワーク三島 専務理事・事務局長 渡辺 豊博 氏
~富士山の自然環境と川を守る市民の活動~
http://www.gwmishima.jp/
富士山の湧水が豊富な静岡県三島市は、古くから「水の都」と呼ばれてきた。しかし1960 年代の経済成長期以降、湧水量が減少し、河川の環境は悪化した。これに危機感を覚えた渡辺氏は、1992年に「グラウンドワーク三島」を立ち上げ、市民の先頭に立ち、市内にある源兵衛川の浄化や、一時姿を消した水中花「ミシマバイカモ」(藻の一種)の再生に取り組み、住民参加による遊水池の整備も進めてきた。
また、渡辺氏は、三島市の水を守る市民運動を行ううちに、最終的には水源である富士山の環境改善なくしては、三島の水の再生は成就できないとの信念に至り、年間約5,000 人が参加する富士山清掃活動などを企画してきた。長年問題となってきた年間30万人とも言われる登山客によるし尿問題に対し、環境バイオトイレを設置するプロジェクトにも取り組んでいる。
市内の源兵衛川を訪れ、「グラウンドワーク三島」のボランティアメンバーによる活動の様子を視察すると共に、専務理事・事務局長 渡辺 豊博(わたなべ とよひろ)氏に活動の理念や、富士山および河川の環境保全に関する話を聞く。
6.柿島養鱒株式会社 二代目 岩本 いづみ 氏
~富士山の湧水が育むニジマス養殖を地元の循環産業に~
http://kakishima-troutfarm.com/index.html
静岡県はニジマスの生産量で日本一を誇り、その生産者の多くが富士山周辺で湧水を活用した養殖を行っている。通常ニジマスは150g程度のものが多いが、静岡県産のものは約1.5倍にもなる。これは、独特の育成方法とともに、富士山の湧水が年間を通じてニジマス養殖に適した水温を保っているためだと言われている。
静岡県富士市の柿島養鱒株式会社は、ニジマスやイワナなどの川魚を中心に養殖を手掛け、出荷量は年間400トンと全国トップクラス。同社の創業者の娘で二代目の岩本いづみさんは、川魚の養殖を循環型産業としての確立させることを目指している。従来、餌となる魚粉は主に南米やアフリカなど海外から購入することが多かったが、多くの漁港を有する静岡県には水産加工業者もおり、残渣も多く出ていることから、海外から輸送費をかけて買うよりも地産地消しようと決意。地元から原料を仕入れ、それを加工して餌を作るところから自社で行っている。岩本さんは「美味しく良質な魚を作るためには、魚自身が健康であることが第一。そのためには元気のいいものを食べて貰わないといけない」と語る。
また、一般的に「和食の皿のサイズに合う」という理由で100gで出荷されていたイワナを、既成概念を打ち破り、より美味しくなる120g~150gまで育てている。さらに、それを「リエット」(身をほぐしたものにスパイスやハーブなどを加えて作られる。パンなどに塗って食べる食品)に加工、付加価値のある商品として売り出した。化学調味料を一切使わず、手作業で作るこだわりの味で、売り切れが出るほどの人気だ。
岩本 いづみ(いわもと いづみ)氏へのインタビューを行うと共に、ニジマスやイワナ養殖の現場を視察する。
7.富士錦酒造株式会社 18代目社長 清 信一 氏
~富士山の伏流水と、地元開発の米、酵母で作る静岡ならではの地酒~
http://www.fujinishiki.com/page/item/index.html
創業1688年、300年以上続く老舗の酒蔵、富士錦酒造株式会社は、富士山の豊富な伏流水を生かした酒造りを行ってる。田園風景の向こうに富士山を臨む敷地内には井戸があり、富士山の伏流水を地下30mから汲み上げ、酒の原料にしている。富士山の岩盤にろ過されたこの水が、同社の酒のまろやかな優しい味を出しているといわれている。この水に加え、静岡県独自開発の酒造好適米「誉富士」と、同じく県が独自開発した「静岡酵母」を武器に、富士山の恵みを享受するこの地ならではの地酒造りが行われている。
18代目の当主である清 信一さんは、元々は証券会社のシンクタンクで働いていたという異色の経歴の持ち主。奥様の実家の家業を継ぐために勤めを辞め、農業大学で醸造を、東京国税局で鑑定や分析を学んだ。そんな清さんが開催する蔵開きイベントには1万人もの人が集まる。子供連れでの参加も多く、移動遊園地も用意するという。清さんは、「この里山の豊かな自然の中で、大人が酒を楽しそうに酌み交わす姿を子供たちが目にして、思い出のなかに酒が残ればいい」、そんな想いで取り組んでいる。
清 信一(せい しんいち)社長へのインタビューを行うと共に、酒造りの様子を視察する。
*本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
<実施要領>
1.日程案: 2012年10月1日(月)~2日(火)
1日目
07:30 集合
07:56 東京駅発(新幹線)
08:53 三島駅着
10:15~11:00 富士山樹空の森
昼食
12:45~14:00 富士山本宮浅間大社
15:30~16:00 静岡県庁
16:15~18:00 静岡県災害対策本部総合司令室
2日目
08:00 ホテル発
10:30~12:00 グラウンドワーク三島
昼食
14:20~15:30 柿島養鱒株式会社
16:00~17:10 富士錦酒造株式会社
18:36(仮) 新富士駅発
19:40(仮) 東京駅着
(*上記は仮日程です。今後若干の変更が生じる可能性があります。)
2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用: 1人10,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当: 吉田(TEL: 03-3501-3405)
6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJおよび静岡県はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。