実施日 : 2010年09月28日 - 29日
案内:愛知・名古屋COP10事前プレスツアー(2010年9月28-29日)
投稿日 : 2013年08月27日
~生物多様性が支える“食文化”と“ものづくり”~
COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が、今年10月、愛知県名古屋市で開催される。10月27~29日の閣僚級会合まで、名古屋国際会議場を舞台に様々な議論が繰り広げられる。今年は、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標(2002年のCOP6で採択)の目標年にあたり、目標の達成状況の評価とその後の目標が議論される重要な会議と位置付けられている。熱帯地方の薬用植物など遺伝子資源へのアクセスと資源保有国への利益配分を定めた国際ルールとなる「名古屋議定書」が採択されるかどうか。参加各国間での駆け引きが続いている。
我が国では、生物多様性条約にも規定されている「生物の多様性の保全」と「持続可能な利用」により支えられてきた伝統的な食文化やものづくりの技術が脈々と受け継がれてきた。COP10を目前に控えた愛知県へのプレスツアーでは、微生物資源を利用した酢や味噌といった発酵食品産業、大地の恵みである土と水を使った窯業、生物多様性が生み出す生態系サービスを最大限に活用することで成り立っている農業分野での新たな取り組みなどを通して、我々の生活に身近な生物資源と人々との関わりを取材する。
取材内容
1.香坂玲・名古屋市立大学准教授によるブリーフィング
生物多様性の保全と持続可能な利用が我々の生活といかに密接に関わり、どのような影響を与えているのか。また、この問題に日本、そして各地域がどのように取り組んでいるのか。COP10の名古屋開催の意義は何か。こうしたテーマについて、名古屋市立大学の香坂玲准教授から話を聞く。香坂准教授は、東京大学農学部卒業後、中東欧地域環境センター(ハンガリー)勤務。英国で修士、ドイツで博士号取得後、2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局での勤務を経て、今年4月より現職。専門は林業経済、環境政策論。COP10支援実行委員会アドバイザーも務める。
2.株式会社INAX(常滑市)
~生態系サービスの視点で環境問題に取り組む環境経営のトップランナー~
<INAXの環境活動>
<INAXライブミュージアム>
常滑焼で知られる愛知県知多半島の常滑市は、平安時代末期(12世紀)からの歴史を誇り、「日本六古窯」の中でも最大の産地として栄えた。この陶器の町、常滑市に本社を構える株式会社INAXは、浴室、洗面化粧台、トイレなど生活に密着した住宅設備機器の大手メーカーで、タイルについては世界最大手。帝国ホテルの外壁タイル製造にも携わった創業者によって、1924年に伊奈製陶株式会社として設立された。
焼き物を生業としてきた同社は、当り前にあると思ってきた「土」や「水」が実は多様な生き物の営みによる自然の恵み、すなわち「生態系サービス」であるとの認識に立ち、サステナブル社会の実現に向け「2050年のCO²総排出量80%削減(90年度比)」を掲げる環境経営のトップランナーだ。陶器を焼く窯の中から発生する大量のCO²を削減するため、燃料の灯油の天然ガスへの切り替えや効率良い排熱回収が可能な焼成炉(リジェネ炉)の採用を進めているほか、製造工程で発生する汚泥や陶器くずなどのリサイクルにより埋立廃棄ゼロを2000年から継続している。
また、今年5月には、「生物多様性取り組み方針」を制定。あらゆる生態系の基盤であり、生物多様性維持に不可欠な水に着目し、「水を守り、土を活かす」視点から、水の循環に気を配り、使った水を土の力で自然に戻す取り組みを進めている。さらに、水の循環を介して生物多様性への理解を深める狙いから、国内・外の小・中学生を対象とした出前授業(「水のワークショップ」)や社員がボランティア参加する里山保全活動も積極的に行なっている。
ツアーでは、土から焼き物製品までその歴史や文化を体感できるINAXライブミュージアムを訪問、焼き物の文化に触れるとともに、同社の環境経営について説明を受ける。
3.株式会社ミツカングループ本社(半田市)
~タブーへの挑戦から生まれた粕酢(かすず)誕生の地に息づくお酢づくりの精神~
<博物館「酢の里」>
<ミツカングループ>
食欲増進や疲労回復などのほか、血圧の低下や内臓脂肪の減少などメタボリックシンドローム予防などへの効果も期待され、健康的な食品としても注目を集める食酢。中国から4~5世紀頃に伝わったとされる米酢は、酒に酢酸菌を加えて発酵させる。これに対し、江戸末期に生産が始まった粕酢は酒粕を原料としている。その粕酢が誕生したのが、食酢の代名詞ともいえる「ミツカン」発祥の地、半田市だ。
1804年、造り酒屋だったミツカンの初代中野又左衛門は分家独立し、酒粕を利用した粕酢作りに挑み始めた。酒桶に酢酸菌が入ると、酒が全て酢になってしまうため、当時は酒造家が酢を造ることはタブーとされた。しかし、いわば廃棄物であった酒粕を利用することで米酢より安価に提供できたこと、また粕酢の風味や旨みがすし飯に合うとして評価も高まり、同時の江戸の握りずしブームにも乗って、又左衛門のタブーへの挑戦は見事大成功を収めた。
お酢造りの中で職人が一番気を使うのは、発酵してお酢を造る微生物「酢酸菌」の管理で、「微生物のもつ自然の力をいかにうまく引き出すか」が重要。創業の地、半田の工場では、酢酸菌が作る菌膜の状態をみながら、酢酸発酵がうまく進むように、職人は温度管理など常に気を配っているとう。
ツアーでは、ミツカン創業から200年余り、当時から作られてきたお酢の香りと、運河沿いに並ぶ黒壁の町並みで、環境省の「かおり風景100選」にも選ばれた半田市を訪問、お酢の総合博物館「酢の里」で、蔵人たちがつくりあげてきたお酢造りの精神と技術、微生物との長い関わりを取材する。
4.国産金胡麻栽培事業ネットワーク 亀山周央氏(阿久比町、碧南市)
~畑の“絶滅危惧種”国産ゴマの再生に挑む~
古くは縄文時代の遺跡からも出土するなど、栄養食材の一つとして、日本の食文化において重要な役割を果たしてきたゴマ。現在、ゴマの国内消費量は、そのほとんどを輸入に頼り、自給率はわずか0.1%。畑の“絶滅危惧種”とも称される国産ゴマの復活プロジェクトが愛知県から動き出した。
かつて天然酵母にこだわったパン屋を営んでいた亀山周央さんは7年ほど前、あんパンのゴマに興味を持ち、その産地を調べるうちに、国産ゴマの生産量がわずか0.1%と知った。「命に直結する農産物の絶滅ほど悲しいことはない」と、地元の愛知県安城市でゴマ栽培に着手。選んだ品種は金ゴマ。国内のゴマ生産量170トンのうち20トンと生産量が特に少ないが、油分が多く、香りも高く重宝されている。
亀山さんは、江戸時代から栽培されている在来種を取り寄せ、交配を避けるため金ゴマだけを栽培することにした。さらに、県内のみならず全国に仲間を増やそうと、国産金胡麻栽培事業ネットワークを設立、現在では福島県から長崎県まで50人程度が参加している。ネットワークの約束事は、農薬を一切使用しないことと畑の虫は殺さないこと。昨年はネットワーク全体で8トンを生産、“日本一”の生産グループとなった。
また、2007年には県内碧南市に福禄商店を設立し、ゴマを使った様々な加工食品づくりもスタート。ここでも国産の原材料にこだわり、化学合成物質は一切使用しない。さらに、地元の社会福祉法人と連携して、知的障害者にも働く場を提供している。
亀山さんの活動は農地の再生にも結び付きつつある。後継者不足などで耕作放棄地が広がる県内阿久比町板山地区では、地元農家で組織された「板山環境保存チーム」が、耕作放棄地をゴマ畑に変える取り組みを進めており、亀山さんがこれに全面的に協力している。ツアーでは農村地帯にゴマ畑が広がる板山地区を訪問、亀山さんと地元農業関係者に話を聞くほか、隣接する碧南市の福禄商店での、ゴマの袋詰め作業を視察する。
5.株式会社まるや八丁味噌(岡崎市)
~自然のエネルギーを活かした国際的自然食品「Hatcho Miso」~
食品添加物は一切不使用。自然栄養食品として世界約20カ国以上に「Hatcho Miso」の名で輸出され高い評価を得ている八丁味噌は、徳川家康生誕の地、岡崎城から西へ8丁(約870メートル)離れた八丁村(現在の岡崎市八帖町)で300年以上前から作り続けられている伝統的な豆味噌。この地は矢作川の舟運と東海道が交わる水陸交通の要所で、原料の大豆や塩の調達や味噌の出荷に利用されていたほか、矢作川は良質な伏流水にも恵まれ、味噌造りの条件が揃っていた。戦国の乱世をまとめ天下統一を成し遂げた徳川家康は、質素倹約と徹底した健康管理により当時としては異例の75歳という長寿を全うしたが、食事は麦飯と栄養価の高い八丁味噌が中心であったとされている。その後も徳川将軍家の愛用食となった。
創業1337年、岡崎市で伝統の味を守り続ける日本最古の味噌企業が、従業員約50人のまるや八丁味噌だ。八丁味噌は昔ながらの独特の製法に特徴がある。麹菌をまぶして発酵させた大豆原料を杉でできた高さ2メートル以上の大桶に仕込み、その上に合計約3トンの天然の川石を円錐状に積み上げて空気に触れないようにする。このまま温度調節もせず自然な状態で、二夏二冬(2年間)以上じっくりと熟成させることで、大豆の旨味を逃がさない、硬い味噌ができあがる。その間、人の手は一切入らず、自然の摂理に従う。大桶は100年以上使用しているものもある。
蔵の中や大桶に棲みついた微生物の働きが独特の風味を作り出すという。昔から味噌桶は土間の上に直接置いているが、これも自然との関わりを保ち、大地の上で味噌を発酵させるためとのこと。
同社では、2007年から地元三河産大豆と奥三河の天然水で仕込む八丁味噌三河プロジェクトをスタート。また、「桶造りの職人を残すため」に、およそ70年ぶりに発注した3個の桶も間もなく完成する。ツアーでは、「合理化を求めるのではなく、昔の人が作ってきたものをそのまま伝えたい」という浅井信太郎社長から、創業以来670年、自然のエネルギーに支えられた味噌造りへの思いを取材する。
*本ツアーは、COP10支援実行委員会が主催、フォーリン・プレスセンターが協力して実施するものです。参加者には経費の一部を負担して頂いていますが、営利を目的とした事業ではありません。
【実施要領】
1.日程:2010年9月28日(火)~29日(水)
<第1日目:9月28日>
8:30 東京発(のぞみ17号)
10:13 名古屋着(以降借り上げバス(中型)にて移動)
10:40-12:00 生物多様性についてのブリーフィング
(香坂玲・名古市 立大学准教授@名古屋国際会議場)
13:00-13:45 昼食
13:45-15:30 INAXライブミュージアム
16:15-17:45 ミツカングループ「酢の里」
18:30 ホテル着
<第2日目:9月29日>
9:00 ホテル発
10:00-12:00 国産金胡麻栽培事業ネットワーク
12:15-13:00 昼食
14:00-15:30 まるや八丁味噌
18:00 名古屋発(のぞみ248号)
19:43 東京着
2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費:1人13,000円(東京-現地往復交通費及び、宿泊、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、直接参加者にご連絡します
4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります
5. 参加申込:下記の申込書を記入の上、ファックス(03-3501-3622)でお送り下さい。
6. FPC担当者:矢野、山口(TEL: 03-3501-3405, 5251)
7.備考:
1) 写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
2) COP10支援実行委員会、及び当センターは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。