プレスツアー(案内)

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実施日 : 2013年03月18日

案内:医療イノベーション・プレスツアー in 横浜(2013年3月18日)

投稿日 : 2013年08月22日

2013年2月22日、政府は、菅義偉官房長官の下に「健康・医療戦略室」を設置することを発表した。政府、産業界、研究機関が一体となって、iPS細胞を使った再生医療の実用化や、難病の新薬の開発など医療の技術革新を進めるのがねらいだ

 

世界における日本の医療は、言わば、「技術で勝って、ビジネスで負け」てきた。基礎研究の水準は高く、優れた技術もあるが、厳しすぎる規制や、行政の縦割り構造、研究者と医薬品メーカーの間にある隔たりなどから、研究開発が実用化につながらないケースも多い(いわゆる「死の谷」問題)。その結果、医薬品・医療機器の貿易額は、輸入が輸出を大きく上回るのが現状だ。

 

こうした現状を打破し、医療産業の国際競争力を高めようと、今まさに、日本は「医療イノベーション」に向けて大きく舵を切り始めている。アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」では、「医療」が重点分野の一つに位置付けられており、今後、規制緩和や産官学連携による研究開発が進むことが期待されている。とりわけ、2030年に国内市場規模が1.6兆円に達すると経産省が試算する「再生医療」の研究開発には、国も法整備や資金援助などの面で大いにバックアップしていく構えだ。

 

既に、国の特区制度を活用し、先端医療の研究開発が本格化している地域もある。横浜市と川崎市にまたがる臨海部は、2011年末に「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」に指定された。横浜市の中核的な医療研究機関である横浜市立大学先端医科学研究センターでは、研究者と企業が連携して先端医療の実現、革新的医薬品・医療機器の開発にあたっている。

 

本ツアーでは、健康・医療戦略室次長・中垣英明氏(内閣審議官)から、国が進める医療革新の方向性を、横浜市からは特区の取組みについて説明を受けるとともに、4月にオープン予定の横浜市立大学「先端医科学研究センター」の新研究棟を訪問し、イノベーションが進む日本の医療の現場を取材する。

 

※本プレスツアーは横浜市が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。

 

【取材内容】


1.健康・医療戦略室 ブリーフィング 
ブリーファー:内閣審議官 中垣英明 氏(健康・医療戦略室 次長)
~「国家戦略としての医療イノベーション」~

健康・医療戦略室は、医療産業の国際競争力を高める司令塔機能を強化するために新設された。菅官房長官が統括し、和泉洋人首相補佐官が室長を務める。同室のリーダーシップの下、日本政府は、「医療・医薬品、医療機器を戦略産業として育成し、日本経済再生の柱とする(菅官房長官)」ことを目指す。
〇本ツアーでは、健康・医療戦略室で次長を務める内閣審議官の中垣英明氏より、同室の概要及び、「今後どのようにイノベーションを進め、日本経済の再生につなげていくか」につきお話を伺う。

 

 

2.横浜市ブリーフィング 
~「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」について~

 横浜市と川崎市にまたがる京浜臨海部には、横浜市立大学医学部や理化学研究所をはじめ、生命科学分野の研究施設、企業が多数集積する。同特区は、こうした地域の強みを生かし、医薬品や医療機器、関連産業分野での国際競争力強化のための拠点をつくることを目的として設置された。対象エリアは、横浜市の鶴見区末広、金沢区福浦、みなとみらい、川崎市の殿町の4地区で、規制緩和や税制支援措置などを受けながら、先駆的な研究開発を行うことが可能となっている。

〇ツアーでは、横浜市担当者より、同特区の概要につき説明を受ける。

 

 

 

3.横浜市立大学 先端医科学研究センター
http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/index.html

 

 (1)平野久センター長 ブリーフィング

先端医科学研究センターは、基礎研究で得られた成果を臨床への応用へと「橋渡し」することをミッションとして、2006年10月に開設された。いわば、「死の谷(研究開発と実用化の間にあるギャップ)」に橋を架ける役割を担っていると言える。2013年4月には新研究棟がオープンする予定で、再生医療におけるiPS細胞の実用化や、がんの予防、診断、治療に向けた先端的な研究開発が行われる。また、新棟内に設けられた「産学連携ラボ」には、資生堂とバイオベンチャーのジェイテックが入居を決定しており、再生医療分野における大学と企業の共同研究が実用化に近い領域で進むことが期待されている。
〇ツアーでは、大学の概要及び市大の国際化に関する取組みを紹介の後、センター長を務める平野教授より、センターの概要につき説明を受ける。

 

 

(2)腹腔鏡下手術シミュレータ「Lap-Pass」
~患者のデータを取り込み、バーチャル空間で手術訓練が可能に!~

img51385329b70d9医師の手術技術の向上には経験が不可欠だが、患者側にしてみれば、豊富な訓練と経験を積んだベテラン医師に手術をしてもらいたい―――。そんな医療現場が抱えるジレンマを克服する一助となるのが、この手術シミュレーターだ。CTやMRIから得られるデータをもとに、手術が予定されている患者の患部の画像をCGで立体的に映し出し、医師が腹腔鏡下手術(*)の模擬訓練を行うことを可能にする。個人ごとに微妙に異なる内臓の位置や、術具が臓器に触れた時の感触も再現できるという。横浜市立大学と、精密機器メーカーの三菱プレシジョン、ソフトウェア会社が共同で研究・開発に取り組んできたもので、実用化されれば、医療の安全性が向上することが期待されている。
(*)腹腔鏡下手術・・・腹部に開けた小さな穴に内視鏡を入れ、画面で内部を見ながら手術を行う方法。従来型の開腹手術に比べて患者の負担が少ない反面、医師には高度な技術が要求される。
〇ツアーでは、医師または共同研究を行う企業の研究者より、手術シミュレータの概要、開発経緯・意義などについて説明を受けた後、同シミューレータを使用して模擬手術を体験する。

 

 

(3)家庭用超音波診断装置 
~自宅で「リンパ浮腫」「乳がん」の検診が可能に!~

 

乳がん患者のおよそ2人に1人が発症するという「リンパ浮腫」。手術などでリンパ節を取った後に体内の組織液がリンパ管に戻れなくなり、手足が腫れる症状だ。この病気の早期発見や治療効果の判定に役立てようと、横浜市立大学やベンチャー企業の「グローバルヘルス」が共同開発に取り組んでいるのが、家庭用に小型化された超音波診断装置である。装置をパソコンに接続し、専用のジェルを塗った肌表面にセンサーを押し当てれば、リンパ液の貯留が観察できる超音波画像が画面に映し出される。既に臨床実験用の装置数台を横浜市立大学附属病院の一部患者に無料で貸し出している。現行の薬事法では超音波診断装置の使用者は医療従事者に限定され、家庭での使用は認められていないため、特区指定に伴う規制緩和を活用できる横浜市だからこそできる取組みだ。今後は、乳がんを家庭で自らチェックできる装置の開発も予定されている。
〇ツアーでは、開発を進める形成外科学の前川教授より、家庭用超音波診断装置の概要、開発経緯・意義などについて説明を受けた後、同装置を使った検診を体験する。

 

 

(4)セローム解析室 
~iPS細胞を活用し、未来の再生医療・がん治療につなげる~

 

細胞レベルの解析を行う研究室で、がん、生活習慣病、感染症などに対する「遺伝子治療や再生医療」など、革新的な治療方法の開発を目指している。2012年6月には、谷口英樹教授率いる研究グループが、iPS細胞を使い、マウスの体内で人間の小さな肝臓を作り出すことに成功したほか、今年1月には、梁明秀教授率いる研究グループが、iPS細胞から「がん幹細胞」を作ることに成功した。がんが転移や再発を起こすのは、永続的にがん細胞を作り続ける「がん幹細胞」の働きが原因と考えられており、この細胞を人工的に作り、実験用に培養することで、がん幹細胞を攻撃する薬剤の開発に貢献することが期待されている。
〇ツアーでは、実際に解析室で研究を行う研究者の案内で、室内を視察するとともに、研究の概要と意義、これまでの成果と今後の展望につきお話を伺う。また、顕微鏡あるいは、その映像を映し出したPC画面にて、iPS細胞や、iPS細胞から作り出された肝臓、がん幹細胞を観察する。

 

(5)プロテオーム解析室 
~がんの「早期発見」「オーダーメイド治療」への道を開く~

 

たんぱく質(プロテイン)の分析を行う研究室。がんは、例えば「卵巣がん」一つとっても複数のタイプがあり、それぞれ治療方法が異なる。すなわち、患者一人ひとりにあった適切な治療のためには、がんのタイプの正確な診断が必要だ。このような個別具体的な診断は、がん細胞を構成している「異常なたんぱく質」を特定することで可能となるが、人体に存在するタンパク質の種類は10万種以上に上り、一つのタンパク質を特定するのに以前は2年もの期間を要していた。この問題を解決に導いたのが、2002年に島津製作所の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞したことでも注目を浴びた「タンパク質の質量分析」の手法である。つまり、各種のタンパク質はそれぞれが固有の質量を有しているため、その質量を測ることができれば、その種類が特定できることになる。現在では質量分析装置の開発も進み、横浜市大が有する最新の分析装置では、わずか2~3日でタンパク質の種類を特定することが可能だ。また、最近では、わずか一滴の血液中のタンパク質を調べるだけでも、がんの早期発見ができるようになってきている。
〇ツアーでは、室長を務める平野久教授より、解析室内を視察するとともに、研究の概要と意義、これまでの成果と今後の展望につきお話を伺う。

 

 

【実施要領】
1.日程(案):2013年3月18日(月)

10:00-11:00 健康・医療戦略室ブリーフィング(於:FPC会見室)
11:00-11:30 横浜市ブリーフィング:「国際戦略総合特区」について(於:FPC会見室)
11:30-12:15 昼食(於:FPC会見室)
12:15-13:15 バスにて移動
13:15     横浜市立大学先端医科学研究センター着
13:30-13:45 横浜市立大学概要説明
13:45-14:20 先端医科学研究センターの概要説明(平野久センター長)
14:20-14:50 プロテオーム解析室
14:50-15:20 セローム解析室
15:20-15:50 腹腔鏡下手術シミュレータ「Lap-Pass」
15:50-16:20 家庭用超音波画像装置
(終了後、現地解散)

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費:昼食代1000-1500円程度 ※実費請求

 

4.募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5.FPCJ担当:石川(Tel: 03-3501-3405)

 

6.備考
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)横浜市及びFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

 

 

 

 

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