プレスツアー(案内)

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実施日 : 2013年03月25日

案内:プレスツアー「障害者福祉とアートの新しい関係 in 横浜」(2013年3月25日)

投稿日 : 2013年08月22日

近年、障害がある人々が生み出すアートへの関心が高まっている。その作品をデザインに取り入れた服や雑貨が、デパートやネット通販などを通じてより多くの人の手に届くようにする仕組みも生まれてきた。それらの商品のなかには、消費者に高く評価され、品薄になるものもあるという。

 

障害がある人々による芸術作品は、「エイブル・アート」や「アール・ブリュット(生の芸術)」などと呼ばれ、近年アートの世界でも専門家からの熱い注目を集めている。2010年3月から2011年1月までパリで開かれた「アール・ブリュット・ジャポネ展」では、日本の63人のアール・ブリュット作家たちの作品が招待展示され、約12万人もの来場者数を記録、大きな話題を呼んだ。これが日本での関心を更に高める契機にもなった。

 

「文化創造都市」を政策として掲げる横浜市では、芸術や文化の持つ「創造性」をまちづくりや社会課題の解決に生かす取組みを行っている。市では、その一環として「横浜ランデヴープロジェクト」を展開。横浜市内の障害者施設と、第一線で活躍するプロのデザイナーとの間をつなげて、新たなもの作りの仕組みを生み出してきた。このコラボレーションによる雑貨ブランドが「SLOW LABEL」だ。例えば、デザイナーが障害者施設を訪ね、そこで出会った織物から刺激を受けて、独特の持ち味を生かしたバッグをデザインしている。障害者がひとつひとつ手で作り出す織物は、色使いやパターンが一点ずつ違い、一つとして同じものはない。ゆっくりと丁寧に作られる一点モノの商品は人気が高く、高級デパートでも販売されている。それまで障害者施設で作られるものはバザーなど限られた場でしか売る機会がなかったが、メジャーな市場に商品が出せるようになったことで、施設に通う障害者と社会との接点が生まれ、彼らの生きがいにもなっているという。

 

本プレスツアーでは、「横浜ランデヴープロジェクト/SLOW LABEL」のディレクターに話を聞くとともに、プロジェクトに参加している障害者福祉施設を訪れ、障害者の方々に取材し、制作現場も視察する。また、横浜市内の芸術活動を積極的に取り入れている別の障害者福祉施設も訪問し、アーティストとして活躍し、本の表紙やハンカチなどのデザインに作品が採用されている障害者の方にもインタビューを行う。
これらの取材を通じ、日本における障害者とアートとの新しい関係、アートを通じた障害者の新しい社会参加の姿を追う。

 

※本プレスツアーは横浜市が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。

 

<取材内容>

 

1.横浜ランデヴープロジェクト「Slow Label」
~障害者とアーティストの間をつなげた新たなもの作りのブランド~

http://www.slowlabel.info/ 
2009年に、横浜を拠点としてスタートした横浜ランデヴープロジェクトは、横浜市内の障害者施設や企業と、国内外で活動するアーティストをつなげ、特色を生かしたもの作りに取り組んできた。「SLOW LABEL」はその取組みの中から誕生した、全て一点モノの手作り雑貨ブランドだ。
このブランドのもの作りは例えばこんな風に出来ていく。「SLOW LABEL」に参加しているファッションデザイナーの一人、矢内原充志(やないはら みつし)さんは、障害者施設「風のバード」を訪れ、そこに通う人たちがその時の気分を糸に織り込んだ色鮮やかな織物に出会った。彼らがゆっくりと時間をかけ、丁寧にひとつひとつ織り上げる様子からインスピレーションを受け、その生地を活かしたバッグをデザインした。矢内原さんは、「買う人には、バッグと一緒に、彼らが生地を織りながら過ごした時間も買って欲しい」と語る。このバッグは、都内や横浜市内の有名デパートでも販売され、人気商品となっている。
「SLOW LABEL」のディレクター、栗栖良依さんは、「ひとつひとつ手で作るもの作りには、マスプロダクトには出来ないことがある。もの作りに対する価値観はこの先数年でどんどん変わっていくはず」と語る。栗栖さんは、自身も中途障害を持っており、「自分も障害があるので、障害者施設の人達と仕事をする時に、話がしやすい」と話す。

本ツアーでは、本プロジェクトの拠点となっている横浜市の施設「象の鼻テラス」を訪れ、市民と障害者が一緒になって参加するもの作り体験イベントの様子を取材する。また、SLOW LABELのディレクター、栗栖良依(くりす よしえ)さんにプロジェクトの概要説明を受ける。

 

  

 

 

2.障害者施設「風のバード」(運営:NPO法人 空)
~自分の“カラー”で織る布。バッグの人気で意欲アップ、社会との接点も増えた~

img5147cecc465f4NPO法人 空(そら)が運営する障害者施設「風のバード」も、「SLOW LABEL」に参加している作業所の一つだ。現在16名が通所している。この作業所は、ファッションデザイナーの矢内原充志さんとのコラボレーションで、バッグに使われるカラフルな布を作っている。企画段階から障害者や職員も参画し、布は矢内原さんが色やパターンを指定するのではなく、織る人それぞれのセンスに任されている。そうして織られた布は、出来上がりを見て織った人が分かるほど一つ一つが違い、織った人の個性やその時の気分が反映されていて魅力的だ。その一点モノの魅力でバッグは大人気で、織るのが間に合わないほどだ。職員の栗原洋子(くりはら ようこ)さんはこう語る。「バッグの人気が出て、目に見えて通所者のみんなのやる気が出て、職員がびっくりするほど。SLOW LABELだけれど、作業のスピードまで上がりました。自分ががんばって織ったものが高島屋などの大手デパートで売られているのを見るのは彼らにとっても嬉しいこと。顔つきまで変わりました。今までは、何か商品を作ろうと思っても職員のデザインや発想では限界があったし、売る場所もバザーや展示会など限られていました。それがプロのデザイナーさんが参加して、すばらしい商品ができ、一般の人達に手に取って貰えるようになったのは大きい。障害者施設(作業所)は、休まずに来て1日のリズムを作るのが大事で、来たくなるような場所であることが大事。そういう意味でも意義があると思います。」プロジェクトへの参加が、障害者と社会との接点を増やしている。
本プレスツアーでは、「風のバード」を訪れ、NPO法人空の理事長 金子由紀子(かねこ ゆきこ)さんや職員、そして通所している障害者の方々に話を聞く。

 

 

 

3.障害者施設「アートかれん」(運営:社会福祉法人かれん)

~アート業界も注目、“エイブル・アート”作家の活躍。本の表紙や布地のモチーフにも採用~
http://karen.or.jp/art/artkaren-top.htm 
社会福祉法人かれんが運営する障害者施設「アートかれん」は、絵画や刺繍、手織りなどの創作活動を中心に、ギャラリーの企画運営や、生活の自立のためのプログラムとしての昼食作り、清掃、買い物なども行っている。この「アートかれん」には自閉症などの障害を持つ人々、11名が通所しており、それぞれが思い思いの方法で創作活動を行っている。通所する障害者の一人、磯部涼(いそべ りょう)さん(31歳)は、その色鮮やかな絵が、本の表紙に採用されたほか、大手アパレルブランドのノベルティグッズのハンカチや、男性物の下着の生地のデザインにも使われおり、アーティスト名「いそべ RYO」として活躍している。彼の絵画がモチーフになった下着は、大手百貨店でも取り扱われている。(*この企画の実現には、障害者による作品を商品化したり、デザインとして使える仕組みを作ることによって障害者に新しい仕事を作ることを目指す「エイブルアート・カンパニー」が携わっている。)また、通所者の一人、川戸由紀(かわど ゆき)さん(28歳)は、刺繍を皮切りに、映像作品、絵画まで、活発な創作活動を展開している。自作の絵の連写などを基に作られるその独特でユーモア溢れる映像作品は、ヴェネツィア・ビエンナーレ参加者を含む現代アートの芸術家たちの作品と並んで、2011年横浜市で開催された「イメージの手ざわり展」でも展示された。アートかれん施設長の南芳江(みなみ よしえ)さんは、「川戸さんは、来たばかりのころはコミュニケーションが苦手でしたが、創作をするようになって落ち着くようになりました」と話す。また、川戸さんの作品は、全国から1,332作品の応募があり、審査を経て214作品が展示された、「ポコラート全国公募展2013」で、来場者の投票で1作品が選ばれる「オーディエンス賞」を受賞した。
本プレスツアーでは、アートかれんを訪問し、施設長の南芳江さんに、施設の活動概要について聞く。またアーティストとして活躍する磯部涼さんを始め、通所する障害者の方々にも取材する。また、社会福祉法人かれんが運営する、障害者を持つ人々が働くカフェ「カフェモア」で昼食をとる。

 

 

 

 

<実施要領>

 

1.日程:2013年3月25日(月)

 

10:15       東急東横線 大倉山駅(改札口前)集合

 

10:30-11:45  障害者施設「アートかれん」(社会福祉法人かれん)
          ・施設長 南芳江(みなみ よしえ)さん
          ・通所者/アーティスト 磯部涼(いそべ りょう)さん
          工房訪問、作業見学

 

12:00-12:45  「カフェモア」(社会福祉法人かれん)で昼食

 

13:15-14:00  横浜ランデヴープロジェクト「SLOW LABEL」(象の鼻テラス)
          ・横浜市 文化観光局 創造都市推進部 創造都市推進課 創造まちづくり担当係長 新谷雄一(しんたに ゆういち)さん
          ・「SLOW LABEL」ディレクター 栗栖良依(くりす よしえ)さん
          ・中途障害者地域活動センター・とつかわかば 通所者の皆さん   
http://www.city.yokohama.lg.jp/totsuka/service/chutoshougai-wakaba.html
          ・機能強化型障害者地域活動ホーム 港南福祉ホーム 通所者の皆さん

 

14:15-15:15  障害者施設「風のバード」(NPO法人 空)
          ・理事長 金子 由紀子(かねこ ゆきこ)さん
          ・施設長 近内 幸一(こんない こういち)さん
          ・職員 栗原 洋子(くりはら ひろこ)さん
          ・通所者 山口 雅典(やまぐち まさのり)さん
          作業見学

 

15:20      現地(JR関内駅)解散

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費:昼食代1,000円程度 ※実費請求

 

4.募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5.FPCJ担当:吉田(Tel: 03-3501-3405)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)横浜市及びFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
(3)本ツアーでは、営利を目的とした事業ではありません。

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