実施日 : 2016年07月25日 - 26日
案内:大分県プレスツアー
投稿日 : 2016年07月12日
-日本最大の地熱発電所が支える日本一の再生可能エネルギー自給率-
-バーク(樹皮)の有効活用で木材産業を活性化-
-自然環境を守った由布院のまちづくりと熊本地震からの復興-
-300年受け継がれる伝統の焼き物、小鹿田焼-
大分県は、再生可能エネルギーの自給率が30.1%と、全国1位だ。地熱資源が豊富で、地熱発電や温泉熱を利用した再生可能エネルギー供給量が全体の5割程度を占めており、日本最大の地熱発電所もある。
林業産出額全国6位の林業県・大分で最大の木材集積地がある日田市では、原木を加工する過程で大量に発生する厄介者のバーク(樹皮)を地域資源として有効活用する取り組みが始まっている。また、日田杉を使った伝統工芸の日田下駄もあり、若手職人がつくるポップなデザインが人気を集めている。
さらに、日田市の山間にある小さな集落では、その土地の土や水などを原材料に、機械を使わず自然の力と人の労力だけでつくる焼き物の技が今も残っている。小鹿田焼(おんたやき)は、原則として後継者である自分の子供一人だけに技を伝える「一子相伝」で受け継がれ、若手の陶工も活躍している。
由布院は、旅館経営者が中心となって、大規模観光開発に頼らず自然環境を守りながら独自のまちづくりを進めてきた温泉地だ。楽天が発表した外国人に人気の温泉地ランキングで2位に選ばれるなど、国外からの人気も高い。今年4月に発生した熊本地震の影響で、外国人観光客の客足は遠のいているが、41年前の地震の際にも、旅館経営者が様々なイベントを立ち上げ、由布院の名を全国に広めた経験がある。
本プレスツアーでは、大分県の北部(日田市、九重町、由布市)を中心に、豊かな地域資源を活用し、再生可能エネルギーの推進や持続性のある産業、伝統工芸などの振興に役立てている様々な事例を取材する。
※本プレスツアーは、大分県が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画運営しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
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<取材内容>
1.大分県 広瀬 勝貞 知事
大分県は、2003年にスタートした「大分県新エネルギービジョン」に基づいて、再生可能エネルギーを積極的に導入してきた。再生可能エネルギーの自給率日本一を誇る。今年3月には同ビジョンの第二次改訂を行い、2024年までに再生可能エネルギーによる電力の消費率を51%まで引き上げる目標を掲げた。日本一の発電量をもつ地熱・温泉発電は、現在の発電量から16%増加させる目標だ。
また、温泉の湧出量が日本一でもある大分県は観光産業も盛んだが、今年4月に発生した熊本地震は観光産業に大きな打撃となった。県は、観光業などの支援を目的に、6月には50億8千万円を投入し、夏の観光シーズンに向けた観光誘客キャンペーンの実施や宿泊代や旅行商品を最大70%割り引く「九州ふっこう割」を展開している。外国人観光客が近年増えており、海外に対しても旅行展への出展やブロガーの招請、ウェブマガジンの活用など、海外への情報発信も行っている。
2003年から知事を務める広瀬知事へのインタビューでは、県のエネルギー、産業、観光などの政策について聞く。
2.九州電力八丁原(はっちょうばる)地熱発電所
~日本最大の地熱発電所~
日本は、米国やインドネシアに次ぐ世界第3位(2,347万kW)の地熱資源を有しているが、地熱発電設備容量は約52万kWと8位にとどまる。その背景には、地熱資源の豊富な国立公園内での規制や、温泉の枯渇を懸念する温泉地の反対などがある。一方で、経済産業省が、昨年7月に発表した2030年時点の電源構成(ベストミックス)案では、再生可能エネルギーを東日本大震災前の9.6%から22~24%に引き上げるとし、そのうち地熱発電については現状の3倍以上の設備容量を導入するという意欲的な目標を掲げている。
地熱発電量日本一(国内の38.7%)を誇る大分県にある日本最大の地熱発電所が、九州電力八丁原発電所だ。総出力は11万kWで、一般家庭の電力に換算すると約3万7000軒分に相当する。1977年に1号機、1990年に2号機が完成。世界で初めて蒸気と熱水に分離した後の熱水から再度蒸気を取り出すダブルフラッシュ方式を導入し、従来型と比較して発生電力が約20%増加している。
九州電力グループは、現在7つの地熱発電所をもち、総発電量は21万3000kW。2030年までに国内外で地熱発電を新たに80万kW開発する目標を立てている。
八丁原地熱発電所を訪れ、九州電力の担当者から地熱発電事業について説明を受け、発電所内を視察する。
3.日田の木材産業
~バーク(樹皮)の有効活用を突破口に、木材産業を活性化~
日田市は、森林が面積の83%を占め、そのうち人工林は76%(53,000ha)で、日本有数の林業地域だ。丸太の集散地として適した位置にある日田市は、林業に加え製材業も盛んで、市内には73社の製材工場があり、約740名が従事している。しかし、1964年に始まった木材の輸入自由化の影響を受けて、国産材の価格が下落、厳しい経営環境が続いている。林業の衰退は、森林の荒廃による自然災害も引き起こすため、森林と林業の再生は、日田市の経済と生活を守るうえで緊急の課題だ。
日田の林業と製材業を活性化させていくうえで、課題となっていたのがバーク(樹皮)の 処理だ。バークは、大量に放置すると自然発火する恐れがあり、また景観や環境問題にもなるため、処理限度を超える原木や製材品の生産拡大はできなかった。バークの有効活用を目的に地元の原木市場や製材所など45社によって設立された日田資源開発事業協同組合は、バークを土壌改良材の原料に加工し販売してきたが、近年では6~8万㎥が滞留していた。そこで、日田資源開発事業協同組合は、バークを燃料に蒸気を発生させるボイラーを2014年12月に導入した。これにより、年間5万㎥のバークを処理する能力が加わった。日田資源開発事業協同組合で副理事を務める吉田清士さん(65)は、「バークの処理能力が上がったことで、製材品の生産拡大につながれば、日田林業の活性化が図られる」と話す。製造した蒸気は、木材の乾燥を共同で行っている協同組合KD日田に販売している。
協同組合KD日田では、製材所5社で共同の木材乾燥機10基を整備し、日田資源開発事業協同組合で製造された蒸気で木材乾燥を行っている。乾燥材は、変形や収縮が起こりにくいため品質や性能が良く、建築業界では近年ニーズが高まっている。しかし、乾燥コストの大半が燃料費であるうえ、限られた敷地内に木材乾燥機を整備できない製材所もあった。これまで乾燥機の燃料は重油に頼っていたが、バークを燃料に製造した蒸気を使うことで、乾燥コストが大幅に圧縮され、同協同組合で木材乾燥を行う野上製材所では、1カ月160万円~200万円かかっていたコストが、半額以下になったという。
日田資源開発事業協同組合を訪れ、大分県の林業政策や、両組合の取り組みについて説明を受ける。また、両組合の施設と、隣接する権藤製材所と野上製材所の木材加工の様子を視察し、経営者にインタビューする。
4.日田下駄 本野はきもの工業
~新しいデザインで伝統工芸に新風、若手職人の挑戦~
林業が盛んな日田市では、木材を切り出すときに残る根元の部分を材料とする下駄が多く生産されてきた。徳川幕府の直轄地だった1830~1844年に、新しい産業の推進政策として下駄づくりが奨励され、発展した。当初は、材料に桐を使っていたが、明治・大正時代には良質材が多く手に入る杉で作られるようになった。需要が伸び、作業が分業され、大正時代には年間1,000万足以上が生産されていた。生活様式の変化により、需要は減ってきたものの、現在でも日田市では10軒が下駄づくりに携わり、静岡市や福山市(広島県)に並ぶ日本三大産地の一つに数えられている。
本野雅幸さん(34)は、そんな日田下駄の若手職人の一人だ。サラリーマン生活になじめずに、実家の手伝いをしていた本野さんは、「100年以上続いてきた家業の下駄屋を自分の代で終わらせたくない」という思いに至り、20代前半に家業を継ぐことを決意した。昔ながらの伝統的な日田下駄を作るかたわら、アーティストとのコラボレーションでオリジナリティあふれる若者向けのカラフルな下駄を作り人気を集めており、今年2月には新しい店舗もオープンした。
本野さん一家の工場と店舗がある本野はきもの工業を訪れ、本野さんに日田下駄について説明を受け、家業を継ぐ思いや、商品について話を聞く。また、下駄を作る様子を視察する。
5.温泉保養地「由布院」
~震災からの復興と自然環境を活かしたまちづくり~
・株式会社玉の湯 代表取締役会長 溝口 薫平さん(82)
昨年、大分県に宿泊した外国人観光客数は、過去最高の53万人(前年比160%)に達した。しかし、今年4月に発生した熊本地震の影響により、大分県内の5月の外国人宿泊者数は14,747人となり、前年5月の40,717人から6割以上減少した。由布院でも4月中にほとんどの店舗や旅館が営業を再開したが、5月の観光客数は前年に比べ半分以下となった。
41年前(1975年)にも、現在の由布市周辺を震源としたM6の大分県中部地震が発生した。旧湯布院町は、半壊24戸のみと比較的被害が少なかったが、「ほとんどの旅館が崩れた」といった噂が広がり、観光客が減少した。そんな時、当時の旅館経営者たちは、「復興のシンボル」として辻馬車を走らせたほか、音楽祭や映画祭、牛喰い絶叫大会といったイベントを次々と立ち上げた。復興アピールをねらったこれらの取り組みは、予想以上の反響で由布院を観光地として全国に知らしめるきっかけとなった。
その中心的役割を担ったのが、当時若手旅館経営者だった溝口薫平氏(旅館玉の湯)、中谷健太郎氏(亀の井別荘)、志手康二氏(夢想園)の3氏だ。溝口氏らは、イベント作りだけではなく、1970年代初頭から持ち上がったゴルフ場やサファリパークといった大型観光施設の建設計画から由布院の自然豊かな景観と自然環境を守るため、計画撤廃に尽力し、住民が中心となって由布院のまちづくりを考える活動を行った。また、ドイツの小さな温泉町での体験をもとに、地域資源である温泉や自然を活かした長期滞在型の「温泉保養地(Kurort)構想」を行政に提案し、由布院独自の温泉観光地を作りあげていく役を担った。湯布院町商工会長や由布院温泉観光協会会長も務めた溝口氏は、2002年には、観光庁の「観光カリスマ百選」に選ばれるなど、観光地において自然保護を主張した先駆け的存在として知られる。
溝口薫平さんから、由布院のまちづくりと41年前の震災の様子について話を聞く。また、熊本地震から3カ月たった現在の由布院の観光スポットや、復興のシンボルとして始まった辻馬車を視察する。
6.小鹿田焼(おんたやき)の里
~機械を使わず、300年受け継がれる陶芸の技~
北部九州のほぼ中央、日田市中心部から北へ17キロの山奥に、小鹿田の集落はある。黒木姓3戸、柳瀬姓2戸、坂本姓4戸、それに黒木姓から分家した小袋姓が1戸の合計10軒の窯元が、江戸時代中期(18世紀前半)の開窯以来の伝統技法を受け継いでいる。
小鹿田焼には他の焼き物にはない特徴がある。伝統的な陶芸の世界も各地で機械化が進むなか、小鹿田焼は300年もの間、機械を使わずに手作業のみで作り続けられている。電気は使わず、自然の力と人の労力で作る。集落近郊で採取した源土を砕く唐臼には川の水力を、陶器の成形に使う蹴ろくろには足の力を、最後に焼き上げる登り窯には薪を使う。また、小鹿田焼のすべての作業は家族で行い、人を雇うことはない。弟子はとらず、原則として後継者である自分の子供一人だけに技を伝える「一子相伝」により受け継がれてきた。
こうした小鹿田焼の価値を見出したのが、1931年に小鹿田を訪れた「民芸運動」の創始者、柳宗悦だ。失われつつあった朝鮮風の伝統的な手法が小鹿田焼に受け継がれていたことに感銘し、世に紹介した。その後、1954年に世界的に有名なイギリス人陶芸家のバーナード・リーチが約1ヶ月間滞在して作陶し、小鹿田焼はさらに知られるようになった。1995年には、国の重要無形文化財に指定されている。
現在、小鹿田には20代の陶工が2人いる。坂本創さん(26)と坂本琢磨さん(21)だ。創さんは、窯元の跡を継ぐことについて、「農家の息子が継ぐのと一緒」と気負いなく話す。18歳から2年間、鳥取県の著名な陶芸家の下で修業し帰郷。今では独自の取り引き先や展示会を持ち、1、2年先まで仕事の予定が入っているという。琢磨さんは昨年の12月、日本民芸館展で日本民芸協会賞を陶芸の道に入って3年で受賞するという快挙を果たした。創さんの父親の工さん(52)と、琢磨さんの父親の浩二さん(47)はともに、2度にわたって最高賞の日本民芸館賞を受賞している。
小鹿田焼陶芸館を訪れ、坂本工さんから小鹿田焼の概要説明を受ける。唐臼や登り窯といった里の風景を視察し、坂本工さん、創さん親子と坂本浩二さん、琢磨さん親子にそれぞれインタビューする。また、焼き物づくりの様子も視察する。
【実施要領】
1. 日程案
<1日目:7月25日(月)>
07:50 羽田空港集合
08:30-10:15 羽田空港~福岡空港(ANA243)
12:00-14:00 小鹿田焼きの里
14:45-16:45 ウッドコンビナート(木材産業)
17:05-18:15 日田下駄
18:30-20:00 屋形船(夕食懇談会)
20:15 ホテル到着(ルートイン日田駅前)
<2日目:7月26日(火)>
7:50 ホテル発
9:10-10:40 九州電力八丁原地熱発電所
11:50-13:50 由布院
15:00-15:20 大分県知事訪問
18:15-19:55 大分空港~羽田空港(ANA 800)
※上記日程は変更が生じる可能性があります。
2. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3. 参加費:18,000円
4. 募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当:於保(TEL: 03-3501-3405)
6. 備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJおよび大分県はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。