実施日 : 2014年05月13日
報告:プレスツアー「超高齢化社会・日本が模索する介護の未来」
投稿日 : 2014年05月19日
増え続ける介護ニーズに対して解決策の模索が続く中、現場で生まれる新たな取り組みを取材すべく、FPCJ企画・主催でプレスツアーを行いました。
本プレスツアーは午前・午後の二部構成で実施し、全体で米国、英国、フランス、ドイツ、スペイン、ロシア、中国、台湾、韓国、ベトナム、カタールの11か国/地域から20名の記者が参加しました。
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1.【午前】 筋力補助ロボット「マッスルスーツ」
一行は東京理科大学葛飾キャンパスを訪問。まず、「マッスルスーツ」の開発者である同学の小林宏教授にからお話を聞きました。「マッスルスーツ」は介護現場だけでなく、重いものを持ち上げる作業が発生する様々なシーンで大きな力を添えてくれる筋力補助ロボット。誰でも簡単に装着できるうえ、製品自体の重さは5キロと軽量です。装着して身体に固定して作業をすることで、腰への負担が軽減される仕組みです。また、小林先生は、「寝たきりの人をなくしたい」との考えから、マッスルスーツだけでなく、歩行補助装置など介護される人のための器具の開発も進めており、それらについても説明を受けました。
マッスルスーツは今秋にも一般市場に向けて販売されるとのことですが、小林教授と共に事業化を担うのが、株式会社菊池製作所。同席した菊池功社長から、目標生産台数や、福島県南相馬に新設する同社の工場でマッスルスーツを生産する計画について話がありました。菊池社長は「介護や医療のマーケットは今後大きくなるので積極的に参入したい」とコメントしました。
概要説明の後、小林教授自らによるマッスルスーツの実演がありました。小林教授を総勢20人の記者が取り囲み、写真やビデオによる撮影が行われました。参加記者のうち数名もマッスルスーツを実際に装着し、重い荷物を持ち上げてみました。見た目よりもマッスルスーツが軽いことに驚くと共に、荷物を持ち上げてみると「これは作業が簡単になる」との感想がありました。
質疑応答では様々な質問が出されました。例えば「小林教授の『競合』はいますか?」という質問には「個人的には、いないと考えています。誰にでもすぐに装着できて、30キロもの重さを補助できる機械は他にありません」とその独自性に自信を見せました。「海外の機関と共同開発される予定はありますか?」との質問には「まず、特許の問題がある。次に、このような製品が他にないからこそ、リスクをよく調べたい」とし、まずは国内での販売・普及に力を入れたいとのことでした。「マッスルスーツは『機械』なので、狂うことはありますか?」という質問には「機械といってもモーターがついているわけでもなく、ゴム状の人工筋肉が圧縮空気で動くだけなので安全です」とのことでした。菊池社長へは、実際に現場からマッスルスーツの注文があったかどうか質問がありました。既に100台ほど介護事業会社に納めた実績があることを紹介し、その反響として「腰痛で休職していた人は、職場復帰ができたと聞いている。また、これまで介護スタッフは高齢者を抱き上げる際に大きな力を出しており、その緊張が介護される側にも伝わっていたが、マッスルスーツを装着すると大きな力を出さずに済む。その結果、介護をされる側は『落とされるかもしれない』と、体を硬直させずに済むようになったという変化もある」と、現場からの声を紹介しました。
2.【午後】 空き家を利用した小規模介護施設「茶話本舗デイサービスFAMILY」
小金井市にある「茶話本舗デイサービスFAMILY」は空き民家を活用して作られた、定員10名程度のデイサービスの施設。株式会社ソウルエイジが、株式会社日本介護福祉グループのフランチャイジーとして運営しています。この施設のユニークな点は、株式会社ソウルエイジが芸能事務所も経営しており、介護スタッフの中に歌手をめざしている人がいるという点です。同社の前田紘孝社長による施設の概要説明の後、記者から「民家を利用するメリットは?」という質問がありました。これに対し、「病院のような施設ではなく、自宅と同じような環境なので、慣れない環境に適応しづらい高齢者の方へのストレスが少ない」とのコメントがありました。また「外国人のスタッフはいますか?」という質問には「現在はいないが、いい人材がいればぜひ」との回答でした。その後、記者は利用者である高齢者の皆さんが囲むテーブルの周りでそれぞれ撮影やインタビューを行いました。「他の施設と比べてどうですか?」という質問を利用者に投げかけている記者もいました。
続いて、スタッフで歌手を目指している池田雄大さんへのインタビューを行いました。記者からの「歌手を目指す上で、介護の仕事は夢の実現のためにマイナスな影響を与えてはいませんか?」という質問に、「会社が芸能事務所なので、ここで働くなかで、利用者の前で歌ったり、イベントに出演するなどチャンスがあると実感している。以前は別のところで介護の仕事をしていたが、その時は歌手になるという夢の実現に近づけている感じがしなかった」と答えました。「働く上で、楽しいことや難しく感じることは?」との質問には、「利用者の前で歌えるのは楽しい。辛いことは特にない」と明るく返しました。その後、池田さんは「川の流れのように」を力強く歌い、利用者も一緒に歌いました。続いて、ソウルエイジに所属するアマノートさんも歌を披露し、会場は盛り上がりました。
場所を移し、最後は株式会社日本介護福祉グループの藤田英明会長にインタビューしました。藤田会長は、介護事業を始めた理由や同社が展開する介護サービスの特徴について説明し、同社のビジネスモデルを海外展開する計画についても触れました。英国の記者からの「ヨーロッパへの展開は視野にいれているか?」との質問に対しては、「文化がかなり違うので現在は考えていないが、スウェーデンやオランダから視察が来たことはある」との回答でした。「政府からの補助を受けていない中で、事業として利益をだせているのか」という質問には、「補助金はもともと新たに施設を建設する場合に出されるもの。空き家を活用することで初期投資がかなり抑えられるのがメリット。利益目標はほぼ達成できている」と答えました。