実施日 : 2008年10月17日
報告(動画):2008年10月17-18日【岩手プレスツアー(古くて新しい山村の暮らし)】
投稿日 : 2013年08月24日
~小さな町の大きな挑戦と課題:岩手の大地と人々が育む、時空を超えた「自然との共生」~
■「葛巻」の古くて新しい山村の暮らし(2008年10月17-18日)
【森と風のがっこう】
NPO法人岩手子ども環境研究所(森と風のがっこう) 吉成信夫理事長
ここの集落は標高が700メートルあります。
ですから葛巻の中心部の人たちでさえあまり来ない場所でした。
集落は今、私たち以外に10世帯しかありません。
なのにこの学校は1996年まで残っていたのです。
学校が廃校になってからほとんど人がこないような状態でした。
森と風のがっこうがきて今8年目に入りましたけれども、今、年間にここに来る人たちを累計で全部足せば、6000人の人たちがくるようになりました。
生活を通して自然エネルギーを考えたい。
私達の食べたご飯が排泄物になって、それがどうやって自然に返っていくのかというサイクル、それをここで循環を見せたい。それが私が葛巻を選んだ理由です。
-上外川分校旧校舎
この学校(上外川分校)は1996年に廃校になりました。
最後は生徒が10人もいなかった。
これは学校が廃校になる前の看板です。
これは私たち(森と風のがっこう)の看板です。
でも、伝統や歴史を大切にしたいので(古い看板を)はずしません。
ここの地域の人たちにとってはいまだに学校ですからね。
-建設中の「エコハウス」
葦という地元にある草です。これを結構使っています。
それに土を張り付けたりして、くっつけていくわけです。
この土壁を塗る職人が町内にもう一人しかいない。
そのお爺ちゃんに伝統的な作り方を私たちが教わった。
それを残しながらノウハウを記録していかなくてはいけないということもあります。
-「森のキッチン」
自然の中で、森に近いところで皆でご飯を食べられるように、親子、子どもたち、赤ちゃんも含めて、皆で食べられるように設計しています。
-「薪でたく空き缶風呂」
これは全部薪風呂です。外側から薪をいれて、薪ボイラーです。
これだけ大きなお風呂を沸かすためには、3時間から4時間かかる。
自分たちが入るお風呂が、3時間も4時間も、自分たちで火を落とさずにやらないと、ちゃんとした温度にならないということも体験してわかるわけです、子どもたちは。
これ全部葛巻で出たゴミです。
この空き缶を入れることで断熱ができるわけです。
-「コンポスト・トイレ」
日本の江戸時代はこういうやり方なんですが、トイレの中に糞尿をいれるポリバケツが入っています。そこから水分が抜けるようになっています。
水分とウンチを別に切り離すとにおいません。
ウンチをした後で、このおがくずを一杯、上からかけます。
そうすると水分が抜ける。
これを2年ぐらい取っておくと完熟堆肥ができます。
残りは後ろのバイオガスのタンクに補充します。
こうして自分たちの排泄物がエネルギーや畑に肥料にかわっていくのだということが体感できるわけです。
-葛巻のこれから
この葛巻にも小学校が、―いくつあったんだっけ。5つぐらいへったよな。―5つ減りました、この5年間に。
人口減少の結果、それも一つの要因です。あとは政府の財政赤字。
そういう意味では田舎から都市部へ(人口が)集中してしまいますね。
葛巻町は自然エネルギーを旗印にして、自分たちの自主性や独立性を高めようとしています。この5年間くらいでずいぶん目は向けられるようになってきた。
だけど、次のステップは地域の人たち、下からのボトムアップの力がないと、本当にここは自然エネルギーの町にはまだならない。
【森のそば屋】
葛巻町内でも所得が低く遅れた地域とされていた江刈川地区に「森のそば屋」がオープンしたのは1992年。
当時葛巻町役場の職員であった高家卓範・章子ご夫妻が地域おこしのために立ち上げた。
標高500メートルという山間高冷地で栽培されるそば麦を使い、大正時代から回り続ける水車で挽いた粉で、地域のおばあちゃんたちが手打ちでつくる蕎麦はおいしいと評判。
人口180人の集落に今では年間1万人が訪れるようになり、一人50万円程度の年収を得る経済効果と地域のにぎわいをうみだした。
-水車小屋 粉ひき場
(森のそば屋経営者 高家卓範氏)
畑からきた状態だとまだそばの殻とか、ごみが混ざっていることがあります。
向こうでごみを飛ばして、そういった作業を繰り返して、きれいに上げたものをここに入れます。
つながると落ちてくる―うまくできていると思いませんか。
この石うすでひいた粉を、ふるい箱でとんとんやって、粉を下に落とす。
-森のそば屋 そば打ち作業場
(森のそば屋経営者 高家章子氏)
グループでやっているお店です。
お金は私たち(高家夫妻)が出しました。
あの人たちは、「そばを打つ技」を出してもらいました。
出すものが違っても仲間、グループですよ、といってスタート。
ここでそばを打って、お墓にいってもいいなという想いです。
だからどんなに年をとってもクビにすることはありません。
定年のない職場です。
だから、生きがい、おばあちゃんたちに生きがいを。
(おばあちゃん)グループですから、週に2回か3回来れば、楽しみの一つです。
(声:森のそば屋経営者 高家卓範氏)
ソバの実だけを出した場合は3万円。
それを水車小屋で粉にして販売すると90キロの実が60キロになります。
加工して粉にしたことによって、付加価値がついた。
それをこのように手打ちで蕎麦にして箱につめて販売すると、18万円になります。
10アール18万円になると、米やりんごを作っている農家に匹敵する収入になります。
このように加工して付加価値をつけることによって、こういう山村でも農業で暮らしていける候補のひとつかな、と。