実施日 : 2017年03月06日 - 07日
報告:震災6年・福島/宮城プレスツアー
投稿日 : 2017年04月03日
FPCJでは、東日本大震災発生から間もなく6年を迎える福島県と宮城県を訪れ、
(1)「食、観光、自然エネルギー:福島の挑戦」、
(2)「震災の教訓を伝える南三陸の防災ツーリズム」、
(3)「人口減に向き合い持続的発展を目指す女川のまちの再建」をテーマに、プレスツアーを実施しました。
同プレスツアーにはフランス、ロシア、スイス、韓国、台湾、シンガポール、UAEの7カ国のメディアから13名の記者が参加しました。
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福島県農業総合センター
冒頭、安全農業推進部指導・有機認証課の草野憲二さんより同センターが行っている放射線モニタリング検査について説明を受けました。その後、入室が限られている検査室と準備室では、代表のカメラマンと記者が検体を準備する様子やゲルマニウム半導体検出器を用いた検査の様子を撮影し、その他の記者は草野さんの説明を聞きながら、室外から視察しました。記者からは、農水産品の解析に係る費用や、サンプルの選出方法やルール、海外市場の反応、検査をいつまで継続するのかなど、多岐に亘る質問が挙がりました。草野さんは、「福島県からは検査を通った安全な農水産品しか市場には出さないという強い決意のもと、消費者の不安が消えるまで検査を続けていく」と語りました。
福島市で農業を再開した飯舘村出身の鴫原さんご夫妻
福島県農業総合センターを後にした一行は、飯舘村長泥地区から福島市へ避難し、アスパラガス栽培を再開した鴫原夫妻を訪ねました。記者は、農業を再開するまでの道のりや現状について聞きながら、アスパラガスの収穫状況、先に訪問した福島県立農業総合センターでの農産品のモニタリングに対する鴫原ご夫妻の考え、原発事故による避難生活の様子や、飯舘村にある自宅の様子、農業再開に向けた助成や支援などについて質問しました。また、飯舘村役場復興対策課の杉岡誠さんから、村による支援について説明を受けました。記者は、「飯舘村から避難した農家のうち、村外で農業を再開できた人数はどのくらいか、またその地域はどのあたりか」などの質問を挙げました。
土湯温泉
原発事故後の観光客の減少に立ち向かう土湯温泉を取材しました。まず、土湯温泉町復興再生協議会会長で地域電力会社の株式会社元気アップつちゆの社長を務める加藤勝一氏より、土湯温泉の観光資源や東日本大震災発生当時の様子、震災が観光業に与えた影響、6年目を迎える復興の現状について聞きました。その後、同氏の案内で温泉熱を利用した発電施設や温排熱を活用した魚の養殖場を視察し撮影しました。記者は発電された電気の売上、売電の目的、発電施設の拡大予定などについて問いかけました。その後、記者は2つのグループに分かれ、土湯温泉の街並みや入浴施設を撮影したり、日帰り温泉を体験したり、東日本大震災時に避難者を受入れた旅館経営者のインタビューを行ったりしました。
南三陸ホテル観洋 女将インタビュー
福島県福島市から宮城県南三陸町へ移動し、震災直後から避難してきた住民を受け入れて避難生活を支え続けた南三陸ホテル観洋を訪問しました。夕食後に同ホテル女将の阿部憲子さんへのインタビューを行い、水道や電気が不通な状態でも避難者を支え続けた震災発生当時の様子から、避難者受け入れで心掛けたこと、同ホテルが震災の教訓を伝える語り部バスツアーを継続する理由などについて聞きました。記者は女将の話に熱心に耳を傾け、個別取材も行うTV局も複数ありました。
【2日目】
南三陸ホテル観洋 防災ツーリズム
プレスツアー2日目は、同ホテルが2012年2月から開始している「語り部バスツアー」の取材から始まりました。ホテル従業員の伊藤さん案内で、盛り土の工事が進む南三陸町を巡りながら、災害の教訓を伝えるために保存している同ホテル所有の建物の中での取材を行いました。記者は20メートルの高さまで津波が襲った現場を目の当たりにしながら、思い思いに撮影しました。伊藤さんは自身の経験を織り交ぜて震災当時の様子を話ながら、「災害の経験や教訓を語り継ぐことは未来の命を守ることに繋がると信じている」と語りました。
女川町(JR女川駅、女川温泉ゆぽっぽ女川)
震災後ゼロから町の再建に取り組み、復興のフロントライナーと呼ばれる女川町を訪れ、2015年に再建されたJR女川駅舎と賑わいを取り戻しつつある町の中心街の様子を取材しました。冒頭、女川町関係者から、女川町は震災による人口流出を防ぐべく通常より短い8年の復興計画を策定し、スピード感を持った復興を目指してきたとの説明を受けました。同関係者は「住民が女川町に戻って生活してくれることと、女川町の復興を支援してくれた人たちが投資して良かったと思われることが復興のゴール」と語りました。その後、JR女川駅舎に併設の温泉施設やお土産屋、新たなテナント型商店街シーパルピア女川の様子を視察、撮影しました。
シ―パルピア女川内「セッショナブル」(ギター製造販売)
3年前に女川町でギターの製造販売を手掛ける会社を立ち上げ、シーパルピア女川にギターの制作工房を構える株式会社セッショナブルを訪問し、代表取締役の梶屋陽介さんにインタビューを行いました。記者は「女川町で起業を決意したきっかけは何か」や「今後も女川町でものづくりを続けていくのか」などの質問を投げかけました。また、記者は今月末に初出荷を控えるメイド・イン・女川のギターを制作している様子や、梶屋さんがギターを演奏する様子も撮影しました。
シ―パルピア女川内「NPO法人みなとまちセラミカ工房」(タイル製造販売)
商店街でタイルの製造販売を行うと同時に、津波で失われた女川の町を色あせないスペインタイルで彩る活動を続けるNPO法人みなとまちセラミカ工房を訪問しました。記者は代表の阿部鳴美さんに、工房を立ち上げたきっかけや、経営状況、メンバー構成について質問しました。また、女川を訪れた人々がワークショップで作ったタイルが飾ってある町の一角も撮影しました。
災害復興公営住宅 住民へのインタビュー
シーパルピア女川を後にした記者一行は、町営災害復興公営住宅を訪れ、団地内のカフェで大原北区長を務める鈴木浩さんをはじめ7名の住民の皆さんに、災害復興公営住宅での生活や共同体作りを進める住民の取組を取材しました。記者はそれぞれの住民の方へ震災発生時に自身に起こったことや、地元の産業の復興状況、団地での交流活動などについて質問を挙げながら、住民の方々の話に熱心に耳を傾けていました。
須田町長インタビュー
本プレスツアーの最後の取材先として女川町役場を訪問し、須田喜明町長のインタビューを行いました。記者は、「(先に取材した株式会社セッショナブルの梶屋さんが町外から移住してきたことに触れ)町外の人に女川に住みたい、起業したいと思わせる魅力は何か」、「震災前と震災後で最も大きな変化は何か」などの質問を挙げました。須田区長は「新しい価値は人のつながりや多様な可能性を生み出す。町内外の住民と一緒にリスタートを切り、持続的な町の発展を目指したい。」と語りました。