実施日 : 2016年02月03日 - 04日
報告:大分県プレスツアー(2回目)「障がい者の雇用とスポーツ/食のブランド化」
投稿日 : 2016年04月11日
大分県主催、FPCJ企画協力で、障がい者の雇用促進の取り組み、および地域の食のブランド化における取り組みの事例を取材するプレスツアーを実施しました。韓国、シンガポール、ドイツ、ニュージーランド、米国、ベトナム、ロシアの7カ国から、7機関11名の記者が参加しました。
ツアーの案内はこちら
----------------------------------------------------------------------------------------
【1日目】
1)株式会社 宇佐ランタン
空港から宇佐へ移動する車中で、大分県の担当者による福祉保健行政のブリーフィングを受けた後、知的障害者の雇用に積極的な「株式会社宇佐ランタン」を訪問。知的障がい者を雇用した経緯などについて聞くとともに、製造工程を分業化・機械化することにより、知的障がい者にも働きやすい環境となっている工場を視察した。記者は障がいを持つ従業員が丁寧にかつ手際よく提灯の型にビニール素材を糊付けする様子を撮影したり、取材当日、特別支援学校から実習に来ていた高校生に提灯づくりの感想を聞くなど熱心に取材をしていた。従業員へ支払われている給与や給与体系などについて谷川会長に多くの質問があがった。
2)社会福祉法人 太陽の家
1965年に「保護より機会を」「世に身心障害者はあっても仕事に障害はあり得ない」という理念のもと、故中村裕博士によって設立された「太陽の家」を訪ねた。これまでの歩みが展示された歴史資料館で、長男の中村太郎理事長より、オムロン、ソニー、ホンダ、三菱商事といった日本を代表する企業と提携して共同出資会社を作り障がい者を雇用していること、大分国際車いすマラソンを立ち上げ、障がい者スポーツにも力を入れていること、50年の歴史の中で社会復帰した施設利用者は10%であるといった実情を聞いた。記者からは「一緒に働く人は、障がいを理解して働いているのか」といった質問があがった。
3)三菱商事太陽 株式会社
太陽の家との共同出資により設立された三菱商事太陽株式会社では、山下達夫社長および社員2名のインタビューを行った。1歳2カ月の時にポリオ(小児麻痺)を患った山下社長は、自身の障がいについて左手の肘から先以外を動かすことが難しいこと、父親の勧めで普通学級に通ったことなどを説明。個別のインタビューでは、「政治家や行政にしてほしいことはあるか」「今後、会社をどのように成長させたいか」などの質問を受けた。社員へのインタビューでは、健常者と精神障がいを持つ社員に話を聞いた。記者は、「三菱商事太陽に入社してよかったことは」「精神に障がいを持つと働くことは難しいか」「会社に対する要望はあるか」など熱心に質問をしていた。
4)リオデジャネイロパラリンピック代表候補 (パワーリフティング)城隆志 選手
本年のリオデジャネイロパラリンピック出場が期待されるオムロン太陽株式会社の城隆志選手が、障がい者パワーリフティング競技の説明とデモンストレーションを行った。城選手は競技方法について、試技は3回行い最も高い記録が採用されること、寝た状態で胸と腕の筋肉を最大限に使ってバーベルを持ちあげることなど、身振りを交えて説明した。また、太陽の家のトレーニングルームには日本で3台しかない国際大会用の機器があることから、ベトナムの選手らとの強化合宿を行っているという紹介もあった。記者は「一日の練習時間はどのくらいか」「試技の成功と失敗を審判はどのように判断するのか」など聞いていた。
5)大分ロボケアセンター 株式会社
病気や事故によって身体に障がいを負った際に、その機能を改善・補助することができる、サイボーグ型ロボットスーツ「HAL®」を大分ロボケアセンターで取材した。代表取締役 安永好宏安永好宏代表取締役より、2015 年11 月に厚生労働省より医療機器の製造販売承認を取得し、今後は公的医療保険適用に向けて準備を進めていくこと、全国に4カ所あるロボケアセンターのうち、大分は脊髄損傷の利用者の割合が高く、また温泉地・別府あることから、長期滞在して訓練できることが売りとなっている、との説明があった。記者からは、「外国から利用者を受入れたことはあるか」「ロボットスーツの販売価格は」「着脱は簡単にできるのか」など多くの質問があった。現在この施設で機能回復訓練に励んでいる、北京パラリンピック車いすマラソン銀メダリストで、オムロン太陽社員の笹原廣喜氏が「HAL®」を装着し、歩行訓練を受ける様子を、参加したテレビチームが熱心に撮影していた。
【2日目】
7)佐賀関漁港
大分が誇る高級ブランド魚「関サバ」「関アジ」のブランド維持の取り組みを取材するため、佐賀関漁港を訪れた。天候に恵まれ、漁場から次々と戻ってくる漁船、漁協施設の職員が丁寧に魚の箱詰め作業を行う様子などを撮影できた。記者たちは、前日夜の大分県主催懇親会で関サバ・関アジを味わっていたこともあり、坂井支店長の説明に熱心に聞き入り、価格維持のため出荷量が1日各500~600本に制限されていることや、高くても売れる魚であり続けるために衛生管理を徹底していることなどに関心を示していた。「出荷されなかった魚はどうなるのか」「東日本大震災の影響で九州の魚の需要は高まったか」「今後のブランド戦略についてどう考えているか」など、それぞれの関心に応じて取材した。
8)かぼすヒラメ 養殖場
大分県が生産量日本一の養殖ヒラメ(全国の2割)に、同じく生産量日本一(同9割)のかぼすを混ぜたエサを与えて育てているかぼすヒラメの養殖場を取材した。大分県農林水産部漁業管理課の職員から、かぼすブリの成功事例を受けてかぼすヒラメの養殖が始まった経緯や、出荷量や価格帯についてブリーフィングを受けた後、深良津二世養殖漁業生産組合・竹尾久信組合長が、専用の機械でかぼす果汁入りのエサを作る工程、ヒラメにエサをやる様子を取材した。、「エサは1日何回やるのか」といった飼育に関する質問のほか、「韓国産のヒラメの流通を脅威に感じるか」「ロシアにも出荷しているか」などと、自国との関わりについての質問が多く見られた。
9)乾しいたけ生産 日本一の農家
大分県が日本一の生産量を誇る、乾しいたけ農家の清原米蔵氏を取材した。移動中に大分県の職員から、クヌギの木から乾しいたけができるまでの過程についてブリーフィングがあり、しいたけが育つクヌギの木を並べたほだ場に着くと、清原氏がしいたけを収穫する様子や、収穫されたしいたけを乾燥機に並べて乾燥させる様子などを取材。記者たちは、清原さんが50年間に渡りしいたけ栽培に携わっていること、その生産量が全国トップ(年間約5トン)であることなどに感銘を受け、「こんなに大きくて立派なしいたけは見たことがない」と感動した様子だった。記者からは、「手間と時間がかかるしいたけ栽培のやりがいはどのようなところにあるのか」「おいしいしいたけの特徴は何か」などの質問が飛び交った。
----------------------------------------------------------------------------------------
*今回のプレスツアーに基づく記事は、以下のリンクよりご覧いただけます。
■ ベトナム国営テレビ(ベトナム/テレビ)
・タイトル(仮訳):日本でのブランディング(ベトナム語)
http://vtv.vn/kinh-te/kinh-nghiem-xay-dung-thuong-hieu-ca-o-nhat-ban-2016021116380854.htm
・タイトル(仮訳):日本、障がい者が社会で生活し、成功するように支援(ベトナム語)
■ Media Corp (シンガポール/テレビ)
・タイトル(仮訳):日本、障がい者の就労の機会を支援(英語)
http://www.channelnewsasia.com/news/video/japan-bolsters-work/2517058.html
・タイトル(仮訳):日本、養殖技術で地方の生産に高級感 (英語)
http://www.channelnewsasia.com/news/video/japan-adds-premium-to/2505764.html
・タイトル(仮訳):日本のパラリンピック選手、障がいに負けず努力して前へ進む(英語)
http://www.channelnewsasia.com/news/video/para-athletes-in-japan/2598282.html
■ YTN (韓国/テレビ)
・タイトル(仮訳):宝物になったサバ…日本、農水産物をブランド化 (韓国語)
・タイトル(仮訳):日本、リハビリロボットにも医療保険の適用…ロボット産業の規制改革に拍車 (韓国語)