緊急事態宣言、1都3県に再発令
投稿日 : 2021年01月18日
注目すべき海外メディアの日本報道
(1月7日~8日)
緊急事態宣言、1都3県に再発令
1月7日、菅義偉首相は、新型コロナウイルスの感染が急拡大している1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)を対象に、昨年の4月以来、2度目となる緊急事態宣言を発令した。前回は社会経済活動を幅広く停止したのに対し、今回は感染リスクの高い場面に的を絞った重点的な対策をとることとしている。米英主要メディアは、宣言の内容や効力、補償措置などの詳細と共に、感染拡大の現状について速報した。
【米国】
The New York Times紙は、7日付「日本、躊躇の日々の後に首都圏に緊急事態宣言」(Motoko Rich東京支局長、Makiko Inoue記者)を掲載し、日本の感染抑止策は日本モデルと評されてきたが、12月以降感染が急拡大し、わずか2か月で死者数が2倍になるなど医療体制がひっ迫していると伝えた。菅首相は経済活動の継続を望んで緊急事態宣言の発令を躊躇していたが、感染者の急増や感染拡大地域の知事からの要請、4か月経過した菅政権のコロナ対応への不満の広がりを踏まえて7日に1都3県に宣言を発令したと報じた。菅首相の対応の遅さは、現在、過酷な新段階に入っているパンデミックに対して、ほぼ一年に渡り世界の主導者らが直面している困難な選択を示しており、ウイルスによる行動規制で国民は疲弊する一方で経済を再生させなければならず、(主導者らは)感染増加抑制の圧力に晒されている、と説明している。
The Washington Post紙は、同日付「日本、東京に緊急事態宣言、自己満足したコロナ対応の代償を払う」(Simon Denyer東京支局長)を掲載。日本の指導者たちは、強制的なロックダウンを行わずともマスク着用等の感染防止策でウイルスと共存しながら経済活動を維持する方法を見つけ出したと信じていたが、感染急増の悪循環は制御不能となり、ついに東京に緊急事態宣言が発令されたと報じた。皮肉なことに、国民の責任ある行動や科学者らの三密回避の訴えにも拘らず、政府は経済への影響を懸念して対応を渋ると同時に、最悪のウイルスを封じ込めるとの自己満足感があったとの見方を示しつつ、政府によるロックダウン回避の努力は短期的な苦しみを軽減したが、痛みを長引かせたのかもしれないとする識者らの声を引用している。
CNNは、同日付「コロナ感染が最高レベルに達し、菅首相が東京に緊急事態宣言」(Helen Regan記者、Junko Ogura記者)を掲載し、パンデミック発生以来、過去最多の感染者数を示した東京および近郊の3県に1か月間の緊急事態宣言を発令したとして宣言の内容について詳述し、会見における菅首相の発言を引用しながら、今回は学校の一斉休校は行わないことや東京五輪に前向きな政府の姿勢を伝えた。宣言の対象となる1都3県の感染者数は全国の感染者数の半数を占めており、首都圏の感染を直ちに抑えなければ、地方の感染拡大をコントロールできなくなるとの国立感染症研究所長の見解や、感染抑止の傍ら飲食や国内旅行を推奨した日本政府の対応が分かりにくいとする指摘する公衆衛生の専門家の発言等も引用し、国内の感染者数の推移と日本政府の対応について報じている。
【英国】
The Guardian紙は「日本の菅首相、コロナ危機の最中で東京の緊急事態を宣言」(Justin McCurry東京特派員)を同日付で掲載。第3波は感染拡大初期よりもはるかに深刻であるため、菅首相は専門家から対応を迫られ、首都圏に緊急事態を宣言し、東京及び全国で過去最多を更新した感染者数の急増は、まもなく東京の医療機関でコロナ患者受入不能になるという警告だと伝えた。今回の措置は1か月かおそらく長引くだろうが、他国で見られるロックダウンほど厳しくなく、一部の専門家は、最近の感染者数増加の速度を考えると、今回の措置で抑え込めるのか、疑問を呈していると報じている。
Financial Times紙も、同日付で「日本、コロナ感染急増で東京に緊急事態を宣言」(Robin Harding東京支局長、Kana Inagaki記者)を掲載。日本は首都圏に「柔らかな」緊急事態を宣言したが、この限定的な規制は日本が的を絞った地域的な措置でウイルス制御の記録を維持できるかどうかの賭けであると報じ、経済的影響について、「今年第1四半期の成長率はほぼゼロだが、ワクチン投与開始により春以降は堅調に回復する」(米金融企業)、「この時期ビジネスはすでに停滞しており、更に政府によるサービス業への追加補助への期待から打撃は限定的だが、宣言が他の地域に拡大されれば、顕著な影響が出る」(サントリーホールディングス・新浪CEO)との見方を紹介している。
The Times紙は、8日付「コロナ感染者急増後、東京が緊急事態を宣言」(Richard Lloyd Parry東京支局長)で、経済や延期されたオリンピックを脅かす新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大により、世界最大の都市東京が、新たな緊急事態下に置かれたと伝えると共に、今回の措置は、英国や欧米諸国でのロックダウンほど厳しくはないが、感染者数が急増し、医療現場がひっ迫する中、対策を先延ばししたとして批判された菅首相の敗北を示しているとし、政府のオリパラ開催の決意は固いが、パンデミックによる不確定要素から疑いの余地があると報じた。