オバマ米大統領、被爆地・広島を訪問
投稿日 : 2016年06月02日
注目すべき海外メディアの日本報道
(5月27日~30日)
2016年6月2日
オバマ米大統領、被爆地・広島を訪問
5月27日、オバマ米大統領が被爆地・広島を訪れた。同大統領はG7伊勢志摩サミットの後に岩国基地(山口)経由で広島入り。平和記念公園内の原爆資料館を視察した後、原爆慰霊碑に献花を行った。当初短時間とされていた演説は17分にもおよび、その様子を全世界が固唾をのんで見守った。
オバマ大統領は現職の米国大統領として初めて広島を訪問したということもあり、国内外のメディアの関心も高く、16の国・地域から多数の記者が取材に訪れた。また国内のみならず、CNN(米国)やBBC(英国)などの外国メディアも特別番組を組んで生中継を行うなど、文字通り、歴史的な1日となった。
写真:Duits/アフロ
ワシントンポスト電子版(米国)は、デビッド・ナカムラ記者が27日付で「最初の原爆投下から71年、オバマ大統領が広島で核兵器廃絶を訴える」を掲載。約1時間の広島訪問の様子を事細かに伝え、オバマ大統領が核なき世界の実現のために、具体的行動をとることを望むとする米国の武器管理団体関係者の意見を報じた。また、米国内には政治的な批判が行われたことにも触れつつ、オバマ大統領や側近たちは、謝罪ではなく、日米同盟関係をハイライトしつつ核兵器の脅威を訴えるのに、任期最終年の訪問は良いタイミングであったと伝えた。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)は、ジョナサン・ソブル記者が27日付で「広島の被爆者が涙し、オバマ大統領が抱きしめた」を掲載。オバマ大統領が演説の後に語り掛けた被爆者のうちの一人、森重昭さんに単独インタビューを行い、「歴史にはたくさんの間違いがあった」という森さんのコメントを引用しつつ、広島で被爆死した米兵捕虜の調査を彼が長年続けてきたこと、その活動が米兵捕虜の名が平和記念公園内の慰霊碑に刻まれることにもつながったと伝えた。
USA TODAY紙電子版(米国)はカーク・スピッツアー記者が27日付で「オバマ大統領、歴史的な広島訪問で被爆者を弔慰するも謝罪はなし」を掲載。「元米国捕虜が式典に招待されなかったことには落胆したが、両国が共有する歴史について、よりオープンで実直な対話を進めていくうえで、両国民を勇気づけるものになると思う」と、「捕虜 日米の対話」の徳留絹枝代表がコメントしたことなどを報じた。ロイター通信(米国)は28日付で、船越みなみ記者らが「オバマ大統領、広島で被爆者を追悼し、核なき世界を訴える」を掲載。米国大統領にとってタブーとされていた広島訪問は物議をかもすものであったが、2009年にノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領にとっては、この地で核軍縮を訴えることが大きな目標の一つであったと伝えた。また、被爆者の一人のインタビューから、「オバマ大統領の演説はあまり踏み込んだものではなかったが、少なくともどこか救われたように感じたし、私にとっては十分」といったコメントなどを紹介した。
ガーディアン紙電子版(英国)は27日付で、ジャスティン・マッカリー記者が「バラク・オバマ大統領、広島の記憶は決して風化させてはならない」を掲載。広島訪問は米国内で論争を巻き起こす可能性がありながらも、オバマ大統領の長年の願いであったことなどを伝えた。また、日本が第二次世界大戦の主要な加害国の一つにも関わらず、被害者であると演じようとしていると非難している中国メディアもあると報じた。フィナンシャル・タイムズ紙電子版(英国)は27日付でロビン・ハーディング東京支局長が「バラク・オバマ大統領が広島を歴史的訪問」を掲載。ジョン・ボルトン前米国国連大使の言葉を引用し、広島訪問はオバマ大統領の“恥ずべき謝罪ツアー”の一部であり、彼が歴代の大統領と一線を画すということを示すものではないなどと伝えた。ル・モンド紙電子版(フランス)は27日付でフィリップ・ポンズ記者が「バラク・オバマ大統領の広島訪問:『71年前、死が空から降ってきた』」を掲載。オバマ大統領が献花したリースを見るために、夜遅くまで市民の列が絶えなかったことなどを伝えた。
また、オバマ大統領は演説の中で、広島の原爆で被爆した韓国人捕虜について言及した。韓国メディアはさまざまな観点から今回の訪問を伝え、中央日報日本語電子版(韓国)は28日付で、ソ・ジャンウン駐広島総領事の寄稿「広島で過去よりも未来を語ったオバマ大統領」を掲載。韓国人原爆慰霊碑への訪問を期待していたことに加え、読者に対して、過去を未来につなげるために知恵を集め、世界が自分たちの言葉に耳を傾けるように力を高めようと訴えた。東亜日報日本語電子版(韓国)は30日付で「オバマ大統領、鶴を折って『被爆少女』を追悼」を掲載し、オバマ大統領が平和記念資料館で原爆症のため幼くして命を落とした佐々木貞子さんの折り鶴などを見学したこと、自らも折り鶴を4羽折り、出迎えた現地の子どもたちに手渡したことなどを伝えた。また、朝鮮日報日本語電子版(韓国)は30日付で「『被害国・日本』のイメージを強化したオバマ氏広島訪問」を掲載。カン・イルソン論説委員が今から20年以上前に広島と長崎に1カ月滞在した際に被爆者に話を聞いた時、彼らが涙を流しながらも、米国を悪く言うことはなかったことを伝える一方、「平和」という言葉があちこちで見られる広島を「ヒロシマ・センチメンタリズム・キャンペーン」と評し、世界で初めて原爆の被害を受けた国というイメージが強くなるほど、第2次世界大戦の加害者という歴史があいまいになるとも論じた。
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