日本人ジャーナリスト、シリアで拘束中の動画公開
投稿日 : 2016年03月25日
注目すべき海外メディアの日本報道
(3月17日~18日)
2016年3月25日
日本人ジャーナリスト、シリアで拘束中の動画公開
昨年6月にシリア入国して以来、行方が分からなくなっているフリージャーナリストの安田純平さんとみられる動画が、3月17日にインターネット上に公開された。この動画は、前日16日の安田さんの誕生日に収録されたとみられている。安田さんはその中で家族へのメッセージなどを発したが、拘束者や身代金に関する情報は含まれていなかった。以前から、安田さんを拘束しているのは、国際テロ組織・アルカイダ系の「ヌスラ戦線」という見方もあるが、詳細はいまだ明らかになっていない。
写真:Haruyoshi Yamaguchi/アフロ
シリア国内では外国人ジャーナリストなどの拘束が相次いでおり、このニュースに各国メディアも関心を寄せて報じている。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)では、ジョナサン・ソーブル記者が東京発で「シリアで行方不明中の日本人ジャーナリスト、安田純平の動画が流れる」(17日付)を掲載。今回公開された動画は、安田さんが行方不明になってから初めて彼の生存を確認する直接的な証拠であると報じるとともに、安田さんが2004年にもイラクで武装勢力に拘束されていること、その際、日本政府の交渉の末に開放されたが、日本国内で激しい非難を浴びていたことなどを伝えた。また、菅義偉官房長官による「日本国民の安全が最優先。情報収集と可能な限りの努力を続ける」とのコメントも報じた。CNN電子版(米国)は17日付で「シリアで行方不明のジャーナリストの映像」を掲載。日本のメディアは安田さんがシリア入国後にヌスラ戦線に拘束されたと報じてきたが、動画には何者による拘束なのかを識別するような情報は含まれていなかったと伝えた。安田さんのツイッターの更新が2015年6月21日でストップしていること、また、同年1月には安田さんの友人でもある日本人ジャーナリストの後藤健二さんがイスラム国(IS)により公開処刑されていることなどを報じた。
BBC電子版(英国)は17日付で「シリアで行方不明の日本人レポーター、動画で救出を求める」を掲載。「あの映像と声から、本人であることは間違いないと思う。疲れ切っているように見える」という安田さんの知人の高瀬仁さんのコメントなどを紹介した。AFP通信(フランス)は17日付で、「行方不明の日本人ジャーナリストの動画公開」を掲載。「日本政府は動画について承知しており、現在分析を行っている」という岸田文雄外相のコメントとともに、昨年後藤さんらがISに拘束された際の日本政府の対応が批判を浴びていることなどを報じた。タイムズ紙電子版(英国)では、リチャード・ロイド・パリ―東京支局長が「イスラム武装勢力、拘束中のジャーナリストの動画を公開」を18日付で執筆。安田さんは以前、自身のイラクでの拘束に関して「ジャーナリストの使命は、現地に赴いて、地元の人々の視点から戦争を報道することだと信じている」と述べるとともに、親友の後藤さんがISに殺害された後にも「危険地域からの報道が必要ないという人は、政府に一切の判断を任せるということ。自ら判断する自由を諦めることは民主主義を放棄するのと同じ」とコメントしていたと伝えた。
またアジア地域でも、中央日報日本語電子版(韓国)が「シリアで行方不明になっていた日本人ジャーナリストの映像公開」(17日付)、人民日報日本語電子版(中国)が「日本人ジャーナリスト、シリア過激派に拘束」(18日付)を掲載するなど、悪化する中東情勢への懸念を高めている。
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