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【外国記者の素顔に迫る】「The Foreign Press」Vol. 5 【外国記者の素顔に迫る】ウォルター・シムさん(シンガポール「ザ・ストレイツ・タイムズ」紙 日本特派員)

投稿日 : 2024年11月28日


フォーリン・プレスセンター(FPCJ)の「The Foreign Press」の第5号をお届けします。去る11月16日にシンガポールの英字紙「ザ・ストレイツ・タイムズ」が、相撲についての特集記事を掲載しました。これを受けて今号では、この記事と筆者であるウォルター・シム日本特派員をご紹介します。原則として、毎月中旬の配信予定ではありますが、このように注目すべき記事が出た時などは、それ以外のタイミングで予告なく配信いたしますので、悪しからずご了承ください。なお次号第6号は、12月下旬の配信を予定しております。引き続きご支援いただきますようお願いいたします。​​​​​​​





 

The Foreign Press Vol.5 2024年11月28日

ウォルター・シム シンガポール「ザ・ストレイツ・タイムズ」紙 日本特派員
Mr. Walter Sim, Japan Correspondent, The Straits Times, Singapore

 

 

写真左上:相撲部屋の取材(Masashi Shimura氏が撮影)。

写真右上:2024年10月7日に行われたFPCJのツアーの一環として、東京スカイツリーの497mの雷観測研究施設にて撮影。

写真左下:2024年11月12日、シンガポールで開催されたザ・ストレイツ・タイムズ紙のアジア・フューチャー・サミットにて、パネルディスカッションのモデレーターを務めるシム記者。

 

 

 日本に来て8年あまり、「相撲はこれまで一度も見に行ったことがなかったですが、これからはぜひ見に行きたい」。こう話すのは、シンガポールの有力英字紙「ザ・ストレイツ・タイムズ」のウォルター・シム日本特派員です。今月16日付け同紙に掲載されたシムさんによる相撲の特集記事は何と3,249ワード、日本語に換算するとおよそ6,500文字の大作です。日本の多くの新聞と同サイズの紙面の見開き2面丸ごと使って、相撲ワールドを巧みに描いています。

 

 記事のタイトルは、「現存する苦悩と闘う相撲」。少子化が急速に進むなか、角界に入ってくる新弟子の数は最盛期の200人超から約50人へと減少しています。いかにして、この古来の伝統スポーツの担い手を増やし、次世代にバトンをつないでいくのか。相撲界の現状を詳細に描きながら、時代にあった相撲の在り方を考察した力作です。

 

 ★記事はこちら

 

 この記事のきっかけとなったのは、今年5月に日本のメディアが報じたあるニュースでした。新弟子の体格検査の合格基準が今年から事実上撤廃されたことを受け、5月場所で戦後初の身長160センチを切る力士が誕生しそうだ、というものです。このニュースを見たシムさんが本社編集部と話すうちに、「これは単なるスポーツの話題ではない。社会が抱える問題に日本がどう対応するかが問われている」との認識で一致。最終的に、毎週土曜日の紙面で、問題を深く掘り下げて論じるページである「インサイト」に掲載されることとなり、オンライン版では激しい稽古の様子も映像で見せる、マルチメディアを駆使したニュースとして世界に流れることとなりました。

 

 今回の取材企画には、実はわたしたちFPCJも微力を尽くしました。今回の取材のハイライトでありながら、最も手配が困難だったのが相撲部屋の取材です。相撲はメディアでもしばしば取り上げられますが、その取材許可を得るのは必ずしも簡単ではありません。まず日程について、15日x6回の本場所があり、その前後の準備、休息期間、そして地方への巡業などを除くと、取材候補になり得る日は極めて限られています。また、今回のように相撲部屋を訪問して撮影も依頼するとなると、ほとんどの部屋は通常、極めてタイトな日程の中で誠に残念ながらスケジュールの調整がつかず、、、という話になります。今回、間に入って調整したFPCJの担当職員も、一時は健闘むなしく寄り切られそうになりましたが、土俵際で何とか踏みとどまり、必死の思いで「何とかならないか、可能なことだけでも」とあの手この手で粘り腰を続けました。すると、時間切れかと思われたそのとき、取材許可の連絡をいただいたのです。

 

 この幸運を引き継いだのがシムさんです。日頃から何事にも誠実で熱心に取り組み、心優しく笑顔を絶やさない誰もが認める「愛されキャラ」だけに、更なる幸運を引き寄せます。取材に行ってみると、髪結いの床山や行事、呼び出し、食事担当といった脇役ながら相撲文化に欠かすことのできない人たちにも話を聞くことができたのです。取材がいかに充実していたかは、記事が全てを物語っています。

 

 シムさんが特派員として来日したのは、2016年6月。それから8年半になりますが、プレスツアーやプレス・ブリーフィングなど当センターが外国プレスに提供するサービスを最も利用している記者の一人です。「特に日本に来たばかりで、ほとんど情報も知識もなかった時に、多様なテーマで有識者が説明してくれるプレス・ブリーフィングは助かりました」。プレスツアーの常連さんでもあり、8年半で訪れた都道府県は46に達しました。来年はいよいよ最後に残された山口県訪問を熱望しています。

 

 さて、話題の相撲記事ですが、シムさんによると、シンガポールにこれほど熱心な相撲ファンがいたのか、と思わせるほど読者の反応は上々だそうです。幕内力士の3人に1人が外国人と言われ話題となったのは、シムさんが日本で特派員生活を始めた2016年のこと。今回の記事がきっかけとなって、シンガポール出身の力士が誕生する日を楽しみに待ちましょう。(J.Y.)

 

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