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【外国記者の素顔に迫る】「The Foreign Press」Vol. 4 宋看看(そうかんかん)さん(中国「上海東方テレビ」東京支局長)

投稿日 : 2024年11月15日


フォーリン・プレスセンター(FPCJ)の「The Foreign Press」の第4号をお届けします。現在日本では、世界約30の国・地域、140の報道機関に所属する記者約430人が、日本各地を取材し世界に伝えています(FPCJ調べ)。こうした「記者」には、記事を書く記者/テレビ・ラジオのレポーターのほかカメラなどの技術スタッフ、さらに取材先のリサーチから取材調整、取材当日の現場対応を行うコーディネーター兼通訳など様々な役割の人々が含まれます。また、外国記者といっても、日本で採用された日本人スタッフも多く、その割合は全体のおおよそ3人に1人となっています。この企画では、このように多様性あふれる記者をご紹介します。皆さまにおかれましては、今後機会がございましたら、可能な限り彼らの取材にご協力いただきますよう、お願い申し上げます。





 

The Foreign Press Vol.4 2024年11月15日


宋看看(そうかんかん)中国・上海東方テレビ 東京支局長
Ms. Song Kankan, Tokyo Bureau Chief, Shanghai Dragon TV, China

 

 

 

「私は桜が大好きなんです」。宋看看さんが初めて日本に来たのは、1997年4月2日。満開に咲き誇る桜が、多くの人々に新たな季節の始まりを告げようとしていました。大気汚染が深刻化していた北京からやってきた看看さんも、この春から日本の大学で環境政策を学ぶための来日でしたが、この日を選んだもう一つの理由がありました。「日本のテレビ番組や小説などの名場面で必ず登場する『桜ふぶき』を実際に体験したかったのです」。この二十歳を過ぎたばかりの中国人女性の夢は、空港から都内に向かうリムジンバスの中で、すぐに叶えられます。「リムジンバスの窓から見る桜が他のどこより良い、最高の眺めでした」と看看さん。客席が高めのリムジンバスの大きな窓を独り占めし、顔をくっつけて見ていると、時には街路樹の桜が枝ごと目に飛び込んでくるようなスリルも味わいつつ、様々な角度や距離からゆったりと桜を楽しむことができたのでしょう。


宋看看さんは、上海東方テレビの特派員となって間もなく10年になりますが、テレビレポーターとしてこれ以上のお名前はありません。YouTubeチャンネルのタイトルは、「看看看日本!」日本に少しでも関心のある方は、クリックせずにはいられないでしょう。ただ、YouTubeサイトは同テレビ局が運営しているそうですので、併せて、中国で最も人気のあるSNS「微博(Weibo)」の個人アカウントの方もご覧いただくとよいかと思います。より看看さんのプライベートに迫ることができますし、こちらには約32万人のフォロワーがいて、その影響力は特筆に値します。


上海東方テレビは、従業員総数約1万4,700人の中国最大級のメディア集団である上海メディアグループの中核メディアです。テレビとラジオ各12チャンネルを有し、毎夕6時から全国放送されるニュース「東方新聞」は、中国で最も視聴率が高い報道番組として知られているそうです。看看さんは日本からのニュースに加えて、アジアで開催される国際会議も担当しており、アジア各地を飛び回っています。


さて、桜咲く日本に着いた看看さんは、居酒屋などでアルバイトをするうちに日本語も上達し、仕事もNHKや映画監督の田壮壮さん関係の通訳・翻訳などへとステップアップしながら、メディア関係に近づいていきます。「満州を舞台にした小説を書こうとしていた作家の故船戸与一さんの一カ月に及ぶ中国東北地方への取材旅行に同行したこともあります」。そうこうしているうちに、香港フェニックステレビの仕事も舞い込んできましたが、ここでは「次」につながる映像メディアのイロハを実践で学びます。そしていよいよ、2015年に上海東方テレビが日本特派員を募集したのです。取材の調整から撮影、編集まで全て一人でという条件。「私しかいないじゃないの」。その通り見事採用され現在に至ります。


最近は撮影スタッフとしてカメラマンに同行してもらうこともありますが、それ以外の作業は全て1人でこなす看看さん。ほぼ毎日、テレビとインターネットの両方で流れるニュースを本社に送っています。中国の視聴者はどんなニュースを期待しているのかと聞くと、「政治家、元戦犯、芸能・スポーツ選手へのインタビュー。卓球の福原愛さんには既に3回登場してもらいました」。また、面白いことに、街頭での一般市民へのインタビューも人気だそうです。「与えられた映像やコメントだけでなく、多様な市民の本音を聞きたい」。そうだとすると、看看さんにはもっと活躍していただきたいと思います。


ニュースのテーマは、本社の指示だけでなく、東京からも提案可能で、グルメ情報などもうけるとか。FPCJの協力で実現した取材で印象に残っているものは、「静岡のワサビ産地」と「埼玉(行田市)の田んぼアート」。視聴者の反応も良かったそうで、意外に地味で素朴な話題が刺さっているようです。


これまでの記者人生で最大のチャレンジは8年前、二人目の子供を出産したとき。一人でオフィスを切り盛りしていた看看さんは、重いおなかを抱えて伊勢志摩サミットを取材しました。各施設の入り口での金属探知機が体内の胎児に悪影響を及ぼすことが懸念されていましたが「サミット事務局とも交渉し、女性職員に必要に応じて手で触れて全身確認してもらいました」。出産直後には、安倍・プーチン首脳会談を取材するため、母乳のみで育てていた乳児を連れて山口県に出張。自分の母親にも同行してもらいました。

 

最後に一言伝えたいことはあるかと尋ねたところ、取材活動の中で、「いくつかの記者クラブでは、メンバー以外の記者には情報が提供されません。同じジャーナリスト仲間から仲間外れにされているとも感じる」と心なしか表情を曇らせたように見えました。看看さんの特技は、中国式フルートの巴烏(バウ)。いつの日か雲も晴れ、その優しい音色を聞かせていただけることを願っています。(J.Y.)    

        

(参考情報)
看看さんをよりよく知るための関連サイトをご紹介します。

微博(Weibo)
https://weibo.com/u/1823633633
中国最大のSNSに開設された看看さん個人の人気サイトで、30万人以上がフォローしています。

看看新聞
https://www.kankanews.com/kankanhao/gPbwRbRw4OK
上海東方テレビが運営するサイトで、ライブやアーカイブが視聴可能です。

Youtubeチャンネル

https://www.youtube.com/user/kankanewstvshow

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