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【外国記者の素顔に迫る】「The Foreign Press」Vol. 1 ジャスティン・マッカリーさん(英国「ガーディアン」紙東京特派員)

投稿日 : 2024年09月19日


今月から始まる、フォーリン・プレスセンター(FPCJ)の新企画「The Foreign Press」の第一号をお届けします。現在日本では、世界約30の国・地域、140の報道機関に所属する記者約430人が、日本各地を取材し世界に伝えています(FPCJ調べ)。こうした「記者」には、記事を書く記者/テレビ・ラジオのレポーターのほかカメラなどの技術スタッフ、さらに取材先のリサーチから取材調整、取材当日の現場対応を行うコーティネーター兼通訳など様々な役割の人々が含まれます。また、外国記者といっても、日本で採用された日本人スタッフも多く、その割合は全体のおおよそ3人に1人となっています。この新企画では、このように多様性あふれる記者をご紹介します。皆さまにおかれましては、今後機会がございましたら、可能な限り彼らの取材にご協力いただきますよう、お願い申し上げます。





 

The Foreign Press Vol.1 2024年9月13日


ジャスティン・マッカリーさん イギリス「ガーディアン」紙東京特派員
Mr. Justin McCurry, The Guardian (UK)


 

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昨年出版された「KEIRIN:車輪の上のサムライ・ワールド」をお読みになった方はいらっしゃるでしょうか。半端ない太ももの猛者たちがスピードを競う個人レースで、公営ギャンブルなのになぜかオリンピック種目。この程度の認識しか持たない私のような者には目からうろこの解説書で、日本文化論として評価する声が高い力作です。今回紹介する記者がこの本の著者で、英国の有力紙「ガーディアン」の日本特派員を20年以上務めるジャスティン・マッカリーさんです。言うまでもなく、もう一つの肩書は「熱狂的競輪ファン」です。

マッカリーさんは、ロンドン大学(LSE)を卒業後、1990年代初めに英語教師として初来日、95年に一旦帰国し、今度は同大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)での日本研究で修士号を取得し、96年に再来日しました。大阪のデイリー読売で編集業務などを任され、翌97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)が、本格的に取材した最初の大きな国際イベントでした。Jリーグの取材も担当したそうですが、「試合後は日本語の監督会見にも出て、短時間で記事をまとめなければならない。とても鍛えられました」と当時を振り返ります。2003年にガーディアンの前任者の異動に伴い後任特派員の募集があり、マッカリーさんは数十人の激戦を勝ち抜きました。一般的にタイムズやテレグラフなどに代表される保守系メディアが強い影響力を持つ英国において、リベラル系メディアとして独自の姿勢を貫き、公務員や教育関係者、福祉関係者などから強い支持を得ていたガーディアンの東京特派員の職は魅力的だったに違いありません。

 

それから20年余り、マッカリーさんは日本と朝鮮半島をカバーし、テーマは外交、政治、経済のほか社会や文化、スポーツまで広範囲にわたります。これまでで最大の取材イベントの一つが、2019年のラグビー・ワールドカップ日本開催でした。ガーディアンもロンドンから6名ほどの専門記者を送り込む中、マッカリーさんは地元市民の反応など試合以外の周辺取材を担当しました。

 

開幕直前には、当センターが企画運営したプレスツアーに参加して、開催都市の一つである静岡県袋井市の準備状況を取材しました。このツアーで大きな記事になったのが、意外なことに小学校の給食でした。「味と新鮮な食材、高い栄養価を低コストで実現した」日本のkyushokuが驚きをもって伝えられたのです。「当時のイギリスでは、生徒の食事の栄養不足が大きな課題でした。それに配膳や後片付けまで生徒がしている。さらにイギリスでも問題になっていた虫歯予防にもとっくの昔から取り組んでいました」。→★記事はこちら

 

今年のパリ五輪で初めて競技種目に採用され、日本人の金メダリスト誕生に沸いたブレイキング。マッカリーさんは五輪開幕直前に、江戸川区の高齢者対象のブレイクダンス教室を訪れ、70歳を超えた受講者のやる気に溢れる声を満面の笑みとともに伝えました。「少子高齢化や人口減少などは、経済や社会保障制度への悪影響が常に注目されますが、元気な高齢者などのポジティブな話題を取り上げていきたい」と目を輝かせました。→★記事はこちら

 

「今年は国際的に選挙イヤーで、9月の自民党総裁選も当然カバーします。来年は戦後80年や万博も大きなテーマですが、シリアスな話題だけでなく文化や食についても積極的に書きたい」。できるだけ東京を離れて地方を取材したいと話すマッカリーさん。30年以上にわたる日本との関係の出発地点である大阪はお気に入りとのこと。今後は、大阪以西の取材も増やしていきたいそうです。「まだ内緒ですが、今ラーメン・ストーリーを計画していますのでお楽しみに」。

 

 

(参考情報)ガーディアンは、イギリスのメディアの中で、この20年ほどでデジタル化に最も成功したメディアの一つと言えます。メディア業界を専門に扱うニュースサイト「PressGazette」によると、新聞の発行部数が10万部程度のガーディアンは、今年7月の「世界のニュース・ウェブサイトトップ50」において第6位、訪問者数は3.65億と大健闘。1位はBBC(11.9億)、2位はCNN(7.1億)、3位がmsn(6.57億)、4位がNYT(5.67億)、5位がfoxnews(3.68億)。マッカリーさんによると「既存の国内メディアに食傷気味のアメリカ人が異なる見方を求めてガーディアンを読む」のだそうです。日本の大手メディアに飽きた方はぜひお試しください。(J.Y.)

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