実施日 : 2019年02月19日 - 20日
案内:福島プレスツアー
投稿日 : 2019年01月30日
【概要】
<テーマ>
1.原発事故8年、ふるさと復興に向けた新たな胎動
2.福島の環境再生の取り組み:原発事故の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設
3.福島イノベーション・コースト構想~震災・原発事故により失われた産業・雇用を回復させる国家プロジェクト~
福島県は世界で唯一、地震、津波、原発事故を一度に経験し、今なお風評被害や複合的かつ多様な課題を抱えている一方で、困難な状況に屈することなく未来を見据え、希望をつかもうと挑戦を続けている人々が大勢いる。本ツアーでは、東日本大震災・原発事故から8年を迎える福島の現在の姿、復興に向けて挑戦し続ける人々を取材する。
【取材内容】
<テーマ1.原発事故8年、ふるさと復興に向けた新たな胎動>
1. かつらお胡蝶蘭(葛尾村)
原発事故に伴い全村避難が続いていた葛尾村では2016年6月、一部を除き大部分の地域の避難指示が解除された。住民の帰還が課題となる中、コチョウランの栽培を通じて住民の帰村と村の農業再生を目指す取り組みが進んでおり、2018年7月、首都圏への初出荷を迎えた。コチョウランを栽培するのは、地元農家らが2017年に立ち上げた農業法人「かつらお胡蝶蘭(こちょうらん)合同会社」。花卉栽培は風評被害を受けにくく、高齢者や女性でも安全に作業できる。コチョウランは復興への希望を込めて「ホープホワイト」と名付けられ、年間4万8千株の出荷を見込む。杉下博澄(すぎした ひろすみ)さんは、ふるさとの復興に携わりたいとこれまで勤めていた会社を辞めてこの合同会社の立ち上げに参画し、栽培技術を習得するとともに必要な資格も取得した。杉下さんは、コチョウラン栽培を軌道に乗せ、村の農業再生につなげたいと話す。
出荷を待つ約1万株のコチョウランが咲き並ぶビニールハウスを訪れ、杉下さんから話を聞く。
2. 佐久間牧場(葛尾村)
佐久間哲次(さくま てつじ)さんは震災前、乳牛130頭を飼育し、毎日2,700リットルの牛乳を出荷していたが、原発事故による全村避難指示ですべての牛を手放すことになった。それでも佐久間さんは、酪農再開に向けて挑戦する道を選ぶ。2016年6月に葛尾村で一部の地域を除いて避難指示が解除され、2017年12月に原乳の出荷制限が解除されると、2018年4月に避難先から帰村した。佐久間さんの営農地の約9割が今も帰宅困難地域になっており、たい肥センターや貯蔵庫を利用できないなど再開に向けた道のりは険しかったが、同9月には乳牛8頭を購入するところまでこぎつけ、牛舎には7年半ぶりに牛が戻った。試験搾乳で安全性を確認された後、2019年1月11日には牛乳の出荷が再開している。現在、乳牛は40頭まで買い足しており、将来的には事故前の水準を上回る300頭の飼育を目指している。
佐久間牧場を訪れ、原発事故の発生から酪農再開までのあゆみと今後の計画について話を聞く。
3. Jヴィレッジ(楢葉町)
1997年に日本初のサッカー専用のナショナルトレーニングセンターとしてオープンした「Jヴィレッジ」。広大な敷地に天然芝グラウンド8面と人工芝グラウンド3.5面のサッカーコートを有し、東日本大震災発生までの14年間、日本サッカーの聖地として年間50万人が来場していたが、震災後は原発事故の収束に向けた廃炉の対応拠点として使用されることになり、営業が停止された。「神が宿る」として従業員でさえむやみに立ち入ることができなかった天然芝のグラウンドは、砂利やアスファルトを敷き詰めるなどして作業車両の駐車場となり、敷地内には作業員の寄宿舎も建設された。それから7年4カ月を経て、2018年7月にJヴィレッジは大部分の施設が運営を再開した。芝生が整備され、新たな宿泊棟もオープン。同9月には屋根付きの全天候型練習場も新設された。2019年4月には全ての施設が再開する見込みで、2020年東京五輪のサッカー男女日本代表の合宿が予定されている。Jヴィレッジの再開に携わってきた事業運営部の猪狩安博(いがり やすひろ)さんは、「営業再開は無理と言われていたが、2020年東京五輪招致が決定したことでJヴィレッジ再開に向けた機運が高まった。東京五輪の機会に世界のアスリートにここでキャンプなどをしてもらい、福島の復興を発信していきたい」と話す。
復興のシンボルとして新たなスタートを切ったJヴィレッジを訪れ、天然芝グラウンドや全天候型練習場を視察する。
【写真提供:Jヴィレッジ】
4. 株式会社ふたば(富岡町)
測量業として創業した(株)ふたばは、国内外のフィールドで環境調査、測量・設計、コンサルティング業務を行っている。東日本大震災による津波と原発事故により郡山市に避難を余儀なくされたが、2017年8月に富岡町に本社社屋を再建。最先端技術を用いた測量や建設コンサルティングの分野で福島の復旧・復興を支えるほか、震災時に世界から受けた支援への恩返しをしたいとの思いで海外でのODAプロジェクトにも携わっている。同社はその高度な測量技術を活かし、「桜のトンネル」として知られる富岡町「夜の森地区」の桜並木の3Dデータ化を実現した。かつて多くの観光客が訪れた夜の森地区の桜並木はその大部分が今も帰還困難区域になっており、立ち入ることができない。町民の心のよりどころである町のシンボルをデータ化することで、避難中の町民などにVRにより桜並木にいるかのような疑似体験をしてもらい、富岡町とのつながりを維持してもらおうと、ドローンや3Dレーザースキャナなどを駆使して花びら一枚まで鮮明にデータ化した。
震災・原発事故の発生からこれまでのあゆみ、福島の復興に向けた同社の取り組みについて、遠藤秀文(えんどう・しゅうぶん)社長から話を聞くとともに、夜の森地区の桜並木のVRを鑑賞する。
<テーマ2.福島の環境再生の取り組み:原発事故の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設>
1. 福島県環境創造センター交流棟(コミュタン福島)
福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」は、原子力災害からの復興へ向かう福島のあゆみとその現在の環境、さらには目に見えない放射線とはどのようなものかについて学ぶことができる施設。体験型の展示や全球型ドームシアターなどを有し、県内の小学生を中心に国内外から多くの人が訪れている。2017年度の来館者数は約10万人に達した。
放射線に関する基礎知識、震災直後と現在の福島県内の空間放射線量をリアルタイムで比較した展示を中心に説明を受けるとともに、福島県全体の復興現況について聞く。
2. 中間貯蔵施設
中間貯蔵施設は、除染により発生した土壌等を最終処分に至るまでの間、安全かつ集中的に貯蔵する国の施設。福島第一原子力発電所を取り囲む形で大熊、双葉両町にまたがる地区に整備が進められており、その区域は南北約8キロ、16平方キロに及ぶ。用地の取得や施設の整備が続けられる一方で、土壌貯蔵施設の完成に伴い2017年10月から除去土壌の貯蔵が始まっている。福島県内各地の仮置場に保管されている土壌及び廃棄物はフレコンバッグのまま「受入・分別施設」に搬入され、大きな石や可燃物を分別する作業の後、除染土壌は放射性セシウム濃度に応じた「土壌貯蔵施設」に貯蔵され、草木などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にし量を減らす。環境省では中間貯蔵施設に運び込まれる土壌及び廃棄物の量を累計約1400万立方メートル(2018年10月時点)と試算しており、2021年度までに搬入をおおむね完了させるとしている。
ツアーでは環境省担当者から中間貯蔵施設の整備状況について説明を受けた後、「受入・分別施設」、「土壌貯蔵施設」を視察します(受入・分別施設は窓ガラス越しの視察となり、ムービーの撮影不可土壌貯蔵施設は降車して撮影、受入・分別施設はバスのまま施設内に入り、窓越しに撮影。いずれもムービー可)。
【写真提供:環境省】
<テーマ3.福島イノベーション・コースト構想~震災・原発事故により失われた産業・雇用を回復させる国家プロジェクト~>
1. 富岡復興メガソーラー・SAKURA(富岡町)
富岡町内に位置する「富岡復興メガソーラー・SAKURA」は、富岡町、福島発電(株)、JR東日本エネルギー開発(株)の三者が出資する富岡復興エナジー合同会社が運営するメガソーラー。原発事故の影響による休耕農地約40ヘクタールを活用して、2017年11月に運用を開始した。出力は約30MWと県内最大級で、一般家庭約9100世帯分の電力を賄うことができる。事業の中心を担う福島発電(株)は、福島県が出資して2013年に設立された再生可能エネルギー事業者。福島県は2040年ごろまでに県内のエネルギー需要量の100%以上に相当する量のエネルギーを再生可能エネルギーで生み出すという目標を掲げている。同社はその牽引役として、県内で大規模な風力と太陽光エネルギーの発電所の設置を進めるとともに、雇用の創出、地域コミュニティの再生に努めている。福島発電の鈴木精一(すずき せいいち)社長は、原子力災害によって世界中に知られることとなった福島県が再生可能エネルギーの「先駆けの地」となることで、原子力に依存しない持続可能な社会づくりを目指していかなければならないと述べる。
約11万枚の太陽光パネルが並ぶ富岡復興メガソーラー・SAKURAを視察し、鈴木社長から説明を受ける。
【写真提供(右):福島発電】
2. 福島ロボットテストフィールド(南相馬市)
東日本大震災及び原子力災害によって失われた福島県浜通り地域等の産業・雇用を回復するため、当該地域に新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」。その中核事業の一つが、福島県が南相馬市と浪江町に整備を進めている「福島ロボットテストフィールド」だ。「福島ロボットテストフィールド」は、物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットを主対象に、実際の使用環境を拠点内で再現しながら研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる、世界に類を見ない一大研究開発拠点である。ドローンの安全な飛行を支える機能を集約した「通信塔」が2018年7月に供用開始したのを皮切りに施設を順次開所する。2018年度中に供用開始予定の「試験用プラント」は、配管やバルブ等を設置して化学工場や発電所を模擬しており、平時・災害時のプラントにおける点検や非常時対応に関する試験や訓練を行うことができる。
整備が進む福島ロボットテストフィールドを訪れ、福島県ロボット産業推進室から説明を受ける。
【完成イメージ図(左端)提供:福島県】
3. タカワ精密(南相馬市)
タカワ精密は、スマートフォンのセンサーや自動車のコネクターなどの生産ラインで使われるオリジナル機械を製造する、従業員約40名の町工場だ。リーマンショックによる業績の落ち込みから回復しつつあったタイミングで震災と原発事故が発生し、多くの取引先を失った。同社が将来を見据えて、新たな事業の柱として取り組むことにしたのが、ロボット開発だ。震災の前年に都内からUターンし、父親が創業したタカワ精密に加わっていた渡邉光貴(わたなべ こうき)さん(現・取締役)らが中心となって、災害時に水中の行方不明者を捜索するロボットを開発した。現在は、福島第一原発の廃炉作業で活用できる水中ロボットの開発に取り組んでいる。安倍総理も2016年に同社を訪問しており、翌年の国会での施政方針演説では「南相馬が『ロボットの町』と言われるよう、若い力で頑張る」との渡邉さんの言葉を引用した。
南相馬ロボット産業協議会の副会長も務める渡邉取締役から、現在開発中の水中探査用ロボットを披露してもらいながら話を聞くとともに、工場内を視察する。
【写真提供(右):タカワ精密】
【実施要領】
1. 日程
※日程は調整中のものであり、予告なく変更になる可能性があります。
<2月19日(火) >
7:12-8:33 東京駅~郡山駅(やまびこ123)
9:30-10:25 コミュタン福島
11:30-12:30 農業法人かつらお胡蝶蘭合同会社
12:45-13:50 佐久間牧場
13:50-15:15 移動(車中弁当)
15:15-16:30 Jヴィレッジ
17:00-18:00 株式会社ふたば
富岡ホテル泊
<2月20日(水)>
7:55 宿舎発
8:55-9:55 タカワ精密
10:20-11:30 福島ロボットテストフィールド
11:35-12:25 移動(車中弁当)
12:30-13:50 富岡復興メガソーラー・SAKURA
14:15-16:30 中間貯蔵施設
19:30-20:48 郡山駅~東京駅(やまびこ156)
2. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3. 参加費用:10,000円
(全行程交通費、宿泊費(夕食、朝食込み)、昼食を含む)
※申し込み後に参加をキャンセルされる場合、理由の如何を問わず、以下のキャンセル料をお支払いいただきます。
・2月18日(月)15:00までのキャンセル 5,000円
・それ以降のキャンセル 10,000円(参加費用全額)
4. 募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
※申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当:
取材協力課 菅原順也、小泉和子
(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp)
6. 備考:
(1)本プレスツアーは福島県が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。
(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。
(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
(4)福島県とFPCJは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。
(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。