実施日 : 2018年09月26日 - 27日
案内:平泉・遠野・花巻プレスツアー
投稿日 : 2018年09月04日
取材テーマ
1. 世界遺産のまち「平泉」における文化の保護と継承の取り組み
2. 日本におけるグリーン・ツーリズムの先進地、遠野
3. 岩手発!世界を魅了する、丹精込めたものづくり
平泉町と遠野市、花巻市は、岩手県の内陸部に位置しています。11~12世紀後半に京都に次ぐ日本第二の都市として栄え、2011年に東北初の世界文化遺産に登録された平泉。古き良き日本を感じさせる田園風景と、河童(かっぱ)や座敷童(ざしきわらし)などの伝承が記された『遠野物語』で知られる遠野。いまも多くの日本人に読み継がれている童話作家・詩人である宮沢賢治の生誕の地で、多くの温泉があることで知られる花巻。いずれの町もそれぞれの歴史と文化が色濃く残り、国内外から多くの観光客が訪れています。
このツアーでは、平泉の中尊寺における文化財保全の取り組みと、過去の姿を明らかにするために続けられている遺跡の発掘調査、後継者不足で途絶えた歴史ある神楽を復活させ海外公演をするまでになった女性たちの取り組みを取材します。さらに、美しい里山の景観や『遠野物語』に代表される歴史・文化という地域資源を活かし、グリーン・ツーリズムにより農村の活性化を実現している現場を取材するため、農家民泊も体験します。
またこの地域では、効率至上主義とは一線を画す、地域の風土に根ざし手間暇をかけたものづくりが行われており、首都圏、海外から高い評価を得る製品も出てきています。ツアーでは、自然栽培された米を醸造したどぶろくで海外からも高い評価を得ている若手醸造家と、高品質なツイード生地を世界的なファッションブランドに納める社員わずか17名の毛織物メーカー、良質で大粒のぶどうを一房丸ごと乾燥させた生レーズンをおしゃれにパッケージして消費者の心をつかんだぶどう農家を取材します。
【取材内容】
1. 世界遺産のまち「平泉」における文化の保護と継承の取り組み
平泉は11世紀末から約100年にわたり奥州藤原氏の拠点として栄えました。藤原氏は当時広まっていた仏教の「浄土思想」の考え方に基づいて、平泉を舞台にこの世に平和な理想世界(浄土)を創り出そうと、この地に多くの寺院・庭園を造りました。そのうちの5つの遺跡は2011年、「平泉-仏国土を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」として、東北地方初の世界文化遺産に登録されました。
(1)中尊寺
世界文化遺産の構成資産の一つである中尊寺は、奥州藤原氏のゆかりの寺院です。国宝の金色堂は1124年に建立された仏堂で、京都の平等院鳳凰堂と並ぶ、平安時代の浄土教建築の代表例です。極楽浄土を表現しようと様々な意匠が凝らされ、内外は金箔で飾られており、平泉の古の絢爛豪華な文化を今に伝えています。
中尊寺では、金色堂をはじめとする文化財を次世代に守り伝えるため、不断の取り組みが続けられてきました。中でも、1962年から7年の歳月をかけて行われた「昭和の大修理」では、傷みが極限に達していた金色堂をすべて解体し、知恵と匠の技を結集させて修復、約3万枚の金箔を使用して創建当時の姿を蘇らせました。2018年は「昭和の大修理」の完了から50年にあたります。板壁に隙間が生じるなど経年劣化も見られるため、現在、保存方法や修理の必要性などについて専門家による検討も進められています。
また、平泉は江戸時代までに中尊寺金色堂以外ほとんどの建造物を消失しており、地下に残された建物跡や池跡など考古学的遺跡から当時の姿を推し量るほかありません。中尊寺の境内には、地下に12世紀の寺院の遺跡が良好な状態で保存されていることが分かっており、平泉の往時の姿をさらに明らかにするため、発掘調査が現在も続いています。
今回のツアーでは、50周年を迎えた「昭和の大修理」や金色堂の現在の状態について説明を受けるとともに、金色堂、さらには金色堂を含む文化財を火災から守るために景観に配慮しつつ設置されている放水銃、ドレンチャーなどの消防設備を視察します。最後に、中尊寺境内「大池跡」で現在も続く発掘作業の様子を視察します。
※金色堂内は撮影禁止です。
(右下写真:平泉文化遺産センター提供)
(2)達谷窟(たっこくのいわや)毘沙門(びしゃもん)神楽
神楽(かぐら)とは、神社の祭礼時などに神様に奉納される歌や踊りで、日本各地に伝えられています。その一つである達谷窟毘沙門神楽は、9世紀に創建されたと言われるお堂「達谷窟毘沙門堂」で修験者と呼ばれる修行僧たちが奉納していた由緒ある神楽です。明治初期の修験禁止により廃止されましが、村の男たちが修験色を取り除いた物語中心の内容に変えて、伝承してきました。
戦後の社会情勢の変化の中で担い手の確保が難しくなり、神楽団は二度の活動休止を余儀なくされましたが、1986年から次世代に伝統を伝えようと地域の幼稚園で神楽の基本を指導したことが転機になります。園児たちの舞いを見て神楽に関心を持った母親たちが中心になって、再び神楽団が結成されました。男性中心の神楽界では珍しい女性神楽団は注目を集め、ついには国内だけでなく、ニューヨークのカーネギーホール、ロンドンなどで公演を行うまでになりました。現在のメンバーは10名で、うち8名が10代から60代までの女性です。毎週一回、平日の夜に稽古を重ね、毘沙門堂での奉納行事や地域のイベントなどで、伝承の舞を披露しています。
英国出身で1991年から平泉町に住む千葉ローズマリーさんも、幼稚園に通うお子さんがきっかけで毘沙門神楽に加わった一人です。3年前に引退するまで、20年以上にわたりメンバーとして神楽を舞いました。
ツアーでは、毘沙門神楽の代表を務める照井幸子さんと娘の久美さんに毘沙門神楽の歴史と伝統後継の取り組みについて説明を受けるとともに、達谷窟で毘沙門神楽の舞を披露いただきます。また、平泉の文化への造詣が深く外国人観光客のガイドのほか、平泉町の観光審議会の委員も務めた千葉ローズマリーさんから、平泉や毘沙門神楽の魅力について話を聞きます。
(写真:平泉町提供)
2. 日本におけるグリーン・ツーリズムの先進地、遠野
遠野は、古き良き日本を感じさせる美しい里山の風景が広がる、県内有数の観光地です。『遠野物語』により民話のふるさととして知られ、昔話に出てくるような景色を求め、国内外から年間156万人もの旅行者が訪れています。
遠野は日本におけるグリーン・ツーリズムの先進地、成功事例としても知られます。現在、農家に宿泊して作業体験や地域の人との交流を楽しむ「農泊」プログラムには、約140軒の受入れ家庭が登録されており、年間約2,000名の旅行者(教育旅行を含む)が、農家の人と一緒にご飯をつくる、野菜を収穫するなど、農家のありのままの暮らしを体験しています。その中には、台湾やシンガポール、米国などからの旅行者も含まれます。都市農村交流のねらいは、地域を活性化すること、来訪者を受け入れることで地域住民がやりがいや地域への誇りを持ち続けること。遠野の先駆的な取り組みは大きな成果を上げており、全国の自治体から多くの視察も受け入れています。
農泊プログラムを運営する認定NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワークから遠野のグリーン・ツーリズムの取り組みについて説明を受けた後、複数の農家に分かれて宿泊し、実際に農泊プログラムを体験します。また、遠野を代表する観光スポットである伝承園とカッパ淵も視察します。
(左下・右下写真:認定NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク提供)
3. 岩手発!世界を魅了する、丹精込めたものづくり
(1)「どぶろく」で世界に挑む若き職人
どぶろくとは、米、麹、水を発酵させた素朴な酒です。かつては各家庭などでも製造されていましたが、明治以降、酒税法により自家醸造が禁止されてからは、密造酒として家のなかでひっそりと造られていました。しかし、小泉政権による規制緩和、地域振興の動きの中で、飲食店や民宿などでのどぶろくの自家醸造を認める「どぶろく特区」ができ、遠野市は2003年、全国に先駆けて「どぶろく特区」第一号となりました。
特区認定を機にどぶろく醸造に取り組み始めたオーベルジュ「とおの屋 要(よう)」のオーナーシェフ佐々木要太郎氏は、どぶろくという、日本独自の発酵の仕方で生まれる酒で世界に挑むことを決意。10年以上の試行錯誤を経て、独学で発酵・熟成の技術を習得、オリジナルのレシピを開発しました。無農薬・無肥料で育てた遠野原産の米を使った佐々木氏のどぶろくは、それまでのどぶろくの常識を覆すエレガントな味が評価され、今では国内だけでなく、スペイン、フランス、香港の高級レストランも扱うようになっています。
佐々木氏を動かしているのは、どぶろくの醸造量を増やすことにより、原料となる自然栽培の米をつくる農家に販路を提供し、新たなビジネスモデルを作りたいとの思いです。また、遠野という小さな町で世界に評価される取り組みをすることで、次の世代の子どもたち、ここを離れた人たちに故郷への誇りを与えたいとも語ります。
佐々木氏から、これまでの取り組み、どぶろく造りと米作りに込める思いについて話を聞くとともに、醸造所を視察します。
(左写真:民宿とおの提供)
(2)株式会社日本ホームスパン
「ホームスパン」とは、「家庭で(home)紡がれた(spun)」という意味で、スコットランドの羊毛農家が残り物の羊毛を自家用に紡ぎ織ったのが始まりと言われます。現在では手織り・手紬ぎに限らず、ハンドメイドの感覚を大切にしたツイードの一種を指しています。日本には明治期、岩手県に緬羊が導入された際に伝えられました。
1961年創業の(株)日本ホームスパンは、現在、日本で唯一ホームスパン生地を生産している企業です。羊毛に絹糸を織り混ぜるなど独自性を加え、デザイン性の高い生地を生産しており、その技術力とデザイン力により、フランスなど海外の有名ブランドも買い付けに来ており、パリコレでも同社のツイードが使われています。現在、年間の売り上げの60%から70%は海外が占めています。注文の増加に対応するため、機械化による量産に踏み切りましたが、手紬ぎの糸で手織りの風合いを実現できる機械を探し、独自の調整を加えました。他方、国内外のブランドに提案する年間700近い生地サンプルを作る作業は、今も伝統的な手織り機が使われています。
社員わずか17名で世界的な製品を生み出す日本ホームスパンのあゆみについて菊池久範専務から説明を聞くとともに、機織りの音が響く工場内を視察します。
(左写真:日本ホームスパン提供)
(3)佐藤ぶどう園
岩手県花巻市は土壌が豊かで昼夜の寒暖差の激しいため、ぶどう栽培に適しています。1954年創業の佐藤ぶどう園の佐藤秀明さん・徹さん親子は、ブドウの一粒一粒に日光と栄養を行き渡らせるため「一枝一房」の栽培にこだわり、手間のかかる栽培管理を厳しく行うことで、大粒でみずみずしく、芳醇な甘さを持った高級ぶどうを育てています。
佐藤ぶどう園の名を一躍有名にしたのが、良質で大粒なぶどうを一房丸ごと乾燥機にかけて干し上げた高級干しぶどう「太陽の生レーズン~Amulet of the Sun」です。糖度18度以上に管理された大粒の生食用ぶどうを収穫後すぐに、園内の加工施設で独自の製法で丸ごと干し上げたもので、収穫から出荷できるまでには約2週間かかります。レーズンの常識を超えた「大きさ」と「甘さ」、世界を意識したスタイリッシュなパッケージが首都圏を中心に話題を呼び、2015年には復興庁主催の「世界にも通用する究極のお土産」に、2016年のG7伊勢志摩サミットでは各国首脳への土産品にも選ばれました。秀明さんが生レーズン製造に挑戦したのは、次の世代に引き継ぐぶどう園の将来を考えてのこと。息子の徹さんは、将来はワイナリーも手掛けたいと語ります。
収穫の最盛期を迎えているぶどう園で、佐藤さん親子から高品質のぶどう栽培と農業の高付加価値化の取り組みについて話を聞くとともに、ぶどう園と加工場を視察します。
(右写真:佐藤ぶどう園提供)
【実施要領】
1. 日程:2018年9月26日(水)~27日(木)(1泊2日)
2. スケジュール:
※日程は調整中のものであり、予告なく変更になる可能性があります。
<9月26日(水)>
7:16-9:30 東京駅~一ノ関駅
10:15-12:00 中尊寺取材
12:20-13:40 達谷窟毘沙門神楽取材
13:50-15:20 移動(平泉町~遠野市、車中昼食)
15:30-17:00 遠野グリーン・ツーリズム取材
17:00- 農家民泊体験
<9月27日(木)>
-10:00 農家民泊体験
10:00-11:30 どぶろく取材
11:45-12:30 移動(遠野市~花巻市)
12:30-13:15 昼食
13:30-15:00 日本ホームスパン取材
15:15-16:45 佐藤ぶどう園取材
17:19-19:56 新花巻駅~東京駅
3. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
4. 参加費用:13,000円
(全行程交通費、農泊体験費(夕食・朝食込み)、昼食(2回)を含む)
※申し込み後に参加をキャンセルされる場合、理由の如何を問わず、以下のキャンセル料をお支払いいただきます。
・9月25日(火)15:00までのキャンセル 6,500円
・それ以降のキャンセル 13,000円(参加費用全額)
5. 募集人数:
10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
※申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
6. FPCJ担当:
取材協力課 菅原順也、濵田りん
(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp)
7. 備考:
(1)本プレスツアーは花巻市・遠野市・平泉町が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。
(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。
(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
(4)花巻市・遠野市・平泉町、及びFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。
(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。
(6)本ツアーは、報道を目的とした取材機会の提供を目的としているため、参加者には、本国での報道後、FPCJを通じ花巻市・遠野市・平泉町に、記事、映像、音声(ラジオの場合)のコピーの提出をお願いしています。また、報道が英語・日本語以外の場合は、内容を把握するため英語または日本語の概要の提出も併せてお願いしています。参加申込者は、これらに同意いただいたものとみなします。