実施日 : 2011年07月06日 - 07日
案内:九州プレスツアー(福岡市/APU)(2011年7月6-7日)
投稿日 : 2013年08月22日
「風評被害からの回復へ、元気な九州」
3月11日の震災とそれに続く福島第一原発の事故の後、東北地方から1,000キロ以上離れた九州地方でも外国人客が8割~9割減少し、“日本全国が危険”といった風評により大きな影響を受けた。
2010年に九州地方(山口を含む)を訪れた外国人客は、約100万人。その多くが中国、韓国、台湾などからで、東アジアとの距離の近さから気軽に訪ねられる場所として高い人気を誇ってきた。それだけに、外国人客の減少が地元経済に及ぼす影響は深刻だ。
しかし、震災から約3か月が経過した今(※本プレスツアー実施時は約4か月経過)、外国人客が徐々に回復しており、再び元の賑わいを取り戻しつつある。一時停止していた中国のクルーズ船の博多港(福岡市)への寄港も8月に再開される。3月12日には、九州を縦断して福岡から鹿児島までの総延長257キロを結ぶ九州新幹線が全線開通し、地元を活気づけている。この開通によって、日本列島の北は青森から南は鹿児島まで約2400キロが新幹線で結ばれたことになる。また、福岡市は、震災後、IT関連業界など、リスクを分散化する目的で拠点・機能の分散を図る企業からも、新たな立地先として注目されている。
大分県別府市に位置する立命館アジア太平洋大学(APU)は、日本有数の外国人留学生数を誇り、学生総数5,980名のうち、約半数の2,692名が各国からの留学生だ。留学生を含む同学の学生グループは、震災後、正しい情報が得られず不安を感じている留学生やその保護者に向けて、インターネットを通じて12カ国語での震災情報の動画を発信したほか、大分県が毎日日本語で発表する県内の放射性物質の数値を英訳し、随時彼らのサイト上で紹介してきた。
本ツアーでは、日本における対アジアの玄関口であり、博多祇園山笠の祭りが始まって賑わいを増す福岡市、立命館アジア太平洋大学(APU)、同学が立地する別府市の鉄輪温泉を取材し、震災による風評被害から回復する九州の力強い姿を追う。
<取材内容>
九州の中心である福岡市は、アジアに近いという特性を活かし、古くからアジアに開かれた街として発展してきた。市中心部まで地下鉄で5分の場所にある国際空港・福岡空港と、日本一の国際旅客港である博多港は、福岡市の大きな強みとなっている。2010年に同市を訪れた外国人観光客は、福岡空港と博多港から入国した数だけでも76万人余り。その多くが、韓国、中国、台湾からなどの東アジアからで、福岡市はまさに日本における対アジアの玄関口と言える。髙島宗一郎福岡市長は震災後、海外に向けて「九州を含む西日本では直接的な被害が発生しておらず、通常通りの市民生活、経済活動が行われている。多くの方々にお越し頂き、これまで以上の貿易活動を行うことが、被災地を支え、日本が元気になる源になる」といったメッセージを発表した。
本ツアーでは、髙島市長に、福岡市では風評によってどのような影響があり、それに対してどのような対応をしてきたか、また、風評被害からの現在の回復状況について聞く。さらに、九州新幹線全線開業や企業誘致に関する取り組み、アジアにおいて福岡市が目指す役割など、今後の展望についても聞く。
2011年3月12日、九州新幹線が全線開業した。既に開通していた新八代(熊本)~鹿児島中央(鹿児島)に加え、新たに博多(福岡)~新八代(熊本)が開通し、計画から37年を経て、遂に福岡から鹿児島まで、九州を縦断する257キロが、最短1時間19分でつながった。奇しくも開業日が震災翌日だった為、静かなスタートとなってしまったものの、地元が寄せる期待は大きい。JR九州ならではの斬新なデザインの車両も注目されている。新型車両の内装には、九州産の木材などが活用され、和の意匠が随所に盛り込まれている。新幹線の車両で地域の魅力・風土をアピールするという、日本でも九州新幹線だけのユニークな取り組みを見ることができる。車内アナウンスも日・英・中・韓の4言語で行われ、外国からの観光客の誘致にも力を入れる。今回の九州新幹線全線開業により、日本の北(青森)から南(鹿児島)までの約2400キロが新幹線で結ばれたことになる。なお、3月11日の地震発生時には、東北新幹線が早期に揺れを検知して減速し、事故を防いだことが知られているが、九州新幹線も同じ地震計システムを導入している。
本ツアーでは実際に九州新幹線に試乗すると共に、JR九州の地震対策システムなどについて話を聞く。
福岡の夏の風物詩、博多祇園山笠は、本年2011年が鎌倉時代の発祥から770年目の節目となる。鎌倉時代中期(1241年)に、名僧・聖一国師が疫病除去のため、町民が担ぐ施餓鬼棚に乗って祈祷水(甘露水)をまいたのが始まりと言われている。山笠と呼ばれる山車を男達が担いで市中を威勢良く回る様は勇壮そのもので、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。関東では警備人員の不足や“自粛”ムードで中止される祭りも多いが、博多祇園山笠は例年通り開催され、地元に賑わいをもたらす。山笠には7つの流れ(地域ごとの集団)が参加するが、そのうちの「西流」の代表、木梨久太郎さんは「東日本の被災地の皆様にも博多の元気をお届けし、少しでも復興の励みになればと」と語る。
本ツアーでは、翌週から始まる山笠を担ぐ行事を前に、山笠を清める厳かな神事、「御神入れ」を行う西流の人々の様子を取材すると共に、西流 加茂敏雄副総務に話を聞く。
4.企業のリスク分散化で注目される福岡市/株式会社ポリフォニー・デジタル
・福岡市への拠点立地増加
3月11日の震災後、IT関連業界を始めとする民間企業のなかに、リスクを分散する目的で、一点集中してきた拠点・機能を分散化させる動きがある。そのようななか、立地先として福岡市が注目を集めている。アジアを始めとする海外への近さ、住環境の良さなどに加え、福岡市による企業誘致策としての立地交付金(移転初年度のオフィス賃料の3分の1を市が負担)もあり、震災後、同市に対する企業からの移転・分散に関する相談は40件近くに達し、そのうち7社ほどの福岡市への立地が確定している。
株式会社ポリフォニー・デジタルは、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの100%出資によるソフトウェア開発会社。米国、欧州などの国際市場を含め、全世界で累計6,315万本を出荷したプレイステーション用ソフト、「グランツーリスモ」シリーズを始め、クルマやバイクのゲームを中心に企画・制作している。同社は6月に東京の本社機能の一部を福岡市に分散させた。
本ツアーでは、福岡市経済振興局 国際経済部 企業誘致課から、福岡市への企業の立地状況や、同市の企業誘致策について聞くと共に、新たに福岡に分散拠点を設けた株式会社ポリフォニー・デジタルを訪問し、福岡への立地を決めた理由などについて聞く。
福岡は、めんたいこ、もつ鍋など、独特の食文化でも知られている。なかでも豚骨ラーメンはその筆頭。そして、豚骨ラーメンを、世界に向けて発信しているのが福岡拠点の「一風堂」だ。「日本人にとってのソウルフードであるラーメンを、世界のポピュラーフードにしたい」との思いから、ニューヨークにも進出。現地では1時間待ちの行列ができるほどの人気ぶりだ。更に、シンガポール、韓国にも出店しているほか、2011年からは香港・中国への進出を開始、5年で80店舗を展開する計画だ。「海外の人々にも本物のラーメンの美味しさを味わって貰いたい」と材料を現地調達しながら、福岡の味を追求している。
本ツアーでは、一風堂を訪問、昼食としてラーメンを食すと共に、一風堂関係者より話を聞く。
※豚骨ラーメンを避けたい参加者には別メニューを用意しています。
大分県別府市に位置する立命館アジア太平洋大学(APU)は、日本有数の外国人留学生数を誇り、学生総数5,980名のうち約半数の2,692名が各国からの留学生だ。120を越える国・地域から学生が集まり、多文化が共生する国際的なキャンパスだ。
本ツアーでは、是永駿学長に話を聞くほか、各国の学生達のさまざまな取り組みを取材する。
APU学生広報スタッフは、APUの魅力を内外に発信している、留学生を含む学生によるグループ。震災後、正確な情報が得られず不安を感じている留学生やその保護者に向けて、12カ国語での震災情報の動画をYouTube等で発信した。さまざまな国・地域出身の学生が、大分県が発表する県内の放射性物質に関する情報を母語に翻訳して自ら伝え、さらに県のホームページで日本語のみで公表されている県内の空間放射線量や水道水中の放射性物質の測定値の見方を、図を使いながら解説したものだ。また、県が毎日発表する放射性物質の数値を、引き続きAPU学生広報スタッフのサイトで随時英語と日本語で紹介している。
・インドネシアウィーク
APUを象徴するイベントとして、春と秋に行われる「マルチカルチュラルウィーク」がある。これは、一週間かけて一つの国・地域の文化を紹介していくイベントで、出身の留学生が、企画から、出身国の企業・大使館などからの協賛集め、運営までを一貫して行う。期間中はキャンパス中でそれぞれの文化を紹介する様々なパフォーマンスや展示が行われるほか、カフェテリアには伝統料理が登場する。最終日(金曜)の夜に行われるグランドショーは、立ち見が出るほどの人気で、県内・県外からも多くの人々が観にやって来るという。本ツアーがAPU訪問する日は、「インドネシアウィーク」開催中。半年前から準備を重ねてきたインドネシア人学生のムハンマド・ムスタファイナル・アヒヤールさんは、「色々な国の学生達や、地元市民のみんなにインドネシアを知って貰いたい」と意気込みを語る。
・APU卒業生 呂凡氏
呂凡さんは、中国山東省出身。2009年にAPUを卒業後、APUの地元である別府の旅行会社に就職、中国を始めとしたアジアからの観光客の受け入れ業務を行ってきた。在学中から日中友好活動に携わってきた呂凡さんは、日中の架け橋ならぬ、「踏み台」になりたい、別府に恩返しがしたい、と別府の旅行会社で働いている。別府も震災後客足に深刻な影響が出たが、中国の人たちが求める癒しや先進医療など大きな可能性があると語る。
APUが立地するのは、日本1位そして世界2位の湧出量を誇る温泉群を有する別府市だ。なかでもAPUに隣接するのが、別府市でも最も多く源泉が集中する鉄輪温泉。鎌倉時代(1185年~1333年)、この地を訪れた一遍上人(仏教僧)が湯治場を開いたのが起こりと言われている。古くから湯治の街として栄え、療養のための長期滞在する人も多い。そして近年は、韓国、中国を始めとする外国からの観光客にも人気だ。鉄輪温泉を含む別府市では、宿泊施設における韓国ウォン、台湾ドル、香港ドル、中国元、ユーロ、米ドルの外貨両替が可能なほか、2009年からは日本で初めて組織的に宿泊施設でのウォン建ての清算を受け付けている。これらの動きの仕掛け人とも言えるのが、別府市外国人旅行者受入協議会の甲斐賢一会長だ。
「国際観光都市として、相手の国の通貨を受け入れることは重要なおもてなしの一つ」と語る甲斐さん。観光庁のVisit Japan大使にも任命されており、鉄輪温泉の魅力を歩きながら紹介する街歩きツアーも行っている。甲斐さんを始めとした地元ボランティアがガイドを務めているが、APUの留学生が外国語でガイドを行っていた実績もある。
本ツアーでは、甲斐賢一さんに話を聞くと共に、国内外から人々を惹きつける風情ある鉄輪温泉の街並みを歩く。
<実施要領>
1.日程案
※詳細は参加者に別途通知。
1日目:7月6日(水)福岡市
出発時、午前6:50までに羽田空港 第2旅客ターミナルビル 2階 出発ロビー(時計台1番前)集合
2日目:7月7日(木)APU/大分県別府市
2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用:1人13,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5.FPCJ担当:吉田、矢野(TEL: 03-3501-3405)
6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。