実施日 : 2016年11月29日
案内:京都大学プレスツアー「独創性あふれる研究の場」
投稿日 : 2016年11月09日
独創性あふれる研究の場
~防災から脳の原理、イヌ・ネコの心理まで~
「千年の都」として知られる京都にキャンパスを構え、その伝統を生かしながら、1897年の創立から数々の個性的な研究に取り組んできた京都大学。ノーベル賞受賞者も数多く輩出しており、1949年の湯川秀樹氏(物理学賞)にはじまり、近年では2012年の山中伸弥氏(生理学・医学賞)など、9名の受賞者が同大学にゆかりのある人物。毎年10名近くの教授陣が候補に挙がっている。
10学部、18大学院・研究科、国内最多の14研究所もの教育研究施設を有していることからも、一大学としての研究の幅の広さがうかがえる。学生の自由で豊かな発想をはぐくむべく、教職員自らも共に切磋琢磨しながら、世界に注目される研究分野の開拓に取り組んでいる。
今回のプレスツアーでは、京都大学の数多ある研究の中から、日々の生活に密着した“ユニークな”テーマに注目。研究の現場を視察しながら研究者を取材する機会を提供するとともに、ゴリラ研究の第一人者としても知られる山極壽一(やまぎわ・じゅいち)総長のインタビューも実施する。
※本プレスツアーは、京都大学が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
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【取材内容】
1.京都大学防災研究所 寶馨(たから・かおる)所長/川池健司准教授
「災害多発国・日本の防災・減災を支える研究所」
災害多発国である日本の大学としての責任を果たすべく、1951年に宇治市に設置された防災研究所。南海トラフ地震など近い将来に予測されうる災害に対する防災・減災対策の構築を目指し、「地震・火山」「大気・水」「地盤」「総合防災」の4つのグループに分かれて最先端の研究活動を展開している。
今回訪問するのは、同研究所が有する研究施設の一つである「宇治川オープンラボラトリー」。1952年に「宇治川水利実験所」として誕生(2002年に改称)し、半世紀以上にわたり、「水と土」に関する災害の調査研究を実施している。
特徴的なのは、豪雨や土砂災害などをリアルに再現できる観測・実験装置を擁していること。同分野では世界でも類まれな大規模な設備であることから、“開かれた研究施設”として、外部の研究機関、企業、学校などとの共同利用も進められている。また、消防士の訓練、一般市民を対象にした災害体験学習の場としても活用されおり、近年は国内で豪雨災害が多発していることから、その需要も年々高まっている。
防災研究所の概要については、バスで移動中に寶所長が説明。豪雨災害の研究者である川池健司准教授の解説を受けながら、豪雨を再現する「雨水流出験装置」、水害発生時に地下から脱出する「実物大階段模型(流水階段)」を体験取材する。また、2014年に新設された津波を人工的に起こす「津波再現水槽」、波の動きに反応して動く「流起式可動防波堤」の実証実験を見学し、南海トラフを震源とする巨大地震津波対策に向けた防災計画の策定への貢献について取材する。
「雨水流出験装置」
1時間200ミリの豪雨が天井から降り注ぐ
「実物大階段模型(流水階段)」
大雨で地上が約30センチ冠水したという設定で、毎秒約280リットルの水が流れ込む
※体験しながらレポートできます!
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2. 文学研究科 千々岩眸(ちぢいわ・ひとみ)博士2年/高木佐保・博士2年
「イヌやネコの心が読める!?心理学」
“ペットブーム”が叫ばれるようになって久しい日本。近年はさらにその熱は増しており、イヌとネコだけで推計2,000万匹が飼われている。メディアでも多くの特集が組まれ、もはや、年間一兆円ほどを稼ぐ一大産業だ。
かわいいペットは家族の一員。どの飼い主もそう思っているに違いないが、果たして、人間はどの程度彼らの気持ちを理解できているのだろうか―。言葉でコミュニケーションが取れない分、人間とペットが互いに心で理解しあえれば、より良い関係が築けるのでは・・・。そんな思いで研究に取り組むのが文学研究科の藤田和生教授の研究室のメンバーCAMPだ。
CAMPは“Companion Animal Mind Project”の略。2003年に発足し、イヌを調査するCAMP WAN(キャンプワン)、ネコを調査するCAMP NYAN(キャンプニャン)の2チームから成る。人間にとって身近な動物であるにも関わらず、あまり研究が進んでいない分野だったが、世界的に2000年ごろからイヌの心理への注目が高まり出したこともあり、藤田教授が日本でも先駆けてイヌ好きの研究室のメンバーとともにCAMPを立ち上げた。
2015年には「イヌは飼い主に協力しない人を嫌いやすい」、2016年には「ネコは物理法則を理解している」という研究成果を発表し、大きな話題を呼んだ。メンバーたちがこだわっているのは、「自然な心の動き」を調査すること。特別な訓練をしたイヌやネコでなく、ごく普通の家庭で飼われているペットをホームページで募集している。イヌはマンションの一室に構えた調査室“こころのラボ”に来てもらうが、ネコは縄張り意識が強く調査室では自然な反応が見られない可能性があるため、家庭やネコカフェを訪問して研究を進めている。
CAMPのメンバーである千々岩院生、高木院生に、これまで実施した実験から得られたイヌ・ネコの心理学について聞く。また、実際にイヌと飼い主に“こころラボ”に来てもらい、実験のデモンストレーションを実施する。
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3. 情報学研究室 神谷之康(かみたに・ゆきやす)教授
「人が見た夢を突き止める―SFの世界から医療分野への活用へ」
朝起きて、夢を見たことは覚えているけれど、どんな内容か忘れてしまった・・・。誰もがそんな経験をしたことがあるはず。しかし近い将来、どうしても思い出せなかった自分の夢の中身の「解読」が可能になるかもしれない。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)では、人間の夢を脳活動のデータによってデコーディング(解読)する研究が進められている。
このユニークな研究を率いているのは、ATR神経情報学研究室の神谷之康室長。脳の原理について、実験生物学的アプローチではなく、心の状態とリンクさせてコンピューターで解析し、集積したデータに基づいて一定のルールを導いていくという斬新な研究だ。
まずは目覚めた状態で目にした“モノ”の種類により、脳の血流がどう変化するのかをデータ化し、「機能的磁気共鳴画像(fMRI)」に記録。そのfMRI内のデータを寝入りばなの人間の脳の血流の変化と照らし合わせ、夢に出てきた人物や物質の画像を割り出し、再現するという方法だ。まさに、フィクションや夢占いの世界が現実になろうとしていると、世界初の試みに注目が集まっている。
いまだ解明されていない点が多く、“人類最後のフロンティア”とも呼ばれる脳。その活動が明らかにできるとあって、海外の研究機関からの関心も高い。2013年には米国サイエンス誌に研究成果が掲載された。神谷教授が目指しているのは、医療分野や情報通信分野での実用化。メスを入れることなく、脳が発する信号によって、義肢が自動的に動く仕組みにつなげたいと意気込んでいる。
神谷教授から夢の解読をはじめとした、脳活動データの研究、実用や応用の可能性について話を聞くほか、fMRIの装置を見学しながら研究のプロセスを取材する。
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4. 山極壽一(やまぎわ・じゅいち)京都大学総長インタビュー
「大学は静ひつな学究の場であるとともに、世界や社会に通じる“窓”として、有能な学生や若い研究者の能力を高め、活躍の場へ送り出す役割を果たさなければならない」。2014年に第26代総長に就任した際に山極総長が打ち出した構想とともに、京都大学が常識にとらわれず、自由な学風を継承し、学問の都であり続けるための取り組みや今後の展望などについて聞く。
<プロフィール>
1952年、東京生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。 理学博士。専門は霊長類学、人類学。ルワンダのカリソケ研究センター客員研究員。 日本モンキーセンターリサーチフェロー。京都大学霊長類研究所助手、 京都大学大学院理学研究科教授を経て現職。 1978年からアフリカ各地で ゴリラの野外研究に従事。類人猿の生態や行動をもとに初期人類の生活を復元し人類に特有な社会特徴の由来を探っている。
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【実施要領】
1. 日程:2016年11月29日(火)
時間 |
取材内容 |
6:30 |
東京駅集合 |
6:43~8:58 |
のぞみ201号(東京→京都) |
9:00~9:45 |
宇治川オープンラボに移動 |
10:00~12:00 |
宇治川オープンラボラトリ― |
12:00~12:30 |
昼食 |
12:40~13:20 |
京都市内に移動 |
13:30~14:30 |
文学研究科 千々岩院生、高木院生 |
14:50~15:50 |
情報学研究科 神谷教授 |
16:00~17:00 |
山極総長インタビュー |
18:45~21:03 |
のぞみ138号(京都→東京) |
※上記日程は変更が生じる可能性があります。
2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用: 1人5,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当: 深澤、古田(TEL: 03-3501-5251)
6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)防災研究所の施設体験では、水が飛び散る可能性があります。機材の防水については、各自の責任のもとご用意ください。(長靴、防水のつなぎ、傘はお貸しします)
(3)イヌの調査の視察があるため、アレルギーがある方はご注意ください。
(4)京都大学とFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
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【取材対応者プロフィール】
京都大学副理事・防災研究所長/社会防災研究部門 教授
寶 馨(たから・かおる)
水文学、水資源工学、防災技術政策、特に、洪水災害の予測・軽減、極値事象の頻度解析を専門としている。最近は専門分野の垣根を超え、理工融合・文理融合の教育研究体制を組織して相互に協力しあうことにより、気象変動や温暖化影響などの人類の存在を脅かすグローバルな問題の総合的解決を目指している。
京都大学防災研究所 流域災害研究センター准教授
川池 健司(かわいけ・けんじ)
近年日本で多発している豪雨災害に対して、その被害規模(浸水深、流速、浸水エリアがどの程度まで達するか)を予測するための数値解析法に関する研究、ならびに排水機場、排水路、水門、下水道などの対策による浸水被害軽減効果の評価に関する研究を行っている。
京都大学大学院文学研究科博士後期課程
千々岩 眸 (ちぢいわ・ひとみ)
卒業論文では、ネコの身体幅の認識に関する実験を行った。大学院進学後は、コンパニオンアニマルを代表とする、イヌとネコの社会的知性(主に高次感情)の比較研究を行っている。
京都大学大学院文学研究科博士後期課程
高木 佐保(たかぎ・さほ)
卒業論文ではげっ歯類の一種、デグーを対象とした社会的な記憶に関しての実験を行った。大学院からはデグー・フサオマキザル・ネコを対象に動物の思考についての研究を行っている。
京都大学情報学研究科・教授、ATR脳情報研究所・神経情報学研究室・客員室長
神谷 之康(かみたに・ゆきやす)
1993年東京大学教養学部教養学科卒業、1995年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、2001年カリフォルニア工科大学大学院修了(Ph.D)。2001年ハーバード大学医学部研究員、2003年プリンストン大学客員スタッフを経て、2004年からATR脳情報研究所に勤務。2006年から奈良先端科学技術大学院大学客員教員を兼任。専門は、認知・計算神経科学。現在は、脳計測信号のデコーディング技術の研究に従事。