実施日 : 2016年06月09日 - 10日
案内:長野プレスツアー
投稿日 : 2016年05月19日
世界初の祝日「山の日」と人々を魅了する絶景「上高地」
今年から「山の日」(8月11日)が新たな祝日となる。国土の7割近くを山地が占め、古くから山に畏敬の念を抱き、山の自然と共に生きてきた日本人が「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」とされている。山を対象とした祝日は世界でも例がない。長野県中西部の上高地(松本市)は、「山の日」の記念式典の開催地で、登山者に人気の北アルプスへの玄関口だ。また、英国人宣教師で登山家のウォルター・ウェストンらが1800年代の終わりに日本を訪れ、北アルプスなどに登山、その魅力を著書『日本アルプスの登山と探検』にまとめて発表したことがきっかけとなり、これまで主に信仰の対象や木材を得る場として山とつきあってきた日本人にアルピニズム(スポーツとしての登山)という考え方をもたらしたとされている。加えて、長野県は県土の79%を森林が占め、日本に23座ある標高3,000メートル峰のうち、15座が長野県、そのうち9座が松本市にある。
近年、若い世代を中心に登山ブームが続いており、日本の登山人口は840万人とされる。山への人出が増えるにつれて、環境汚染や遭難事故の増加が課題となる中、上高地の地元住民や松本市、さらに民間企業による様々な取り組みによって、自然を守りながら安全な登山を楽しむための環境づくりが進められている。
世界トップレベルの”長寿県”長野
長野県の平均寿命は男性80.88歳、女性87.18歳(2010年)で、男女共に全国1位。その要因として、長年取り組んできた健康診断の普及や食生活の改善など県民一人ひとりの地道な努力が注目されている。同県は更に、健康で活動的に暮らせる状態での長寿社会「健康長寿社会」の実現を目指している。減塩の、栄養バランスのとれた健康的な食事の条件を設定し、普及させる取り組みのほか、自分の歩き方をチェックし、健康的な歩行法や寝たきりゼロを目指す「歩行健診」システムを開発した企業もある。また、65歳以上の高齢者が従業員の3分の1を占める長寿県を象徴するような郷土料理の製造・販売会社もある。
今年8月に上高地で山の日記念全国大会、9月に軽井沢でG7交通大臣会合の開催を控える長野県。本ツアーは、日本を代表する山岳リゾート「上高地」の魅力と環境保全や安全な登山への取り組み、また健康長寿世界一を目指す長野県の取り組みを取材する。
※本プレスツアーはG7交通大臣会合長野県推進協議会事務局及び第1回「山の日」記念全国大会実行委員会が主催し、フォーリンプレスセンターが企画協力しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
<取材内容>
1. 世界トップレベルの”長寿県”長野(1日目)
(1) 長寿の土台を作った集団健診と予防の意識
佐久総合病院 夏川 周介 名誉院長
長野県で、世界トップレベルの長寿が実現した要因の一つは、地域に密着した医療活動が挙げられる。健康診断などを通して病を予防する重要性を伝え、県民一人ひとりの健康に対する意識が高められた。その中心的役割を担ってきたのが、同県中東部にある佐久市の佐久総合病院だ。戦後まもなく、「予防は治療に勝る」という信念のもと、医師や看護師が農村に直接出向き、出張診療や健康診断を行った。この動きは県全体に拡がり、「自分の健康は自分で守る」という県民の意識改革をもたらし、会社、地域などの単位で健康診断を行う「集団健診」の礎を築いた。同院は、現在も県内各地で1年に約300回の集団健診を実施し、約8万人が受診している。
佐久総合病院の夏川周介名誉院長より、長野県民の長寿の要因や同院が始めた集団健診の歴史と現在の取り組みについて聞く。また、同院佐久医療センターのリハビリセンターを見学する。
(2) 「食改さん」が地域に広げる健康的な食生活~ぴんころ御膳とぴんころ地蔵~
佐久市食生活改善推進協議会 土屋 やよい代表
長野県民の野菜の摂取量は1日あたり平均約370グラム。全国平均を約80グラム上回り、全国1位。一方で、漬物など伝統的食文化の影響などにより、食塩摂取量が多いという課題を長年抱えており、現在も全国ワースト2位だ。長野県民の食生活をより健康的なものへ、と改善に取り組んできたのが「食改さん」として親しまれている食生活改善推進員。食生活改善推進員は県や市町村が開催する研修を修了後、地域の食生活改善推進協議会へ自ら登録し、地域での健康的な食生活の普及活動を行っている。小学校への出張授業、親子や高齢者向け、在宅介護者向けの料理教室の開催などが活動例だ。同会の活動は会費と自治体からの委託費で支えられている。現在、食生活改善推進員は全国に約15万人おり、長野県の食改さんは約3,500人。同じ人口規模(約200万人)の栃木県と比べて2倍の人数が登録している。食改さんは約40年前から減塩に取り組んでおり、漬物に代わる野菜料理の普及や家庭訪問でみそ汁の塩分量を測定検査するなどしてきた結果、塩分の摂取過多等がその主要因とされる脳卒中の死亡率が、全国ワースト1位(1960年代)から男性ワースト13位、女性ワースト7位(2000年)にまで改善された。
佐久市の約160名の食改さんは、月1回地区ごとの会合で、栄養士考案のメニューをレシピ通りに調理し、適切な塩分量の食事を実践的に学ぶとともに、各家庭での再現のしやすさなどを栄養士へフィードバックする。この定例会で学んだ内容を食改さん自身の家庭に持ち帰って家族に料理を振る舞ったり、地域に伝えることで、健康的な食生活が広まっていくのだ。
また、佐久市の食改さんが更なる普及に力を入れているのが、同市で考案され、市内のレストランでメニュー化もしている「ぴんころ御膳」だ。「ぴんころ」とは、健康のまま天寿を全うするという意味の「ピンピン(健康で長生きし)、コロリ(寝込まず楽に大往生する)」に由来する。ぴんころ御膳には3つの条件がある:1食のエネルギーを600キロカロリーから700キロカロリーにすること;1食の塩分を3~4gにすること;地元でとれる食材が使用されていること。また、同市には「ぴんころ地蔵」として知られる長寿地蔵尊もあり、年間10~15万人の観光客が訪れる人気スポットとなっており、「ぴんころ」をキーワードに健康長寿のまちづくりが進められている。
・佐久市市民創錬センターを訪れ、食改さんによる臨時の定例会でぴんころ御膳の調理の様子や毎回調理の前に行っている体操の様子を撮影する。
・観光客にぴんころ地蔵を案内している市川章人(あきと)野沢商店会理事の案内で同尊を撮影する。
(3) 最高齢92歳が活躍する郷土料理「おやき」製造・販売企業
株式会社小川の庄 権田 公隆 代表取締役
長野県は65歳以上の有業率が男性38.5%、女性19.7%で全国1位。男性に至っては、全国平均を10%近く上回る。その多くは農業従事者だが、元気な高齢者の活躍で知られる企業もある。1986年に設立された㈱小川の庄の主力商品は、野沢菜漬や季節の野菜などを小麦粉でできた皮で包み、蒸したり焼いたりした「おやき」と呼ばれる郷土料理だ。社員83人のうち、30人を65歳以上の高齢者が占めるが、定年はなく、希望する限り働き続けられる。県内3店舗の内、小川村の山の中にある「おやき村」は、レストランにおやき作りを行う工房が併設されており、囲炉裏でおやきを焼くのが最高齢の権田近芳(ごんだちかよし)さん(92)。権田さんは「毎日働いていないと体がおかしくなる」と、週6日フルタイムで働いている。同社の権田公隆代表取締役は「高齢化率40%を超える地域ではあるが、自分の足で歩いて通えて働ける場所を維持し、地域に活気を生み出したい。おやきを日本全国にも広めたい」と抱負を語る。
おやき村を訪れ、㈱小川の庄での働き方、ビジネスの現況を聞く。工房やおやき作りを体験したり、食したりできる囲炉裏のあるスペースで撮影、おやきを試食する。最高齢社員の権田近芳さんなど働く高齢者に話を聞く。
(4) 寝たきりゼロを目指す!歩き方を分析して健康長寿に活かす
マイクロストーン株式会社 白鳥 敬日瑚(のりひこ)代表取締役社長
「身体は健康診断を受けるのに、健康維持に不可欠な『歩き方』をチェックする機会はどこにもない。」マイクロストーン㈱の白鳥敬日瑚社長は、これまで自動車や家電のメーカーに、生産ラインや産業ロボットの動作を計測し、異常を未然に防ぐためのセンサーを生産・販売してきた。こうした技術を活かし、歩き方をセンサーで計測、データ化する「THE WALKING®(ザ・ウォーキング)」を昨年開発した。手のひらサイズの計測器がついたベルトを背中と腰に装着し10メートルほど歩くと、体の上下・前後・左右3方向の動きのデータがパソコンに無線で送信され、歩行時の体の使い方を把握できる。今年4月に旧軽井沢にオープンした店舗では、歩行データをもとに、医学や運動生理学の基礎知識を持った健康運動指導士が、より体に負担が少ない歩き方や、歩行時の体の使い方を改善するエクササイズなどを指導している。パソコンの画面では2回分の歩行データを表示できるので、指導前後の歩行の変化もわかる。既に国内では、リハビリ施設がある病院や下着や靴の製造メーカーの研究所などに、計測器とソフトウェアのセット(約50万円)を約30セット販売済み。今後は月約10台の販売を目指し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに全国的に普及させる計画だ。販売を伸ばすだけでなく、結果を分析し、よりよい歩行を指導できる理学療法士や健康運動指導士の育成も来年から始める準備が進んでいる。白鳥社長は、「家庭用血圧計が普及しているように、歩行を計測できる「ザ・ウォーキング」も普及させ、寝たきりゼロや自分の足で一生歩ける人を増やしたい」と意気込む。海外展開も視野に入れており、既に取引が成立しているドバイを皮切りに、インドネシアのバリ、ヨーロッパなどへの進出を狙っている。
マイクロストーン㈱を訪れ、ザ・ウォーキングのしくみや同社の今後の展望などを聞く。その後、実際に歩行の計測を行い、結果を基にした分析・指導・エクササイズをする。再度計測を行い、結果の変化を見る。
2. 世界初の祝日「山の日」と人々を魅了する絶景「上高地」(2日目)
(1) 山の日記念全国大会開催地「上高地」
山の日記念大会推進室 加藤銀次郎室長(松本市観光商工部部長)
上條 敏昭 上高地町会長
山の日記念全国大会が開かれる上高地は、北アルプスに囲まれ、中央に梓川が流れる標高1,500メートルにある盆地状の渓谷。1934年に中部山岳国立公園に指定される前までは、牧場があり、林業も盛んな地域だった。同時期に上高地帝国ホテルが開業し、穂高連峰を臨む美しい景観が人気を呼び、今では国内外から年間120-130万人がハイキングなどに訪れる日本が誇る山岳リゾートだ。観光客の増加に伴って問題になるのが環境汚染だが、上高地は地元住民を中心に、観光と環境の両立にいち早く取り組み、確実な成果を上げた場所でもある。1963年に住民が立ち上げた「上高地を美しくする会」は、清掃登山や歩行喫煙ゼロキャンペーンなどを通して環境保護に取り組み、現在も週1回清掃活動を行っている。また、地元の松本市は、1975年に全国で初めてマイカー規制を開始。年間を通して自家用車は上高地に入ることができなくなったことにより、車と排ガスが溢れていた状況が解消された。更に、定められた日(今年は25日間)は観光バスでさえも上高地に入れない厳しい規制を導入している。このような対策により、上高地のきれいな空気や美しい川の水、動植物は守られ、その豊かな自然が最近ではアジアを中心とした海外の観光客をも惹きつけている。
山の日記念大会推進室加藤銀次郎室長より山の日制定の意義を聞く。その後、認定NPO法人信州まつもと山岳ガイド協会やまたみの石塚聡美理事のガイドで、上高地を約2時間かけて歩き、撮影する。上條敏昭上高地町会長からは、清掃活動やマイカー規制を始めとする環境を守りながら観光客を受け入れるための地元の努力や取り組みについて説明を受ける。
(2) より安全で楽しい登山のための専用コミュニケーションサイト
株式会社ヤマレコ 的場 一峰(まとば かずみね) 代表取締役 (39)
「ヤマレコ」は、当時、大手IT関連の研究所に勤務していた的場一峰社長が余暇に独学でプログラミングを習得し、2005年に立ち上げた登山専用コミュニケーションサイト。地図上に登山経路や道中で撮影した写真などを記録・公開できるほか、登山グッズ、イベントなどの情報も投稿されており、登山に関連する様々な情報が集まるウェブサイトだ。月約150万人以上がアクセスしており、登山記録は週に4千件のペースで増加し、今年5月初旬には77万件に達した。
「ヤマレコ」は、登山を楽しむための情報だけではなく、より安全な登山のためのサービスの提供も始めた。2014年に御嶽山の噴火により多数の犠牲者が出た事故や、同年の全国の山岳遭難が約2,300件と統計開始以来最多を記録したことを受け、長野県で今年7月から施行される登山安全条例では、遭難の恐れがあると指定された登山道を通る場合、行程や緊急連絡先、避難経路などが記載された「登山計画書」(登山届)の提出が義務付けられる。ヤマレコが提供する新サービス「ヤマプラ」は、ウェブ上で登山計画書を簡単に作成し、メールで送信したり、警察署等の届出先に提出したりできるサービスだ。
更に、㈱ヤマレコは登山安全条例の施行に合わせて運用開始を目指す長野県による山岳遭難対策モデル事業にも参画している。山小屋に設置された受信器にICカードをかざすと、自分の現在地を家族に知らせることができるシステムで、事前に作成した登山計画と合わせ、遭難者の捜索時にも役立つ。ヤマレコが既に持つ携帯電話版の同様のサービスを応用させたものだ。
㈱ヤマレコの的場社長から、登山記録の登録等のデモンストレーションを含む登山専用コミュニケーションサイト「ヤマレコ」の説明を受け、同社が取り組む「安全な登山」のためのプロジェクトについて聞く。
<実施要領>
1. 日程: 2016年6月9(木)-10(金)
[1日目]
7:24-8:52 |
北陸新幹線あさま603号にて東京駅→佐久平駅 |
9:15-10:10 |
マイクロストーン㈱ |
10:30-11:25 |
佐久総合病院(佐久医療センター) |
11:45-12:50 |
食生活改善推進員の活動(ぴんころ御膳等) |
13:10-13:35 |
ぴんころ地蔵 |
15:00-16:00 |
㈱小川の庄 |
19:15頃 |
上高地宿舎着 |
[2日目]
8:00-11:50 |
上高地散策(「山の日」、上高地関連のブリーフィング含む) |
11:50-12:35 |
昼食懇談 |
12:35-14:05 |
上高地バスターミナル出発→松本市中心部へ |
14:05-14:45 |
㈱ヤマレコ |
15:47-18:36 |
特急あずさ26号にて松本→新宿へ |
※上記は仮日程です。天候などにより変更が生じる可能性があります。
2. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3. 参加費用:1人12,000円(全行程交通費、宿泊費、昼食代を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4. 募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当:横田(TEL: 03-3501-3405)
6. 備考:
(1) 写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2) G7交通大臣会合長野県推進協議会事務局、松本市、FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。