プレスツアー(報告)

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実施日 : 2012年08月03日

報告:プレスツアー「農業新時代―若い力が創る持続可能な強い農業」(2012年8月3日)

投稿日 : 2013年08月23日

新鮮で安全な農産物の都市住民への供給のみならず、災害に備えたオープンスペースの確保、ヒートアイランド現象の緩和といった機能や効果も備えた都市農業。首都圏という一大消費地のなかで、需要に合わせた生産・販売や付加価値を高めたビジネスを展開する川崎市の都市農業の取り組みに焦点をあてたプレスツアー「農業新時代―若い力が創る持続可能な強い農業」には、中国、台湾、シンガポール、フランス、ドイツ、カナダの10社のメディアから12名の記者が参加しました。

 

img502465356ce1aツアーではまず、明治大学農学部の竹本田持教授から、日本農業の現状と都市農業の可能性についてブリーフィングを受けました。冒頭、竹本教授は、農業従事者は年々減少しているものの、一人あたりの収入は増えていることなどを示し、日本の農業が必ずしも弱くなっているわけではないと指摘しました。特に都市農業については、日本の農地面積460.9万haの僅か4%(19.8万ha)の農地で、販売金額は全体の8%の4,676億円と推計され、少ない土地で高収益を上げていることを紹介しました。また、竹本教授は、おしゃれな農業のイメージを作りつつある若い農家への期待を示すとともに、日本国内の食用農水産物の国内生産額9.4兆円と飲食費の最終消費73.6兆円とを比較し、生産者が付加価値を高めることで収入を増やす可能性などについて、川崎市の実例を踏まえながら説明しました。

 

 

img5024b591e54dd実際に若者が農業に取り組む現場を取材すべく、記者一行は、明治大学が今年4月に新設した黒川農場(川崎市麻生区黒川)へ向かいました。都会型の最先端の農業から有機農業まで学べる農場では、取材当日、約50名の農学部1年生がトマトの収穫や、収穫した野菜を使った調理実習などに取り組んでいました。学生の卒業後の進路に関する記者の質問に対し、玉置雅彦農場長は「農業のイメージが変わりつつあり農学部の人気は高いものの、農学部を卒業してから農業そのものに就く学生が少ない」と述べました。またその背景として、就農した場合と一般企業に就職した場合の収入の差を指摘しました。

 

img5024b5b6d70c5続いて訪問したJAの直売所セレサモス(川崎市麻生区黒川)は、オープンした2008年度は3億7千万円だった売上金額が昨年度は6億円を超えるなど、年々売上金額を伸ばしています。セレサモスで農産物を販売する農家には、1日4回、売上状況のメールが配信されるため、消費者の反応を随時把握することができます。JAセレサ川崎の畑功・都市農業振興課長によると、セレサモス開業から5年目を迎え、川崎市では耕作放棄地の減少や担い手の増加などが顕著にみられるとのこと。セレサモスに農産品を出荷している地元農家の市川完治さんは「息子たちが、継いでみたいと思えるような農業を展開したい」と、都市農業を継続させることへの思いを語りました。

 

img502465a23d970小泉農園(川崎市宮前区)では農産物の生産・販売だけでなく野菜やハーブを使用したお菓子やジャムなどの加工品も製造・販売しており、セレサモスでも売り上げの上位に入っています。ツアーの最後に、住宅地の中で親子三代で都市農業に取り組む小泉農園を取材しました。小泉博司さん(34)は、住宅に囲まれていることで農作業の様子を見られることがかえって信頼につながっているという都市農業の利点について説明しました。また、テレビなどのメディアで脚光を浴びると売り上げが急増することがあるため、レストランが興味を示している目新しい野菜の栽培にも取り組んでいるこのこと。父の富生さん(62)は、先祖代々から受け継いできている農地を今後も守るため、有機肥料を使用する際には放射性物質の検査など安全性の確認ができたものだけを使用すると話しました。祖父で小泉農園代表の正博(87)さんは、若い人たちに囲まれ幸せだと、一家全員で都市農業に取り組む喜びを語りました。

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