報告：東京の中小企業プレスツアー

実施日 : 2019年09月27日

投稿日 : 2019年10月11日

東京2020オリンピック・パラリンピックを来年に控え、東京商工会議所主催「勇気ある経営対象」の各賞を受賞した東京23区内の中小企業を訪問し、創業100年を目指して挑み続けるイノベーションの努力や、高い技術を活かしてグローバル時代を生き抜く戦略など企業の底力を取材しました。本ツアーには、中国、香港、台湾、シンガポール、ベトナム、香港/マカオのメディアから計１１名の記者が参加しました。

※本プレスツアーは、東京商工会議所が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画・運営しました。

※取材先の詳細については、こちらをご覧ください。

【東京商工会議所】（千代田区）

中小企業が果たす役割や創業100年を超える長寿企業の特徴、渋沢栄一初代会頭の基本精神に基づく「勇気ある経営大賞」の紹介とその受賞者で今回訪問する各企業について説明を受けました。同会議所特設のオリンピック・パラリンピック展示ブース「TOKYO2020　PRステーション」を視察し、同会議所関係者へのインタビューを行い、シンガポールのTVは、消費増税直前のタイミングを捉えてその影響等について質問をしていました。

【有限会社原田左官工業所】（文京区）

30代で父の跡を継いだ3代目・原田宗亮社長より、左官の仕事を現代的に変え、若者や女性職人を育成・定着させる取り組み、ベテラン職人の動画を見て若手が真似る「モデリング」研修について聞き、入社して間もない20歳の女性職人による左官のデモンストレーションを視察しました。記者から女性を採用することによるメリットを問われ、原田社長は、昔は男性にしかできない仕事と思われていたが、繊細さを要する仕上げなど女性が優位性を発揮できる作業もあり、男性にも良い波及効果をもたらしていると述べました。また、記者も初めてコテを使い左官の体験をしました。

【株式会社ちんや】（台東区）

浅草にある創業139年の老舗料亭ちんやに向かうバスの中で、6代目の住吉史彦社長は、上野や浅草の街並みの紹介とともに、明治以来のすき焼きの歴史、日本人が得意とする煮る、発酵などの調理法、牛肉の旨味や脂の融点の違いなどについて説明した上で、「家族で繰り返し、世代を繋いでお店に来て頂きたい。そのような思い出をお売りしている」と語りました。店内では、記者らは厳選された牛肉「適サシ肉」や旬な野菜を使ったすき焼きを頂きながら、店員がすき焼きを作る模様や食材をカメラに収めていました。また肉の熟成方法や期間、食肉（牛）の歴史、観光客による来店の割合、消費税率の引き上げに対する準備やその影響など、住吉社長に質問していました。

【株式会社アイオイ・システム】（大田区）

JR大森駅近くにあるアイオイ・システムは、電子機器関連の設計・開発・製造・販売業を手掛けるファブレスメーカー（工場を持たない製造業企業）。物流業界の時代の流れに沿った同社の沿革や、物流センターでの仕分け作業で使われる、世界シェア7割を誇る同社主力製品の「デジタルピッキングシステム（DPS）」などについての説明を受けるとともに、創業者の多田潔社長より、発想転換による物流業界でのビジネス展開、中国等への進出、ペーパレス化に貢献するスマートカードについて聞き、同社内にあるショールームでDPSやその技術を応用したプロジェクションマッピング、センサーを利用したHangar Pickingなどを取材しました。記者はスマートカードの応用範囲の広さに感心し、最新機能がついた様々なシステムのデモンストレーションを熱心に撮影していました。

【西尾硝子鏡工業所】（大田区）

12年後に創業100年を迎える同社3代目の西尾智之社長は、硝子の接着技術で「西尾ブランド」を確立するまでの道のりや、リーマンショック後の新たな需要開拓、鏡で太陽熱発電プロジェクトへの挑戦、「1技術3人体制」などの取り組みなどについて説明し、体験型工場見学では女性の参加者が多く、ものづくりへの関心の高さがうかがわれると話しました。ガラス加工の作業場では「東京マイスター」の称号を持つ67歳の伊藤氏による硝子接着の実演が行われ、記者から職人の減少について問われた伊藤氏は「危機感はある、これから職人になろうという若者には惜しみなく技術を伝承していきたい」と述べました。さらに消費税増税の影響について、西尾社長は「価格が上がっても満足していただけるよう、会社をあげてお客様と向き合っている」と述べました。