実施日 : 2017年03月01日
報告:第2回京都大学プレスツアー
投稿日 : 2017年04月03日
3月1日(水)、第2回京都大学プレスツアーを実施しました。
京都大学は昨年11月末に続いて、今年度2回目のプレスツアー。前回は自然災害の多い日本の強みである「防災」に関する研究を中心に取材しました。今回はiPS細胞(人工多機能性細胞)をはじめとした「生命科学」をテーマに設定し、アメリカ、フランス、ドイツ、デンマーク、中国、香港、台湾、韓国のメディア10社13名が参加しました。
本プレスツアーの案内はこちら
★iPS細胞研究所(CiRA)★
「iPS細胞」といえば、日本で最もよく知られている細胞の一つと言ってもいいかもしれません。そして京都大学には「iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)」という、この一つの細胞を専門に取り扱う研究所があり、日本でiPS細胞が広く知られるきっかけとなった山中伸弥教授が所長を務めています。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、一躍時の人となった研究者です。
今回のプレスツアーでは、まずこのCiRAを訪問しました。広報担当のスタッフからのブリーフィングでは、iPS細胞の発見から10年がたった今、CiRAは2030年に向けて「iPS細胞の医療応用」をミッションに掲げていること、そしてそのミッションを達成するために、再生医療の普及、創薬、新たな生命科学と医療の開拓に加え、日本最高レベルの医療支援体制、研究環境の整備を目指していることなどについて説明がありました。
現在、CiRAではiPS細胞を活用してさまざまな調査研究が行われています。その中から、クヌート准教授から細胞の初期化メカニズムの解明について、櫻井准教授から筋ジストロフィー、金子准教授からは感染症やがんの治療について紹介がありました。
記者たちが熱心に取材していたのは、CIRAの所内をめぐるツアーです。CiRAは欧米式のオープンラボラトリーを採用しており、研究室の間に壁がなく、各フロアが吹き抜けになっている開放感があふれた空間になっています。記者たちはサイエンス・コミュニケーターの案内のもと、クヌート准教授、櫻井准教授の研究スペースをはじめ、所内にある数々の研究用の最新機器を見学。顕微鏡をのぞいてiPS細胞を実際に見ることもでき、記者は皆、真剣なまなざしでのぞき込んでいました。
CiRAの所長である山中伸弥教授へのインタビューも実現しました。
山中教授はかつて整形外科の臨床医でしたが、「研究という面から、患者の役に立ちたい」と一念発起し、世界の医療に革新を巻き起こすiPS細胞の発見に至りました。山中教授によると、「iPS細胞の臨床への活用は、想像以上に早いスピードで進んでいる」とのこと。今まで完治が困難だった病気にも光が見えそうです。アジア地域の記者からは、それぞれの国の研究者について、日本ではどのくらい存在感があるかなどの質問が投げかけられました。
★理学研究科★
続いて、キャンパスを移動して理学研究科の高橋淑子教授の研究室を訪ねました。
高橋教授は30年以上前、日本国内で初めてES細胞を取り扱った研究者。フランスへの留学経験もあり、日本での理系の女性研究者の先駆けとして、研究の第一線で活躍してきました。研究というと、何かと「社会にどう貢献できるのか」ということが問われがちですが、高橋教授は、理学研究科で取り組んでいる「基礎研究」はすべての根幹となる大切なプロセスであると力強いメッセージを発してくださいました。
高橋教授が今取り組んでいるのは、細胞の仕組みを解明する研究です。特徴的なのは、その手法に「ニワトリの卵」が使われていること。孵化する前の卵の殻に穴を空け、その穴から細胞分裂の過程を観察するのです。実験室では、卵の殻にハサミで穴を空け、細胞を見やすくするために黒い墨を落とし、顕微鏡で観察する一連プロセスを取材することができました。顕微鏡をのぞいてみると、確かに小さな穴からも心臓が動く様子を見ることができ、記者たちからは驚きの声が上がっていました。
写真:渋谷敦志
<本プレスツアーでの取材に基づいた記事>(更新中)
新華社通信(中国)
「探访再生医疗最前沿」
客观日本(中国)
「探访京都大学iPS细胞研究所(上)」
「探访京都大学iPS细胞研究所(下)」
Scientific American(米国)
”Waiting to Reprogram Your Cells? Don't Hold Your Breath”
Science(米国)
”Cutting-edge stem cell therapy proves safe, but will it ever be effective?”
朝鮮日報(韓国)
「20년 불황에도 노벨상 17명 배출한 R&D, 첨단산업을 꽃피우다」