実施日 : 2016年07月25日 - 26日
報告:大分県プレスツアー
投稿日 : 2016年08月10日
FPCJでは、今年4月に起きた熊本地震の影響を受け、外国からの観光客が遠のいたままの大分県の現状を取材するとともに、日本最大級の地熱発電所や木材産業の現場、300年受け継がれてきた小鹿田焼の里を巡るプレスツアーを実施しました。大分県主催、FPCJ企画協力による本プレスツアーには、韓国、台湾、中国、シンガポール、ドイツ、デンマークの6か国・地域から10名の記者が参加しました。
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【1日目 日田市】
1. 小鹿田焼の里
記者一行は、まず陶芸資料館で陶工の坂本浩二さんから小鹿田焼の歴史や陶工の仕事内容について説明を受けました。記者からの、「どうしてこの里で小鹿田焼が始まり、300年も続いてきたのか」という質問に対し、坂本さんは「原料となる土が近隣の山から採取でき、今でも残っているため」と回答しました。その後、土を水の動力で砕く唐臼や共同の登り窯を取材し、自然の力と職人の技でつくる小鹿田焼ならでは工程について説明を受けました。20代の若手陶工にもインタビューし、陶工としての生活や跡継ぎになった経緯などを聞きました。
2.ウッドコンビナート(木材産業)
大分県の担当者から、住宅などに使う杉の素材生産量が全国3位、乾しいたけ生産量が全国1位と、同県の林業が全国で有数の規模であると紹介を受けました。そんな同県最大の木材集積地でもある日田市では、木材加工の際に大量に発生するバーク(樹皮)の処理が課題となっているとのこと。日田資源開発協同組合の吉田副理事長から、厄介者のバークを燃料に蒸気を発生させ、木材乾燥に使う取り組みについて説明を受け、ボイラーや木材乾燥機を撮影しました。さらに、木材乾燥を行っている権藤製材所と野上製材所の作業現場を撮影し、それぞれ経営者にインタビューしました。記者からは、「なぜ日本で杉が大量に植えられたのか」、「東京オリンピックで木材の需要はあるか」、「気候変動は近年林業にどのような影響を与えているか」といった質問が相次いで出ました。
3.日田下駄
日田杉を使った伝統的な下駄にポップなデザインや柄を取り入れている若手職人の本野雅幸さんを取材しました。本野さんは、中国から安価な下駄が輸入されるようになり、日田市内に200軒ほどあった工房が10軒まで減っている現状を説明しました。下駄を若者にもはいてもらえるよう、エアブラシやネイルデコを施した絵柄やヒールの形をしたオリジナルの下駄を記者に紹介しました。記者は、伝統的な下駄とオリジナル下駄の販売数の割合、若い客層の増加、下駄の良さについて質問しました。
【2日目 九重町、由布市、大分市】
4.九州電力八丁原地熱発電所
国内最大の地熱発電所である九州電力八丁原地熱発電所では、大分県と九州電力の担当者から県のエネルギー政策と同発電所の概要について説明を受けました。さらに、九電グループが再生可能エネルギーの拡大に向けて取り組んでいる国内外の事業についても説明を受けました。八丁原地熱発電所の川副・副所長は、「地熱発電は設備利用率が80%と高く、安定的に電気を供給できる利点もあるが、国内では国立公園内の開発の規制、温泉文化との共存、コスト高といった課題がある」と説明しました。記者からは、「地熱発電はなぜコスト高になるのか」、「国のエネルギーミックスでは、地熱はベース電源という位置づけになるか」、「地熱発電が原子力発電にとって代わることはできるか」といった質問が挙がりました。川副・副所長は、開発から収益を上げるまで時間とコストがかかること、安定的に発電できるのでベース電源になりえること、原子力にとって代わることは難しいことを説明しました。
5.由布院
由布院の御三家と呼ばれる有名な旅館のひとつ、玉の湯を訪れ、由布院のまちづくりに深く携わってきた溝口薫平さんを取材しました。溝口さんから、41年前に起こった大分県中部地震で客足が遠のいた際、旅館の若手経営者で様々なイベントを立ち上げたことや、自然や景観を大切にしてきた由布院独自の観光地づくりについて聞きました。記者は、4月の熊本地震の影響、魅力的な観光地づくりをする上での課題について質問しました。また、韓国の記者から、「韓国国内で九州の交通機関がまだ危ないとの不安の声があるので、韓国の観光客に対して一言」と頼まれ、由布市観光協会の職員は、由布院を含む大分県内で地震はほとんどなく、交通面も問題ないので観光地にも以前のように安全に訪れることができると語りました。記者一行は昼食後に、由布院の町を撮影しました。
6.大分県庁訪問
最後に、大分県庁を訪問し、広瀬勝貞知事にインタビューしました。広瀬知事は、観光地大分県が自慢できるものとして「豊かな自然」、「長い歴史と文化」、「世界に名だたる製造業」の3つを紹介しました。記者からは、これまでの取材に関連した質問が挙がり、「県が提唱するエコエネルギーだけで、原子力発電を使わずに日本の電力は賄えると思うか」、「なぜ大分県は再生可能エネルギーに力を入れているのか」、「熊本地震からの復興はどのくらい時間がかかるか」、「観光業は県内の他の産業と比べてどれほど重要か」を訊ねました。