実施日 : 2015年11月12日 - 13日
報告:新潟市プレスツアー「日本の農業・食 ~現在と未来~」
投稿日 : 2016年01月27日
新潟市主催、FPCJ企画・運営による新潟市プレスツアーを実施しました。
大規模化・高付加価値化を目指す農家たちの挑戦や、米や日本酒などを海外市場に売り込む地元企業などを取材した本プレスツアーには、米国、フランス、スイス、韓国、台湾、シンガポール、ベトナムの7か国・地域から11名の記者が参加しました。
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<1日目>
1. 新潟市中央区長によるブリーフィング
ツアーのはじめに、記者一行は新潟市街地や日本海を一望できる朱鷺メッセの展望スペースを訪れました。広大な景色を前に、石塚中央区長から港町として栄えた新潟市の歴史や産業、日本酒などの特産品、G7サミット農業大臣会合の開催地に選ばれた経緯について話を聞きました。港の風景の撮影に熱心に取組む記者の姿が見られました。
2. 旧斎藤家別邸
港町として栄えていた新潟の歴史を伝える、約百年前に建てられた旧斎藤家別邸を訪れました。庭が一望できるもてなし用の部屋や、紅葉が盛りを迎えた日本庭園を見学した記者はその風景を熱心にカメラに収めていました。
3. 新潟市アグリパーク
農業を体験し、学ぶ施設として新潟市が運営するアグリパークを訪れ、新潟市の小学校4年生の生徒が牛の搾乳体験をしている様子を撮影しました。撮影後、アグリパークのスタッフや坪川館長、担任の教諭にそれぞれインタビューを行い、教育の一環として搾乳体験を行う目的や施設の役割について質問しました。生徒に搾乳体験の感想を聞く記者の姿も見られました。
4. 園芸農家 有限会社四季園/木質ペレット生産者 株式会社WPPC
園芸農家の四季園を訪れました。四季園では、ビニールハウスを温める燃料として木質ペレットを使用しています。木質ペレットの生産者である株式会社WPPCの佐藤社長は、木質ペレットを燃料として使ったハウスで育った花が売れることによって、森林の整備が進み、地域資源の活用と循環につながると説明しました。そうした観賞用植物の販路開拓にも力を入れる佐藤社長は、苔玉と盆栽を組み合わせた商品の海外輸出にも力を入れています。
その商品の生産を手掛ける四季園の田中社長は、最近海外での日本の花木の人気を実感していると語りました。日本で最初に苔玉を作り始めた新潟の人に弟子入りしたという田中社長は、見事な手さばきの苔玉づくりを記者に披露しました。
5. 亀田製菓 株式会社
柿の種で有名な亀田製菓の取材では、米菓だけではなく、乳酸菌関連食品、メディカル米飯、災害食といった幅広い商品開発を行っていることを知る機会となりました。また、海外事業では近年の日本食ブームや欧米消費者の健康志向の高まりによりビジネスチャンスが期待でき、海外向け米菓の開発や売込みにも力を入れているという話を聞くことができました。記者からは、海外市場への進出や日本の課題である少子高齢化、TPPの影響についてなど多くの質問が挙がりました。
6. 料亭「鍋茶屋」での夕食懇談会/芸妓さんへのインタビュー
1日目の最後に、170年もの歴史を持つ料亭・鍋茶屋で、新潟市長主催による夕食懇談会が行われました。篠田市長は、歓迎のあいさつに加え、自身が新潟日報の記者であったことや、当時の海外取材経験について触れました。また、記者に新潟の印象についてコメントを求める場面もありました。
さらに、一行は新潟の古町が誇る芸妓さんの舞を鑑賞し、インタビューも行いました。船の寄港地として栄え、客の往来が多かった新潟の芸妓は、親しみやすい態度で客をもてなす伝統があり、記者の質問に対しても気さくに答えてくれました。
<2日目>
7.新潟市長会見
篠田市長から、市が「フードバレー構想」や「農業特区」として進めている政策や、G7サミット農相会合の開催について説明を受けました。市長からは、特区の規制緩和として、民間企業の農業への参入や農地を農家レストランとして活用する取組みなどの紹介がありました。記者からのTPPに関する質問に対して市長は、「海外市場にも打って出る」との姿勢を示しました。
8.株式会社 新潟クボタ/株式会社新潟農商
農業機械メーカーの新潟クボタと、同グループ会社で米の流通と販売を手掛ける新潟農商を取材しました。国内の米消費量が落ち込むなか、新潟米の販売先を海外市場へと拡げている戦略について話を聞きました。記者からは、TPPの影響や、今後販路拡大を考えている国、輸出先での売買システムについて問う質問が出ました。
続いて、農業人口が高齢化するなか米作りの手間やコストを省く新たな題解決策として新潟クボタが普及に乗り出している、鉄粉でコーティングした種もみを直接田んぼに蒔く技術について説明を受け、直播のデモンストレーションを見学しました。
9.株式会社 ローソンファーム新潟
特区の規制緩和により、地元農家とコンビニ大手のローソンが手を組んで設立した「ローソンファーム新潟」社長の後藤さんを取材しました。地元の若手米農家である後藤さんは、食の原点である農業の衰退を懸念し、米の販売先としてローソンを確保しつつ、農業の大規模経営を目指していると語りました。20代と若く、全国初の事例となった企業と地元農家による特例農業法人の経営者である後藤さんに対する記者の関心は高く、農家になった経緯やローソンとの提携、農業への思いについて掘り下げた質問が飛び交いました。
10.株式会社 ars-dining
同じく、特区の規制緩和を活用して特例農業生産法人「ars-dining」を立ち上げた桑野さんを取材しました。桑野さんは生産した農作物の付加価値を高めるため、生産から加工、飲食店の経営までを手掛ける農業の6次産業に取組んでいます。記者から日本の農業の将来について思いを聞かれた桑野さんは、「これからは、日本産ならではの付加価値を高めていかないといけない」と語りました。
11. 今代司酒造株式会社
最後に、江戸時代に創業し、現在では海外市場への輸出にも積極的に取組んでいる今代司酒造を訪れました。伝統的な構造の酒蔵を見学しながら、日本酒造りの行程や蔵の歴史、海外市場への展開について説明を受けました。記者からは、酒の国内消費の減少や海外市場での人気の理由について問う質問が投げかけられました。今代司酒造のスタッフは、「海外での人気の背景には日本食ブームがある」と話し、「それぞれの輸出国の食事に合った酒を提案できるだけの技を新潟の酒蔵は持ち合わせている」と新潟の酒造りの底力をアピールしました。