実施日 : 2015年09月15日
報告:「日中関係の現状と展望」高原明生・東京大学大学院法学政治学研究科 教授
投稿日 : 2015年11月11日
安倍総理の9月の訪中が見送られ、日中関係の行方に注目が集まる中、中国政治及び東アジアの国際関係がご専門で、日中の有識者からなる「新日中友好21世紀委員会」の秘書長を2014年12月まで務められた東京大学大学院・法学政治学研究科の高原明生教授に、「日中関係の現状と展望」についてお話頂きました。同ブリーフィングには、中国、ロシア、米国、韓国、台湾、フランス、オーストリアの記者15名を含む、46名が参加しました。
まず高原教授は、2012年の尖閣諸島を巡る日中の衝突以降、東シナ海での海洋進出を図る中国と日本の間の緊張関係が続いていたが、昨年来、安倍総理と習近平主席による首脳会談が2回開催されるなど、日中関係には改善に向けた大きな流れがあるとしました。そしてその背景には、中国による日本への歩み寄りを促すような軍事、経済、内政、国際の四分野の要因があることを説明しました。
しかし、両国関係には未だ若干の不協和音が聞こえてきているとして、中国メディアによる安倍総理への批判が止まらない状況について、今年4月の安倍総理訪米や8月の戦後70年談話の際の報道などを挙げながら紹介したほか、今年6月の王毅外相による対日強硬発言についても指摘しました。
さらに、こうした不協和音が聞かれる一方で日中関係は基本的に改善しているとして、その背景には前述の四要因が不変である点を挙げ、現在両国は首脳会談の機会を引き続き模索しており、10月末には韓国で日中韓三国サミットが開催される見込みであると述べました。
他方で、中国の内政要因がこれからどう働くのか、経済減速が進んだ場合、それが中国の政治・社会の安定性や外交にどれくらい影響を与えるかに注目すべきとの見方を示しました。
また日中関係を見ていると、中国の共産党支配の正当性を支えている「平和発展」と「ナショナリズム」の両立が困難であるという構造的問題が見えてくると指摘しつつ、最後に「習主席の権威と権力は当面盤石だろう。対日関係改善の政策も当面変わらず、日中関係は発展の軌道に乗っていると結論づけることができる」と結びました。
記者からは、天津の化学工場爆発事故や中国経済減速の影響、直後に行われる予定の米中首脳会談の見方、安保法案成立の日中関係への影響等について質問が出ました。
[ブリーファー]
高原明生 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
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