実施日 : 2011年11月17日
報告(プレス・ブリーフィング):熊本県知事から見た日本の政治(2011年11月17日)
投稿日 : 2013年08月21日
熊本県の蒲島郁夫知事をお招きし、「熊本県知事から見た日本の政治」をテーマにお話し頂きました。同知事は、2008年に現職に就かれるまで東京大学で政治学の教授を務められていました。ブリーフィングでは、政治学者と県知事の両職でのご経験を基に、戦後の自民党政治、民主党による政権交代、野田現政権、地方政治など広範な話題に言及されました。
蒲島知事は、戦後の日本で自民党政権が長く続いた理由について、「地方、農村部の『経済的に持たざる層』の支持により支えられ、政治の安定、政策の一貫性が確保されていた。社会経済的な発展の果実が農村部に分配され、都市部と農村部の格差もあまり生じなかったため」と説明。また、1990年代から同政権が揺らぎ始めた原因としては、①農村部の人口減、②経済発展の鈍化、③再配分する富/資源の枯渇の3つを挙げました。
自民党から政権を奪取した民主党政権については、①過大な約束をする、②前政権と異なる政治の方法論をとる、③経験不足の露呈という、「長年政権をとれなかった政党が政権を獲得した時の3つの傾向」が確認できると指摘。知事ご自身が「期待と失望の政治」と呼んでいるという①の傾向が最もよく表れた事例として、鳩山前政権下での普天間基地問題への対応を挙げました。野田現政権に対しては、「政権発足後の6カ月間を目途に、国民の間の合意争点である東日本大震災の復興および復興を通した日本の発展に時間的緊迫性をもってチャレンジすることが求められていると思うが、TPPの問題に忙殺され、国民から見ると復興が迅速に行われていないように感じられるのではないか」と述べました。
知事は、続けて、「こうした状況下で地方政治が注目されている」と指摘。大阪府の橋下前知事による政治手法にも触れながら最近の地方の台頭を説明した上で、熊本県政については、「来年4月に熊本市が九州で3番目の政令指定都市になるので、道州制が導入された際には、同市を九州の州都にしたい」「九州府全体としては、①政策的な革新性、②福祉と成長の両立、③政治的信頼、④世界から愛されるといった特徴を目指したい」と目標を語りました。
最後に蒲島知事は、政治学者から政治家になって感じたこととして、「様々な圧力があっても、政治家にとっては精神の自由を保つことが大切」、「政治は選挙の時から始まっている」、「一人では政治はできない」との3つを挙げました。
→動画報告