プレス・ブリーフィング(報告)

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実施日 : 2011年09月27日

報告(プレス・ブリーフィング):日中関係の課題と展望(2011年9月27日)

投稿日 : 2013年08月22日

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高原明生・東京大学大学院教授をお招きし、「日中関係の課題と展望」のテーマでお話しいただきました。参加者は、外国プレス15名を含む計49名でした。

 

高原教授はまず日中関係を取り巻くここ数年間の環境の変化として、以下のような点を指摘しました。
(1)日本
-民主党政権の誕生とそれに続く政策決定過程の混乱
-東日本大震災の発生
(2)中国
-2008年秋以来の内需拡大策による経済危機克服と、日欧米と対照的な経済成長
-高度成長のひずみの顕在化(住宅価格の上昇、格差の拡大、汚職など)
-民衆の自信と不安・不満の高まり(=ナショナリズムに肥沃な土壌を提供)
-外交政策の転換(中国共産党は2009年7月の在外使節会議で、政治的影響力や経済的競争力の強化を戦略目標に外交の積極化を指示。近隣外交については地政学的戦略拠点構築の充実強化を指示)
(3)東アジア地域
-近隣諸国は中国の急速な台頭により経済面では裨益
-安全保障面での対中警戒心の高まりと、それを受けての対米接近

 

 

高原教授は次に日中関係そのものに焦点をあて、「日中関係についてはその脆弱性に目を奪われがちだが、正しく理解するためには、強靭性と脆弱性の両面をバランスよく認識する必要がある。日中関係の課題は、いかにして強靭性を強化し、脆弱性を弱めるかだ」として、「強靭性」「脆弱性」について具体的に以下の点を指摘しました。
(1)強靭性
-強固な経済的な相互依存関係(今後はエネルギー分野などでの協力に期待)
-非伝統的脅威に対する共同対応(海賊、テロなど)
-極めて強い文化・社会交流(日本人の中国古典好き、中国人の日本ポップカルチャー好きなど)
(2)脆弱性
-根強い相互不信(相手国に対するマイナスイメージ)
-歴史認識問題(但し、温家宝首相が2007年4月の来日時の国会での演説で、国交正常化以来、日本政府が何回も反省と謝罪を表明したことを評価する旨発言していることは、日中の深いレベルでの和解への重要な一歩)。
-安全保障問題(昔は中国側で「日本脅威論」、現在は日本側で「中国脅威論」)
-中国外交の多元化(軍や、国家海洋局海監隊などの複数の海洋の法執行機関が外交に関与するようになっている。外交部門の意思とは無関係に、海洋の法執行機関が挑発的行動をとる可能性あり)

 

以上を受け、高原教授は最後に、「日中両国は戦略的共存を図るほかなく、そのためには日中の指導者は真剣に対話する必要がある。日本の指導者は中国に対し、日本の望みは中国の安定発展であること、調和のとれた世界を中国が目指すにはまず中国自身が調和のとれた社会を実現しなければならないこと、日本はそのための協力を継続していくことを伝えるべきだ」と述べました。

 

 

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