長崎大学核兵器廃絶研究センター:核弾頭データプロジェクト
投稿日 : 2014年03月07日
2012年4月に設立された長崎大学核兵器廃絶研究センター(Research Center for Nuclear Weapons Abolition, Nagasaki University, 略称RECNA)では、センター設立直後から、世界の核兵器の状況を正確に把握するための基礎データとなる、核兵器保有国がそれぞれ保有する核弾頭の数と種類及びその状態を可能な限り正確に推測するという作業を続けてきた。2013年8月にはその成果を「世界の核弾頭一覧」としてRECNAのホームページ上で公開し、以降、状況の進展にあわせた不定期のアップデートを続けている。
核兵器を保有する国々は、いずれも自国が保有する核兵器の正確な数を公表していない。そこで、現実に各国の保有する核兵器の数を推測するという研究は、いくつかの研究機関や専門家により試みられてきた。それらの研究の結果として、すでにかなり信頼性の高い数値がいくつか公表されているが、今回のRECNAのプロジェクトは、それらの研究結果も踏まえたうえで、さらに最近の情報や軍縮交渉の進展等を反映し、より精度の高い数値を追求したものである。また、最近の核弾頭の開発状況と、それを取り巻く情勢を踏まえて、従来頻繁に使用されてきた「戦術核」、「戦略核」という区分を止めて、すぐに使用できるように配備されているのか、あるいはミサイルや潜水艦から取り外されて保管されているのかという、核弾頭の状態や、陸上発射用、航空機用、潜水艦用という使用方法の違いに基づいての分類を行った。これにより、あまり専門知識を持たない一般の市民にも各国の核弾頭が実際にはどのように扱われているかが、より理解しやすい形で提示することが可能になった。これらの具体的な研究方法や参照したデータ、情報源等の詳細については、RECNAのホームページ上に公開されている。(現時点では日本語版のみ)また、RECNAのニューズレターにも掲載されており、そちらもホームページ上から閲覧することが可能である。
このデータベースのもう一つの特徴は、その成果の公表の方法である。より広く一般の市民にも核軍縮に関心を持ってもらうという意図から、各国が保有する核兵器の数と種類、状態が一目でわかるように、一枚のポスターの形に結果がまとめてある。これを見ることにより、世界の核兵器の現状が具体的に把握できる。このポスターは、日本語版だけでなく、英語版、ハングル版も作成されており、いずれもRECNAのホームページから無料で閲覧、ダウンロードが可能である。ポスターなので、多くの人々の目に触れるように、いろいろな場所に掲示することもできる。
さらに、世界の核弾頭の状況を分かりやすくヴィジュアルに表してあることから、平和教育や軍縮教育の教材としても利用価値が高く、長崎市では市内の学校にポスターを配布しただけでなく、教員用の手引きも作成し、積極的に教材として利用してもらえるよう、RECNAでは呼びかけている。
核弾頭データ は、できる限り最新の情報と情勢を反映するために、随時アップデートされ、更新されてゆく予定であり、RECNAでは、世界の核兵器の状況を理解するために、利用者には、定期的にホームページをチェックしてもらえればと言っている。