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「告白」から「日常」へ ―日本のバレンタインの移り変わり―

投稿日 : 2014年02月17日

記事:ヴァスィリエヴ 彩子(インターン)

 

大切な人にチョコレートを贈る、年に一度の特別な日――。2月14日のバレンタインデーは、日本ではそうとらえられている。誰に贈るか、どう楽しむか。そんな習慣がいま、大きく変わってきていると聞き、トレンドを探った。1

 

「自分へのご褒美用も買いに来ました。バレンタインは出店が多くて選ぶのも楽しい」。都内のデパートで開催中のバレンタインフェアに訪れた大学生の中嶋瑞希さん(20)は、色とりどりのショーウィンドウに目を奪われていた。家族や彼氏、アルバイト先の仲間にもプレゼントするという。

(写真)「プランタン銀座」のバレンタインフェア

 

第二次世界大戦後、欧米から日本に入ってきたバレンタインデーのイメージは、もともとのカードや花束などを互いに贈り合うという習慣から大きく異なる形で根付くことになった。1970年代には、主に女性から男性へ、チョコレートを贈る日だとみなされるようになっている。告白は男性から女性へ、というそれまでの伝統を覆す、特別な日となったのだ。

 

(写真)「プランタン銀座」のバレンタインフェア

printemps1しかし、かつての「告白の日」はいま、よりカジュアルに楽しむ日に変わりつつある。「女性から男性へ」という枠を超え、「友チョコ」を友達同士で贈り合ったり、自分自身へのちょっとした「ご褒美」にしたりするといった楽しみ方が今や主流だ。東京都中央区の百貨店「プランタン銀座」が今年のバレンタインデーを前に行ったアンケート調査では、約360人の回答による平均の「自分チョコ」にかける予算が、恋人や思いを寄せる人に贈る「本命チョコ」を10年振りに上回ったという。同社は、アベノミクス効果もあり昨年から高額商品への購入意欲を増している年配の層に比べ、景気上昇を実感しづらかった若い女性たちのマインドが、ここにきて少し上向きになっているとみている。

 

Maison「自分チョコ」を求めるのは、女性ばかりではない。かつては「男性がスイーツを食べるのは恥ずかしい」とまで思われていた日本でも、「甘党男子」という言葉がもてはやされるようになり、スイーツの購入や店舗での飲食を躊躇しない男性が増えている。「バレンタインに向け、男性のお客様がご自分用に2~4個入りの小さめの商品を買っていかれるケースも目立ちます」と都内の高級チョコレートブランドの販売員は語る。

 

(写真)チョコレート専門店「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」青山店の店頭

 

最も贈りたい相手への「本命」チョコレートに加え、学校や職場の知人、友人などにいわば付き合いの一種として贈る「義理チョコ」もまた、日本ではよくみられる風景だ。かつては義務感からチョコレートを配り歩く女性も多かったが、好景気もあり、より積極的に同級生や上司、同僚たちにプレゼントを選ぶ女性も増えているという。

 

「告白」と「義務」というイメージから脱し、信愛や感謝の念を示す、日常の延長線上にあるバレンタインデーを描きつつある女性たち。大学生の恩田恭子さん(20)は、「甘いものをもらうと笑顔が広がる。チョコレートで『いつもありがとう』と感謝の気持ちを伝えたいんです」と14日を心待ちにしていた。

 

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 <日本でバレンタインの習慣が定着するまで>

 

日本での2月14日のイベント化は、第二次世界大戦後、菓子店が日本に住む外国人向けにバレンタインデー用のチョコレートを売り出したことに端を発する。国内のチョコレート業界もこれを利用しようとしたが、その際に「女性から男性に」愛情を示す機会であると誤って伝わった。1970年代には、学生やOLが片思いの相手などにチョコレートとともに気持ちを告白する一大ブームが到来。バレンタインデーの1か月後にあたる3月14日を「ホワイトデー」として、男性から女性にお返しを贈る習慣があるのも日本独特だ。スイーツだけでなく、アクセサリーや花束などを贈ることもあり、バレンタインデーに受け取ったプレゼントより高額になるケースも少なくない。nicola-san

日本では人間国宝に相当するというM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)をもつフランス人ショコラティエのニコラ・クロワゾー氏は、日本の習慣に当初驚いたという。「日本では女性の方が積極的にチョコレートを買って贈っているよう。男性も頑張って」とエールを送っていた。

 

(写真)ニコラ・クロワゾー氏

 

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<編集後記> 

 

ヨーロッパで人生のほとんどを過ごしてきましたが、日本でのバレンタインの祝い方を話には聞いてはいたものの、毎年人々にどれほどの影響を与えているのか想像もつきませんでした。

スーパーやデパートでは、カラフルな品々で熱心な販促を行っており、雑誌はチョコレートを手作りする人へのヒントや、人気のチョコレートブランドのランキングなどの特集でいっぱいです。特に女性にとって、日本ではバレンタインが特別なものだという空気が町中にあふれています。

印象深かったのは、プランタン銀座の広報の方のお話です。日本のOLさんたちは、同僚や上司にどんなチョコレートをあげるか決める特別会議を開いたり、みんなでお昼休みにデパートに出掛け、様々なチョコレートを試食したりどれにするか話し合ったりしていると聞きました。

日本でのバレンタインデーは、単に恋人にチョコレートをあげるだけでなく、周囲の人々との関係性を強める社会的なイベントでもあるのですね。

 

(Copyright 2014 Foreign Press Center/Japan)

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