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三菱総合研究所理事長 小宮山 宏 「世界的課題への対応:『課題先進国』日本の取り組み」 【3】

投稿日 : 2014年11月14日

My Opinion  インタビューシリーズ 1 (第1部 第2部 第3部)

 総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が25%を超え、未曽有の少子高齢化の時代に入った日本。人口減少も進んでおり、地方の疲弊、省エネルギー、年金・医療制度の維持など様々な課題を解決し、いかに持続可能な経済成長を実現するかが問われています。当センターでは、専門家にインタビューを行い、これらの課題の深層に迫る連載を開始します。

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IMG_0062小宮山宏・三菱総合研究所理事長のインタビュー第3部では、政府の「地方創生」への取り組みや、今後いかに課題解決の実績を海外にアピールしていくべきかについて伺いました。

 

 

Q: 日本には長期間、閉塞感が漂っていましたが、安倍首相が2012年12月に就任してから改革の機運が出ているように見受けられますが。

 

A: そうだと思います。「女性の活躍推進」や「地方創生」などは、期待して見つめていますよ。私は、「プラチナ構想ネットワーク」という草の根的な運動を行っていますが、その中で「女性の活躍のワーキンググル―プ」とか「地方での産業の創生」といった活動をやっています。ですから、(安倍首相のイニシアティブに)大いに期待しています。

 

 円安になり、元気の良い企業も出てきましたが、本当の意味での(アベノミクス)第2の矢というのは、日本財政のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の均衡ですし、第3の矢は成長戦略です。その成長戦略の重要な柱が地域創生なのです。私が申し上げてきた課題を解決する中で、地域産業が生まれてくる。それが本当の意味での地域創生です。

 

 しかし、今までも地域再生の施策がありましたが、バラマキに終始しています。過去の施策は税金の浪費に終わっているのです。民主党政権も含め、政治家は地域創生がどういうものかを理解しているのかと問いたい。今まで、政治家は(地域創生)を全く達成できなかったのです。

 

 

Q: 石破茂・地方創生担当大臣も力を入れていますが。

 

A: 期待しています。石破さんは、数少ない優秀な政治家だから。しかし、1人の力では限界があります。何かをやろうとすると、真剣に反対しようとする人が出てきますから。それをどう前に進ませるのか。私は、草の根の活動だと思います。農業分野でもゆっくりですが、草の根の動きが出てきています。農協に頼らない農家も出てきている。これを「一部地域の話題」に終わらせず、全国に広げていく。国も呼応してルールを変えることが必要です。ですから、国民の活動も重要なのです。「安倍首相の地方創生がどうなるかを注視しましょう」ではなく、自分たちも動かなければならない。

 

 

Q: 草の根的な地方の動きには、どんなものがありますか。

 

A: 徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」や、(若者の移住が増えている過疎・高齢化の自治体)島根県隠岐の島・海士町。鹿児島県鹿屋市の柳谷地区は、集落ぐるみで焼酎を作ったり、芸術家などを呼んだりしています。福島県会津若松市はプラチナ構想ネットワークと共に、中学生を対象に「未来人材育成塾」というユニークな研修プログラムを実施しています。そういうところが数十出てきて、みんなが「できる」と思えば、日本は前に進めるのです。

 

 これは、補助金だけではできない。林業はその良い例です。林業は年間2000億円の補助金を受け取っていますが、売り上げは3000億円です。林業が衰退すると、密林が生まれ、土壌が弱ります。その結果、土砂崩れが起こるのです。大規模林業と大規模農業を全国にくまなく行きわたらせれば、それが国土の強靭化につながると思います。

 

大規模化と機械化とITがあれば、大規模林業というのは成り立ちます。対ドルレートが110円以上になれば、国際競争力も出てくる。質も高いので、輸出国にもなれます。中国や韓国では、需要が高いのに木材が不足している。林業や農業の再生なくして、地域創生はありません。

 

 

Q: 日本には素晴らしいものがあるのに、世界にアピールできていないのではないでしょうか。

 

A: 大人が自国に誇りを持っていないからだと思います。自国について知らないのです。私は、「日本は公害を克服して、世界一の環境国家になった」と、世界中あらゆるところで言っていますが、誰も異議を唱えません。日本で聞くのは、「環境先進国ドイツの風車に学べ」とか「環境先進国スウェーデンに学べ」とかです。明治以来「外国に学べ」とばかり日本人は言っているのです。それだと、子供は元気がなくなります。「坂の上の雲」を突き抜けて、自分たちで雲を作らなければ。

 

 

Q: 日本の住宅などはモンスーン地帯に適したものですが、なぜこれらの技術がアジアに伝わっていないのでしょうか。

 

A: 一つには、日本人は自らの技術に確信を持っていないのです。「スウェーデンハウスが素晴らしい」と言っているくらいですから。スウェーデンやドイツの断熱材は(厚さ)20センチもあるので、アジアの家屋に使うと家が狭くなる。この地域では、薄い真空断熱材を使うのがいいのです。大量生産すれば価格は高くない。「アジアのモンスーン地帯に合う理想的な家を造る」と大きく打ち出していけば、技術をアジアに伝えることができるのではないでしょうか。日本はこれだけの課題解決の実績があるのに、なぜ自信を持って前に進めないのか。とても歯がゆく思っています。

 

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