実施日 : 2011年07月27日
報告(プレス・ブリーフィング):大震災後のエネルギー政策(2011年7月27日)
投稿日 : 2013年08月22日
FPCJでは、1966年の設立以来、日本のエネルギー政策や環境政策について分析・提言を行ってきた(財)日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長をお招きし、東日本大震災がもたらしたエネルギーを巡る短期的および中長期的課題についてお話し頂きました。
豊田理事長は、東日本大震災による短期的課題として、①福島第一原発の安定化、②電力不足への対応、③(原子力の代替燃料としての)石油・ガスの需給対策の3つを指摘。原発事故後の日本での電力供給における原子力の割合について、2007年度実績ベースでは、設備容量で25%、発電量ベースで30%と説明した上で、現在停止中及び今後定期検査入りする原子力発電の再稼働がない場合は、十分な電力の供給に困難をもたらすとともに、二酸化炭素(CO2)排出量削減目標の達成に障害が発生し、石油・天然液化ガス(LNG)の需要が増え、燃料費が大幅に増加すると述べました。
また、中長期的課題(エネルギー基本計画見直しへの考慮点)としては、①日本は「エネルギー小国」「EUのような国境を越えた電力供給網なし」であることの認識、②安全保障、温暖化、コスト、活用可能な賦存量/エネルギー密度を含む総合的視点からの検討が肝要、③原子力に代わる完璧なエネルギー源は見当たらず、エネルギー源の多様化と技術開発推進が必要、④より安全な原子力、より安価な再生エネルギー、よりクリーンな化石燃料、より一層の省エネルギーなどを組み合わせていくことが重要、⑤原子力の安全性確保/リスク管理について、国際的協力により、安全基準の国際標準化とベスト・プラクティスの共有が不可欠、との5つのポイントを挙げました。
最後に、豊田理事長は、エネルギー基本計画見直しの一つのイメージとして、「2030年のゼロ・エミッション電源比率70%」の目標は維持すべきとの私見を披露。その上で、再生エネルギーの割合を最大限に引き上げるとともに、家庭・オフィスでの省エネルギーを更に進めることが必要と述べました。また、化石燃料のクリーン化は、CCS (Carbon Capture Storage)にかかるコストから当面難しいであろうとの見方を示し、原子力は目標割合の下方修正が必要だが一定量は必要であり、その為には安全性の確保、信頼の回復により国民の理解を得ることが不可欠だと述べました。