首長による情報発信

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仙台市 奥山恵美子市長 (2015年2月)

投稿日 : 2015年02月12日

仙台市長 015

東日本大震災発災以来、復旧・復興の先頭に立ってこられた仙台市の奥山恵美子市長にその進捗状況や女性が活躍する社会の実現に向けたお話を伺いました。(聞き手:赤阪清隆FPCJ理事長)

 

 

~東日本大震災からの復興や教訓を世界へ発信~

 

 

―東日本大震災から間もなく4年。被災者の生活再建、新たな防災対策、まちづくりの進捗状況を教えてください。

 

これまでの復興事業の中心は公共施設の復旧以外では、安全な住まいの確保を一番の力点においてきました。住まいの再建に関して、仙台市では柱となる事業が3つあります。1つ目は、沿岸地帯の災害危険区域に指定された1540世帯の内陸への防災集団移転です。2つ目は、復興公営住宅の整備です。3200戸の建設を予定しており、今年度中に2000戸が完成予定です。昨年の4月から順次入居が始まっていて、すでに700世帯ほどが引越しています。3つ目は、宅地被害の復旧です。仙台市内では宅地の地割れや擁壁の崩れが5,700カ所発生したほか、団地全体が数十センチ動いたというところも見られます。公共事業と助成金の2つの支援制度によって宅地復旧を支援しています。公共施行分は今年度で終わる予定になっています。

        02巨大な波が防潮林をなぎ倒し、若林区藤田の集落に襲い掛かる     01JR仙台駅前のバス停(3月11日)

        東日本大震災の大津波(2011年3月11日)  都市災害ならではの課題も発生(震災当日の帰宅困難者)

 

 

―復興計画は順調に進んでいますか。

 

宮城県を含めた被災地の多くは復興を10年計画で進めていますが、仙台市は政令指定都市でもあることから、5年を目標としています。例えば南三陸町や女川町のように高台を切り開いたところへ防災集団移転をするのではなく、水平に内陸に移転するので、比較的早く順調に進んでいくと思います。また市独自の住宅再建支援による盛土やかさ上げ、住宅の建て替えに対する補助により現地再建をされる方もいらっしゃいます。さらに、国が造る海岸堤防のほかに県道を6メートルかさ上げして、そこを第2の堤防となるように多重防御の工事をするとともに、万一同じような地震が起こった時に海岸地帯から内陸に逃げていく避難道路を3本新しく作って行く予定です。これら事業は5年の計画期間を超えて平成30年(2018年)ころまでかかると考えています。

 

        営農再開      復興公営住宅

          農業の復興(営農が再開された沿岸部)        被災者の生活再建(復興公営住宅)     

 

―本年3月に国連国際防災会議が開催されます。仙台市からはどのようなメッセージを発信したいとお考えですか。

 

今回の東日本大震災で絆ということが言われました。コミュニティがしっかりと災害に向き合っているか否かによってその後復旧に移れるスピードが異なりました。仙台は国連からコミュニティがしっかりした防災都市づくりをしているという点でロールモデル都市に認定されましたので、その実践力を伝えたいと思っています。震災の後、各避難所の運営マニュアルを地域ごとに作りましたので、地域組織のあり方や仕組みについても発信ができたらいいな、と考えています。また阪神淡路大震災の時にも語られ、今回の震災でさらにクローズアップされたのが、女性や障がいをお持ちの方がプラン作りからしっかり参画していないといけない、という点です。震災が発生してから集まっていただくのではもう遅いわけです。先進国であろうが、途上国であろうが多様なステークホルダーにしっかり計画づくりから参画していただくことが重要ですので、東日本大震災の教訓も踏まえて仙台から発信していきたいと考えています。

 

―ここ数年、中国四川省の地震、ハイチの大震災、ミャンマーの洪水など多くの大災害に見舞われていますが、災害に関する情報が共有されていませんね。

 

仙台市の場合、100万都市が被災しました。住民の方々に対してどのように復興計画づくりに参画していただきながらまちづくりをしていくか、交通機関、通信システムといった都市インフラが停滞した時にどういう混乱がおきるのかとか、といった世界的にも非常に珍しいある種災害のショーウインドウみたいになったところがあります。これらを発信することも都市の安全性を高める意味があると思っています。

 

―住民への啓発活動はいかがでしょうか。ロールモデル都市認定 DSC_0021

 

適切に逃げるというのは非常に大事だと考えています。人がどう動くかによって全く被害の桁が違うので本当に大事なことです。住民に教育をして訓練どおり行動できるようにするのは気の長い話のようでありますが、堤防を作るのに比べればはるかに少ない投資でもできるわけです。財政の厳しい発展途上国であってもある程度可能な防災対策になると思うので、世界の方々にも十分認識していただければ嬉しく思います。

                                                             国連から先進的な防災都市として

                                          「ロール・モデル都市」に認定される(2012年10月)

―震災後外国からの旅行者が一時期落ち込んだと聞きました。

 

震災の前までは年々増えていて、関西と比較するとあまり多くはありませんが、宿泊客数は年間9万人くらいいました。ここのところの円安もあって外国人旅行者の数は東京から西は増えていますが、東北は残念ながら増えていません。外国からの旅行客数は丸4年経って震災前の6割ぐらいのまでしか回復しておらず、まだ震災の風評被害的なものがあるのかもしれません。

 

~女性同士が支え合う社会を~

 

―政令指定都市でははじめての女性市長ですね。日本では女性のエンパワーメントがまだ十分とはいえませんが、今後の女性の活躍の可能性についてどのようにお考えですか。

 

女性の側が女性同士で支え合って世の中に出て行くことが必要だと思います。いろいろな立場にある女性たちがしっかり支え合い、女性の連帯を強くしないといけないと思います。また社会の制度を女性が働きやすいように、今でいえば保育所の増設や介護保険制度の充実であるとか女性の活躍を阻害するような状況に対して困難を取り除くよう整備していく必要があると思います。

 

―「日本は女性が働くにふさわしい空気がない」という国際機関の幹部の発言が報道にありました。日本はまだ女性が十分活躍できる環境になっていないのでしょうか。

 

総合防災訓練社会の雰囲気というのはあるかもしれませんが、私は社会の雰囲気が一番の要因と考えてしまうことには反対です。それでは「雰囲気ですからしょうがないですね」ということになってしまいがちです。女性が活躍するために育児の場を増やすとか、介護制度を充実させていく必要があります。我々が一番動かせるのは法律であり制度ですから、これらを変えていくことで雰囲気も変わるということを信じないと社会を変革する政治家の意味はないと思います。私は変化を信じ、気持ちは後からついてくると思っています。  

  女性の視点を生かした防災訓練 

 

―大学や社会で頑張っている女性を多く見受けるようになりました。

 

男性もがんばっていると思いますが、仙台市の職員採用試験の合格者の6割は女性です。未来の仙台市において女性が管理職になっていかないと仙台市そのものがたちゆかない。これはおそらくどこの組織でもある程度言えることだと思います。組織に女性が1人、2人の時は、その人に何か課題があるのか、それとも女性に課題があるのか見るのが難しく、「女性が」という形で判断されがちですが、20人、30人と増えてくれば「女性が」という言い方はもうできません。女性一般と括られないようになるには層がつくられる必要があるのではないかと思います。私の市長就任の一カ月後に横浜市の林文子市長さんが就任されましたので、幸いなことに政令指定都市で唯一の女性市長という期間は一カ月しかありませんでした。0と1も大きく違いますが、1と2も単数か複数かで大きく違います。

 

~景観と環境を大切にするまち~

 

―仙台市のブランドは。

「杜の都仙台」というフレーズを私たちはよく使い、市民の皆様もとても誇りを持っていらっしゃいます。またまちをきれいに保つことに市民はとても敏感です。仙台にはSENDAI光のページェント、定禅寺ストリートジャズフェスティバル in 仙台、七夕まつりといった野外でのイベントが数多くあります。10万から20万の人出があるとごみが相当出るはずですが、次の朝、まちを歩いてもほとんどゴミは落ちていません。実行委員会が片付けるのもありますが、いらした方々がごみを持ち帰ってくれます。きれいでなければ嫌だし、きれいであるところに暮らしたい、きれいであることに誇りを持っている。そこに市民性が出ていると思います。

 

     仙台青葉まつり           羽生結弦選手優勝パレード

     新緑の季節を彩る「仙台青葉まつり」(5月)           仙台出身のソチ・オリンピック金メダリスト

                                    羽生結弦選手の優勝パレード(2014年4月)

        

    ※写真は仙台市よりご提供いただきました。

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