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トランプ米大統領初来日、日米首脳会談の結果は

投稿日 : 2017年11月20日

日本の主要な全国紙5紙(朝日、産経、日経、毎日、読売)から、同じテーマについて論じた社説を選び、その論調を分かりやすく比較しながら紹介します。

 

朝日新聞:中ロ巻き込む外交を

産経新聞:同盟の絆で国難突破せよ 拉致解決でも協力を進めたい

日本経済新聞(日経):日米主導でアジア安定への道筋を

毎日新聞:北朝鮮めぐる日米首脳会談 試される非核化構想力

読売新聞:強固な同盟を対「北」で示した インド太平洋戦略で連携加速を

 

トランプ米大統領は115日、アジア5カ国訪問の最初の訪問国として来日し、翌6日に安倍晋三首相と日米首脳会談を行った。トランプ政権発足後、通算5回目となる日米首脳会談では、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対する圧力を最大限に高めることや、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向け日米協力強化で一致するなど、揺るぎない日米同盟関係を再確認した。

 

 全国紙は同7日付の社説で論評し、総論的には日米首脳会談が「日米の強固な結束を内外に示した意義は大きい」(読売)など成果を評価した。しかし、北朝鮮に対し「圧力」を強めることについては、支持する見方の読売産経日経3紙と、「圧力は対話のための手段」とする朝日毎日両紙との主張の隔たりが改めて浮き彫りになった。一方、通商政策については、米側が対日貿易赤字の是正を求めたのに対し、日本側が「日米経済対話」での協議にゆだねる姿勢を示したため、各紙は今後の動向を注視するとの論評にとどまった。

 

■ 日米首脳会談の成果を評価

 

 読売は、北朝鮮情勢が緊迫の度合いを増す中、日米両国が「強固な結束を内外に示した意義は大きい」とするとともに、安倍・トランプ両首脳の忌憚のない関係は「日本外交の利益となろう」と論評した。特に、対北朝鮮政策について、トランプ大統領が「戦略的忍耐の時代は終わった」と発言したことを挙げ、「国連安全保障理事会の制裁決議の着実な履行」と北朝鮮の政策転換のための「中国の積極的な関与が欠かせない」と主張した。

 

産経も同様に、両首脳が「日米同盟の揺るぎない絆」を世界に示したとして、「国難を突破する上で、米国が最重要の盟邦であることが印象づけられた」と評した。対応については『対話のための対話』は意味がなく、今は最大限の圧力をかけるときとの認識で一致した点を高く評価し、「外交努力を有効にするには、同盟の抑止力、有事への対処力を高めておかねばならない」と指摘した。

 

日経も、トランプ大統領が共同記者会見で「これほど緊密な首脳同士の関係はこれまでなかった」と力説したことに触れ、米歴代政権の中で〝日米蜜月″を「ここまで評価したことはない」と強調。北朝鮮への対応でも、「対話よりも圧力に軸足を置くことを改めて確認したことは重要」と評価した。その上で、米国に対しては「『アジア関与』を語る程度では十分ではない。西アジアから太平洋地域に及ぶ連携の輪を築き、互いに助け合うことで影響力を強める必要がある」と論じた。

 

 毎日は、「日米両首脳がこれほど緊密に連携した例はかつてない」として、「幅広い課題を率直に議論できる日米関係の現状は評価されよう」と強調した。しかし、北朝鮮への対応では「圧力の先にどんな解決策を描いているのか示されただろうか」と指摘し、「朝鮮半島有事を想定した議論が日米両政府間でされているのなら、どの程度のリスクがあるのか、国民に説明すべきだろう」と注文を付けた。北朝鮮の非核化についても、その道程はあいまいで、「戦略的で長期的なロードマップを構想する必要もあろう」と主張した。

 

 朝日は、日米両首脳が「互いの絆の強さを改めて示した」としながらも、「圧力は対話のための手段」との立場から日米双方に粘り強い外交努力を求めた。その環境づくりのためには、「今回、日米で共有した認識を韓国、中国、ロシア、さらにはアジア各国とどう調整していくかだ」として、とりわけ、中国の協力が不可欠と強調した。

 

■ 注目された「インド太平洋」構想

 

 各紙の論調で注目されたのが、安倍政権が呼びかけてきた「自由で開かれたインド太平洋戦略」で、その構想が日米共通のアジア戦略として確認されたことであった。日、米とオーストラリア、インドの4か国の連携を基軸に太平洋からアフリカまで幅広い範囲で安定と成長を目指すもので、読売は、オバマ前政権からの米国の「アジア重視」路線が継続されたと評価するとともに、「南シナ海の軍事拠点化を図る中国の牽制にもつながろう」と論評した。

 

日経も、インド太平洋戦略について「トランプ氏が多国間の枠組みに理解を示した初めての事例である。このことの意味の大きさをよく認識したい」と指摘し、こうした動向が環太平洋経済連携協定(TPP)への回帰など経済分野に波及することへの期待を表明した。産経は、「日本が推進してきた外交戦略に米国が同調するのは異例な形だ」とした上で、「中国主導の秩序形成を阻む上で有効だ」と主張した。

 

しかし、朝日はインド太平洋戦略について、中国の習近平政権が推進する「シルクロード経済圏構想『一帯一路』に対抗する概念と読み取れないようにする必要がある」とするとともに、「北朝鮮への対応で日米と中国が足並みをそろえるためにも、対中牽制が過度に前面に出ることは望ましくない」と注文を付けた。毎日も同様に、東シナ海や南シナ海での中国の軍事的な海洋進出は看過できないとしながらも、「日本が対中抑止を主導し必要以上に中国を刺激することには慎重であるべきだ」と論じた。

 

大きな進展のなかった通商政策については、日経がトランプ政権はNAFTA再交渉や米韓FTA再交渉準備などで「日米協議を後回しにしている面がある」とした上で、「矛先がいつ日本に向かってもおかしくはない。楽観は禁物である」と強調した。また、TPP交渉については「米国を除く11カ国による発効の道筋を固め、米国が復帰できる環境を整えておく」とともに、「保護主義に傾きがちな米国に、国際協調の重要性を説き続けねばならない」と論じた。朝日は、トランプ大統領が米国からの兵器の追加購入を日本に求めたことについて、「喫緊の安全保障と通商問題を絡めるのは不穏当だ」と断じた。

 

 

写真: 代表取材/ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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