米中首脳会談への評価:進展なき北朝鮮問題を批判
投稿日 : 2017年04月17日
朝日:協調基盤固める努力を
産経:中国に強固な意思示した
日経:米中は北朝鮮問題で踏み込んだ協力を
毎日:国際協調こそ繁栄の鍵だ
読売:対「北」圧力で協調しないのか (50音順)
写真:AP/アフロ
トランプ米大統領と中国の習近平主席との米中首脳会談が4月6、7両日、米国フロリダで行われた。両首脳の初会談では、米中間の貿易不均衡是正のため「100日計画」策定などで合意したが、北朝鮮の核・ミサイル開発問題では「深刻な段階」との共通認識で一致したものの解決の具体策については平行線に終わった。また、会談初日には、トランプ大統領がシリアへのミサイル攻撃に踏み切ったことで、首脳会談は国際的な注目、関心を奪われる形となった。会談後、共同声明発表はなく共同記者会見の開催もなかった。
全国紙は同月9日付の社説で一斉に論評したが、ほぼ全紙が首脳会談の全体的な評価について「期待外れ」の結果に終わったと分析。北朝鮮問題でも、朝日を除く4紙が北朝鮮に対する歯止めは「中国の責任」との観点からの論を展開した。
■ 厳しい全体的評価
朝日は、首脳会談の全体的な評価について、国際社会の安定に重い責任を持つ両大国の初会談にもかかわらず「期待はずれに終わったといっていい」と強調した。
読売も、「成果が上がったとはとても言えまい」と厳しく分析。両首脳の共同記者会見や共同声明発表がなかったことは、米中間の「立場の隔たりの大きさを示すものだろう」と指摘した。
毎日も、米中包括的対話の枠組み合意を評価しながらも、米国のシリア攻撃でメディアの注目度が薄れたことなどを挙げ、「具体的な成果も乏しかった」と強調した。
産経も、両首脳が会談成果を発表する機会がなかったことについて「両国に溝があることは隠せない」と指摘し、「米中関係を円滑に進めていくことをアピールしたかったのではないか」と皮肉交じりに論評した。日経は全体的の評価には言及しなかった。
■ 進展なき北朝鮮問題を批判
全紙が厳しく批判したのは、進展のなかった北朝鮮問題だ。
読売は「非常に深刻な段階」との認識共有はあったが、「『包括的な解決策』に関する議論はなかった」ことを問題視した。その背景に、米国が北朝鮮に対する「独自の計画を立てる用意がある」と中国側に通告したにもかかわらず、中国側が従来の主張を繰り返し平行線に終わったためだと指摘した。その上で、中国に対して「北朝鮮への石油供給などを制限し、核実験や弾道ミサイル発射といった軍事挑発に歯止めをかける必要がある」と注文を付けた。
日経も、「目に見える合意は打ち出せなかった」と強調した。特に、北朝鮮が挑発行為を繰り返すのは「中国が戦略的に北朝鮮側に立つことを見抜いているからでもある」と指摘し、「中国はまず北朝鮮に効果が確認できる手法で圧力をかけるべきだ」と主張した。さらに、日経は南シナ海における中国の海洋進出にも言及し、「(中国が)衝突を避ける枠組みが重要と考えるのなら、まず自ら一方的な行動を慎むのが先だろう」と釘を刺した。
産経は、トランプ大統領がアジア太平洋地域の安全保障に関し「積極的に向き合う姿勢を示した」ことを高く評価した。特に、米国の電撃的なシリア攻撃は、核・ミサイル開発、VXガスによる金正男暗殺事件を起こした北朝鮮に対し、米国が同様の厳しい「姿勢」で臨むというメッセージになったろうと強調した。今回のトランプ大統領の意思表明に対して、中国が「今後どう動くのかを注視すべきである」としている。
毎日も、「中国は北朝鮮に歯止めをかける、実効ある対策を求められることになる」と主張した。また、シリア攻撃についても「北朝鮮にも軍事攻撃があることをにおわせ、中国に圧力を加える狙いがあった」と明言した。さらに、毎日は中国が従来から対米関係指針としてきた“新型大国関係”について、習主席が言及しなかったことに注目。中国側がその理由を大国同士の衝突を回避するためだと説明していることについて、「衝突を望まないのなら、中国自身が力で現状を変更するような南シナ海や東シナ海での動きをやめ、周辺国との対話を優先すべきだろう」と論じた。
朝日も北朝鮮問題で「どう解決に取り組んでいくのかの具体策は示されなかった」と明言した。ただ、シリア攻撃で習主席が米側の説明に「理解を示した」とされることに関連して、「米国の『単独行動』にまで、中国がお墨付きを与えたわけではあるまい」と指摘した。その上で、米国が事実解明や国際社会への説明をせずにシリア攻撃したことについて「より事態を複雑にさせかねない」と批判した。
■貿易不均衡是正
日経は、米国の対中貿易赤字問題について、「貿易不均衡は中国だけの問題ではない。米国が保護主義の動きを強めるのなら日本にも打撃になる」として、その動向を注視しなければならないとした。
毎日は、トランプ大統領が安全保障問題をテコに経済問題で中国に妥協を迫るような言動をしていることを挙げ、「原則のない取引は危険である。まして同盟国との相談なしに安全保障問題で中国と取引することがあってはならない」とけん制した。
読売は、「100日計画」など一連の米中経済合意について、貿易不均衡是正や中国のサイバー攻撃など個別の懸案の早期解決が容易でないことから「先送りせざるを得ない現状の表れだと言えよう」として、評価を留保した。
※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。