トランプ新政権誕生
投稿日 : 2017年01月27日
朝日:内向き超大国を憂う
産経:世界にどう向き合うのか 自由貿易を日本は働きかけよ
日経:「米国第一」を世界へ拡散させるな
毎日:分断を世界に広げるな
読売:価値観と現実を無視した演説 「米国第一」では安定と繁栄失う (50音順)
写真:AP/アフロ
ドナルド・トランプ米大統領の就任式が1月20日、ワシントンで行われ、新政権は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など6分野の基本政策を発表した。全国紙5紙はその大半が拡大版の社説を掲げ、国際協調より国益を優先する新政権への強い懸念を表明するとともに、日米同盟の再強化を訴えた。
■ 全紙が新政権の先行きを不安視
朝日は「自国優先と内向き志向の言葉の数々に、改めて驚きと懸念を禁じ得ない」、読売は「国際秩序と世界経済の先行きの危うさが懸念される船出となった」、毎日は「自由と民主主義を象徴する国の未曽有の混迷。それは取りも直さず国際秩序の混迷である」とそれぞれに新政権の先行きに対する不安を強調した。
日経も「すべての国が国益に固執したら、行きつく先は国際紛争だ」とし、産経も「超大国として世界にどう関わっていくのか。その明確な指針が演説から抜け落ちていたのは、とりわけ残念である」と理念なき国益優先の危うさを論じた。
■ 保護主義への歯止め
各紙が同様に指摘したのが、TPPからの離脱問題。日経は「管理貿易的な手法が横行すれば、貿易の流れが滞り、世界経済の成長を損ねかねない」として、日本は欧州連合(EU)などと協力して米国の保護主義傾斜に「歯止めをかける必要がある」と訴えた。読売もトランプ大統領の国際経済のグローバル化に対する見解は「事実誤認も甚だしい」と指摘したうえで、「『誰かが得をすれば、誰かが損をする』というゼロサムの発想は不毛だ」と厳しく批判した。
産経は、TPP離脱による日本への影響について「日本の成長戦略は根底から崩れる」と明言し、日本は他のTPP参加国と連携し、「時間がかかっても米国の翻意を促すべきだ」と主張した。さらにTPP離脱は、アジアにおける米国のビジネス機会を減じるだけでなく、アジアにおける中国の存在感を一段と高める恐れがあり、そうした状況は「トランプ氏が嫌う事態ではないのか」と再考を求めた。
朝日も、貿易赤字や為替をめぐる不均衡の是正が不可欠としながらも、「その作業は協調を土台とした冷静な交渉を通じて進めるべきだ」と米政権に自重を求め、経済大国である米国が他国を強引にねじ伏せるようなことになれば「その弊害は計り知れない」と懸念を表明した。
■ 「日米同盟」の重要さ強調
外交・安全保障面では、朝日を除く4紙が日米同盟の重要性の再確認と同盟強化の必要性を訴えた。
読売は、トランプ大統領が国際協調よりも「力の支配」や2国間取引を重視する姿勢を強めていることに関連して「米国優先の孤立主義では、国際平和は保てない」と釘を刺し、米新政権に現実に即した戦略の構築を求め、日本政府に対しても「日米同盟強化の重要性を粘り強く説明せねばならない」と繰り返した。
毎日は、トランプ政権が中国の南シナ海における軍事拠点化づくりに警戒感を強めていることを歓迎し、「トランプ政権が中国の動きを警戒し、毅然たる態度を保つのは日本にとっても有益だ」と強調した。一方で、新大統領が「一つの中国」政策の見直しをちらつかせていることについては、「一つ間違えば米中の衝突が生じ、日本を含めた近隣に影響が及ぶ恐れもある」と慎重な対応を求めた。
日経は、米国の内向き志向で、「中国の海洋進出や北朝鮮の核開発などで不安定化しつつあるアジアの安全保障はさらに悪化する」と警戒。安倍晋三首相がオーストラリアなどアジア諸国を歴訪し地域連携の強化を推進していることについて「妥当な判断」と評価し、「安保においても周辺国と連携し、米国をアジアに関与させ続けるよう努めることが重要になる」と論じた。
産経は、トランプ大統領が「アジア太平洋地域にどれだけ重点置くのか」判然としないとして、米国の世界戦略の提示を求めるとともに、ロシアや中国のような国際ルールを無視した「力による現状変更」に、今後どう対処するのか明確な方針の明示を要求した。
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