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英国、欧州連合(EU)離脱派が勝利 | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

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英国、欧州連合(EU)離脱派が勝利

投稿日 : 2016年06月30日

 

Vote leave supporters stand outside Downing Street in London

 

朝日:内向き志向の連鎖を防げ

産経:欧州統合の理念失うな 主要国は協調し混乱抑えよ

日経:世界経済と秩序の混乱拡大を防げ

毎日:混乱と分裂の連鎖防げ

読売:世界を揺るがす残念な選択だ

 

 

写真:ロイター/アフロ

 

 

英国は6月23日に実施した国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱派が勝利した。1993年のEU発足以来、加盟国による初めての離脱選択であり、残留を訴えてきたキャメロン英首相は今年10月までに辞任する意向を表明した。またこの結果を受け、世界の金融・資本市場は大荒れとなり、世界同時株安に発展した。日本の金融市場では、円相場が一時、2年7カ月ぶりに1ドル=99円台と100円を割り込み、株価も過去8番目の大幅な下げを記録した。

 

この衝撃的な「離脱」選択について、全国紙5紙はいずれも拡大版の社説を掲げた。

 

■ 選択はグローバル化への抵抗

 

EU離脱選択の意味について、朝日は「冷戦後加速したグローバル化に対する抵抗の意思表示」とするとともに、「冷戦が終わって以降の世界秩序の中で、最大の地殻変動となりかねない出来事だ」と断じた。さらに、一国中心主義的な考え方が世界的に拡大すれば、地球温暖化やテロ対策など地球規模の問題に対する世界全体の対応力が低下してしまう危険性があるとして、「内向き志向の潮流が、世界を覆う事態を防がねばならない」と論じた。

 

グローバリズムに対する抵抗、反旗という認識は、全紙に共通したもので、毎日も「底流にあるのは、エリート層への不信感や官僚機構の権限拡大に対する嫌悪感、移民に職や社会保障の恩恵を奪われるといった不安である」として、急拡大してきたグローバル化への“抵抗”の表れが、英国民の選択であったとしている。その上で、フランス、オランダに見られる過激なナショナリズムを掲げた極右政党の台頭や、米大統領選挙における共和党のトランプ候補の“外国人排斥”発言の例を挙げ、「ナショナリズムや保護主義という内向きの力に引っ張られ、分断の過去に戻らない」ように、各国指導者の指導力発揮を求めた。

 

日経も、反移民や反EUの感情がEU残留による経済的利益、合理性よりも優先されたと指摘し、「グローバル化の恩恵を受けていないと感じる層が増え、社会全体に鬱積した不満が内向き志向を加速させたといえる」と強調した。

 

一方、読売は、英国民の選択に最も影響を与えたのは「移民制限」の主張だとして、「EU諸国からの移民急増が、英国民の雇用や福祉を脅かしていると強調した。こうした論理が、繁栄に取り残された地方の低所得層や高齢層に浸透したのだろう」と指摘した。そのうえで、「排外主義が潜むポピュリズムの台頭に懸念を強めざるを得ない」と警鐘を鳴らし、今後排他的な動きが欧州各国で強まれば、EUからの「『離脱ドミノ』の悪夢が現実になりかねない」とした。

 

産経も、離脱派勝利の要因として「東欧などからの移民に職を奪われたとする国民の不満を吸収した」ことを挙げ、「統合の進展が民族的な対立を引き起こしたともいえる」と論じた。さらに、EUは1993年以降、東欧諸国も受け入れ28カ国へと急拡大したが、「これらの国々の民主化が進んだことは評価できるが、拡大を急ぎ過ぎなかったか」と疑念を呈し、EUとして今後、統合深化の過程についてしっかり検証する必要があるとした。

 

■ 世界経済の混乱へ国際協調を

 

世界的な金融・資本市場に与えた混乱については、全紙とも、2008年のリーマン・ショックを上回るような世界的な経済混乱を回避するため国際協調・連携による万全の体制をとるよう求めた。

 

産経は、過度の為替変動が収まらない場合には、先進7カ国(G7)主導による緊急対応策の推進が必要だとの認識を示し、「協調介入もためらうべきではない。先進7カ国(G7)の結束が試される」と主張した。同様に、朝日も世界的な同時株安や為替市場の混乱に対する鎮静化策を迅速に講じる一方で、「英国とEUだけでなく、日米なども加わる主要7カ国(G7)が中心となって、市場の不安を抑えるよう緊急の協調体制を築きたい」と提案した。

 

読売は、急激な円高について、「中央銀行が潤沢な資金を供給するなど、世界経済の収縮回避に全力を挙げる」ことを大前提に「日本の円売り介入に否定的な米国の理解を得つつ、市場の安定にあらゆる手段を尽くすべきだ」として、日米間調整を前提とした円売り介入も大事な選択肢とすべきだと強調した。

 

また、1,000社以上の日本企業が英国を拠点としていることに関連して、毎日、日経、読売は、日本企業が「海外戦略」の見直しを迫られるだろうとの見通しを示した。

 

■ ロシア外交の出方を注視

 

安全保障・外交面での影響に言及したのは、産経、読売両紙で、産経は英国がウクライナ介入などのロシアの領土的野心や中東のイスラム過激主義のテロ対応などで極めて大きな役割を果たしてきたことを踏まえ、「欧州の弱体化は、ロシアや中国など軍事力を誇示して国際ルールを無視する勢力と、法の支配という普遍的価値を共有する日米欧とのバランスを崩しかねない」と注意を促した。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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