対北朝鮮制裁
投稿日 : 2016年02月26日
朝日:効果的な措置の選択を
産経:暴走止める日米韓連携を
毎日:中国の決断が遅すぎる
読売:厳格な安保理決議の先駆けに
写真:AP/アフロ
北朝鮮の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、日米韓3カ国が独自の制裁に動きだした。日本政府は、北朝鮮に渡航した核・ミサイル技術者の再入国禁止を含む、人の往来の規制強化や、すべての北朝鮮籍船舶の入港禁止などの措置を取ったほか、韓国政府は南北協力事業「開城工業団地」の操業中断を決めた。一方、米議会は、中国を念頭に、北朝鮮の核・ミサイル開発の資材やぜいたく品の取引にかかわった第三国企業も制裁対象とする法案を可決した。オバマ大統領の署名を経て近く発効する運びだ。
対北朝鮮制裁の動きについて、朝日新聞と読売新聞が2月11日付、産経新聞が2月13日付、毎日新聞が2月14日付の社説でそれぞれ論評している。
■ 日米韓制裁と日本の課題
4紙は、対北朝鮮朝制裁での日米韓協調を支持した上で、それぞれ日本の課題などを指摘している。
読売は、「度重なる北朝鮮の暴挙を看過せず、厳しい制裁措置を迅速に発動することが重要である。国際社会の一致した取り組みを日本が主導したい」と、日本の使命を説いた。
その上で、「北朝鮮との対話の窓口は閉ざさないなど、柔軟な対応が求められる」「政府は、拉致と核・ミサイル問題を包括的に解決する方針を堅持し、粘り強く対処すべきだ」と、日本の取るべき対応について論じている。
産経は、「日米韓3カ国が足並みをそろえ、北朝鮮への圧力を強めているのは極めて妥当だ。これら独自の取り組みが、国連安全保障理事会での厳しい対北制裁決議へつながっていくことを期待したい」とし、安倍晋三首相が、独自制裁の決定後、拉致と核・ミサイル問題を包括的に解決する方針を堅持すると表明したことについては、「当然の判断だ」と支持した。
朝日は、国連安保理が制裁決議案で一致できずにいる状況下で、日米韓が協調する意義を強調した。また、日本の制裁については評価を与えつつ、「多くの在日朝鮮人には北朝鮮に暮らす家族や親族がいる。そうした人びとが苦痛を味わうだけの措置にならないよう」と、慎重な配慮を求めている。
毎日は、北朝鮮が2月12日に発表した拉致問題再調査中止について触れ、「北朝鮮が国際信義に反して核・ミサイル開発に突き進む中、拉致問題だけの進展を期待するのは難しくなった」と述べ、「ここは安全保障問題と併せて辛抱強く解決に向けた道を探る覚悟が必要だろう」と述べている。
■ 中国に方向転換を迫る
毎日は、「北朝鮮の扱いをめぐって日米韓が結束して中国とにらみ合う構図は、決して中国の利益にはならない」と分析した。その上で、国際社会が結束するためには「中国の早急な決断が必要だ。常任理事国としてこれ以上結論を先送りすべきではない」と、中国に対応を求めた。
産経も、安保理の制裁論議が進んでいないのは「北朝鮮との最大の貿易相手の中国が消極的だからだ」と指摘した上で、「日米韓は全力で中国への働きかけを強めてほしい」と、3カ国の役割の重要性を説いている。
朝日は、「金正恩体制を過剰に守れば、中国に対しても、日米韓は一致して厳しい目を向けざるを得ない。そうした外交的なメッセージで北京の行動を促すべきだ」と、日米韓が結束を強めることを促した。
読売も、中国の「長年の融和的な態度が北朝鮮を増長させ、再三の核実験やミサイル発射を許したのではないか。今回こそ、北朝鮮に対する実質的な圧力を強化することが欠かせない」と述べ、「日米韓は結束し、中国に軌道修正を働きかけることが大切だ」と主張した。
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