日韓首脳会談
投稿日 : 2015年11月13日
朝日: 本来の関係を取り戻せ
産経: 原則崩さず懸案にあたれ
日経: 日韓は首脳対話を重ね関係改善急げ
毎日: 前向きの流れ作りたい
読売: 「未来志向」への道のりは遠い
安倍晋三首相は11月2日、ソウルの大統領府で韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と就任後初めて首脳会談を行った。最大の懸案となっている慰安婦問題で「早期の妥結」を目指し、協議を加速することで一致したほか、北朝鮮政策を含む安全保障や経済などの問題も話し合われた。
日韓首脳会談について、全国紙5紙は11月3日付の社説でそれぞれ論評したが、会談の開催自体については、各紙の評価が大きく分かれた。
日本経済新聞は、「会談の開催自体が画期的だったといえるだろう」と評価し、「ようやく実現した首脳会談を弾みにして、両国は関係改善への取り組みを加速すべきだ」と強調した。
毎日新聞は、「これを機に関係改善へ向けた前向きの流れが定着することを期待したい」と述べたが、一方で読売新聞は、「歴史認識や領土問題を巡る対立状況を打開し、『未来志向』の日韓関係を再構築する契機となるのだろうか」と疑念を示した。
産経新聞も、首脳会談が長らく開催されない「異常な状態は脱した」としたが、会談の詳細な内容が公表されていないことに触れ、「関係改善の大きな一歩と位置付けようと、立場の違いを強調するのを避けたということだろう」と分析した。
それに対して、朝日新聞は、「首脳同士が会ったからといって、万事上向くほど現在の両国関係は簡単ではない。一方で日韓ともに『このままではいけない』という意識が強いことも事実だろう」と述べた。
■慰安婦問題で大きく分かれる論調
慰安婦問題の「早期妥結」についても、各紙でその論調が大きく分かれている。
朝日と毎日が元慰安婦に寄り添った形で解決を求めているのに対して、読売と産経は、1965年の日韓請求権協定でこの問題は「完全に解決済み」だという日本政府の立場を支持している。
朝日は、「慰安婦協議は国の威信をぶつけ合うのではなく、被害者らの気持ちをいかに癒やせるのかを最優先に考える必要がある」と指摘しつつ、両政府の取るべき対応について、「双方が一定の妥協をして『第3の道』を探る以外にない」とした。
毎日は、元慰安婦たちが高齢になってきていることから、両政府に早期に妥結点を探るように努力を求めた。「国際社会では1990年代のユーゴ危機を契機に、戦時下の性暴力への関心が高まった。慰安婦問題はその一類型と見られている」とした上で、「安倍首相は国連総会などで、アフリカなどの紛争地を念頭に被害者支援を積極的に行うと表明してきた。慰安婦問題の解決は、こうした取り組みへの評価にもつながる」と論じた。
一方、読売は、「朴氏が真剣に問題を解決したいなら、日本に一方的な譲歩を要求するのでなく、韓国が何をするかを明確にすべきだ。例えば、在ソウル日本大使館近くの慰安婦像の撤去は、その入り口となろう」と強調した。
産経も、「日韓国交正常化50年という節目に、何らかの前進をみたいという姿勢は双方からうかがえる。日本の原則的立場を変えられないのは当然だが、曖昧な決着でまた火種を残すような解決は必要ない」と、指摘した。
日経は、「(政府の)立場は堅持しつつも、人道的な見地から互いに納得できる形で、最終的な決着をめざして妥協策を模索してほしい」と政府に促した。
■韓国の対中政策
読売と毎日は、朴氏の対中政策に言及したが、その評価は分かれた。
読売は「朴氏は、9月の中国の軍事パレードに出席するなど、経済面だけではなく安全保障面でも中国への傾斜を強めている。この動きには、米国も不信感を隠さない」と述べ、「(南シナ海での岩礁埋め立てによる)中国の力による現状変更を許さないためには、日米韓の安保協力の強化が欠かせない。日米両国は、韓国の対中傾斜の是正を粘り強く促すことが大切だ」と強調した。
これに対して毎日は、「考えざるを得ないのは、台頭する中国に向ける視線の違いだ。韓国が中国に接近しすぎだという見方は日本に根強い。ただ、対中認識の違いは長い歴史や地理的関係を考えれば当然である。日韓が協力できない理由にしてはいけない」と指摘している。
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