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日韓関係の法的基盤

投稿日 : 2019年03月26日

■山内昌之 東京大学名誉教授  『Voice』2月号


東京大学の山内昌之・名誉教授は『Voice』の論文「複雑化する中東、情緒に走る韓国」で、日韓両政府が2015年12月に合意した慰安婦問題に関する「和解・癒し財団」を韓国側が一方的に解散したことについて、「韓国は司法の自立性の名分で日本と結んだ国際的な取り決めを破ったのだ。これを国際社会への『挑戦』と評して言い過ぎであろうか」と批判した。山内氏は、文在寅政権下の韓国について「しばしば『ゴールポストを動かす』という言葉が向けられる。しかし、私は、もはやゴールポストを『消している』とすら思う」とし、「日本はこれ以上、何をすればいいのか。韓国はそもそも、大きな勘違いをしている」と述べた。


また、山内氏は北朝鮮の非核化問題についても、「核兵器廃棄やミサイル開発阻止は国際世論の総意である」とした上で、文大統領が目指しているのは一にも二にも朝鮮半島統一という“悲願”であって、「北朝鮮優位の統一であれ、核兵器を所持したままであれその『悲願』は変わらない」と文政権の頑なな姿勢を問題視する。山内氏は朝鮮半島統一への努力は国際社会の取り決めを守り、北朝鮮の大量破壊兵器廃棄など正式の手順を追って動くべきものだとして、「韓国が態度を改めない限り、東アジアの火薬庫が取り除かれる日は一向に近づかない」と主張した。

 

 

■福田博 元最高裁判事  2018年12月19日付『読売新聞』


元最高裁判事の福田博氏は『読売新聞』への寄稿「日韓の法的基盤 骨抜きに」で、徴用工らへの賠償を日本企業に命じた韓国大法院判決について、1965年の日韓請求権・経済協力協定の交渉に携わった立場から、「今回の判決には見過ごすことができない重大な問題がある」と警鐘を鳴らした。


その理由の一つは、日韓請求権協定は請求権に関する問題について「完全かつ最終的に解決」され「いかなる主張もすることはできない」と定めており、福田氏は「協定締結のために積み重ねられた日韓両国の関係者の努力を水泡に帰すものである」と主張した。

 

第二の理由は、同協定が賠償・請求権処理に関して国際的に用いられてきた「一括処理協定」によるものであって、相互に絡み合った請求権の個別処理には立ち入らないことを取り決めている。福田氏は、だからこそ総額5億ドルの経済協力と請求権の問題を一つの協定にパッケージとしてまとめ妥協が図られたと指摘した。それにもかかわらず、協定締結から50年以上も経過して個々の請求権を救済しようということになれば、「日韓請求権協定の根幹、ひいては日韓国交正常化の根幹が完全に骨抜きにされてしまう」と危惧を表明した。


第三の理由は、請求権は双務的なものであり、もし個別の請求権を認めるのならば、韓国が1952年に国際法に違反して一方的に“李承晩ライン”を宣言し65年までに日本漁船300隻を拿捕、3000人以上の漁民を長期に抑留したことの請求を行うようなことになりかねないという懸念からだ。そして福田氏は、韓国大法院の判決について「司法が外交権限を持つ行政府の判断を覆したという意味においても大きな問題をはらむ」とした。国際法では、各国は国内的な理由で国際法上の義務を逃れることはできないというのが大原則だからだと表した。

 

 

写真:YONHAP NEWS/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。


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