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「外国人労働者」受け入れ拡大政策の課題

投稿日 : 2018年12月28日

■坂中英徳 世界12月号 


元東京入局長で移民政策研究所所長の坂中英徳氏は『世界』12 月号のインタビュー日本型移民社会は可能かで、「外国人労働者」受け入れ拡大政策に関連して、人口激減期に派生する諸課題を解決するには「もはや移民政策でしか解決できない」と論じている。一時的に労働者として外国人を迎え入れてもいずれ本国に帰ってしまうし、深刻な労働力不足問題に対して留学生の資格外活動や技能実習制度で対処するのは「百害あって一利なし」と批判。特に、「研修という名の労働」は認めるべきではなく、技能実習制度は一刻も早く廃止すべきと主張する。また、今回の政府の新方針は、熟練した技能を持つと認定された外国人に限り日本での永住や家族の訪問を認める「事実上の移民政策への転換」だとし、このような国の基本方針の歴史的転換を行うには「賛否について国民的議論が行われるべきである」と強調した。

 

その上で、坂中氏は日本が今後50年間で1000万人の移民を受け入れることは「可能」と明言する。総人口に占める永住外国人(移民)の比率を異常に少ない現在の1%前後から10%」に増やすと想定するもので、現在の英独仏の水準よりも低く、現実的方策だとしている。

 

坂中氏は、将来的な“日本型移民社会”について、「日本的な『和』を重視しながら社会的包摂を政策的にしっかりと保障していく社会」と規定し、①移民法の制定②内閣の移民担当相の新設と事務局としての「移民政策庁」設置③国籍法改正による「二重国籍」の容認➃日本で生まれた外国人の出生時の日本国籍取得の検討-などを提言している。

 

 

■田中宏  世界12月号


一橋大学の田中宏名誉教授は『世界』12月号の論文戦後日本の外国人政策を検証し現在を憂うで、戦後日本の外国人政策を振り返りながら、「真正面から外国人労働者を受け入れ、(中略)多民族・多文化共生の社会を築くための政策の方向性は全く示されていない」と強調した。その例として、1990年の改正入管法施行以降に急増した日系人の自動車産業への流入について、「日系人の入国・在留は、日本人との血縁関係に基づくもので、本来の外国人労働者受け入れとは全く無関係」外国人政策の“歪み”を示すものと指摘した。また、1993年に“国際貢献”を目的に導入された外国人「研修生」の制度については、入管法改正ではなく法務省告示だけで「研修」の在留資格で入国・在留している外国人の後「特定活動」に資格変更し、正式に就労を認めるもので、これも“歪み”の一つであると断じている。

 

さらに、田中氏は今回の入管法などの改正法案から“国際貢献”という理由が消え、法改正が人手不足の深刻化という国内問題反映した施策であるとの認識が示されたものの、従来の「技能実習」に「特定技能」を上乗せした形を取っており、「技能実習法はそのままで、それへの“接ぎ木”しての『特定技能』になっている」と批判した。

 

 

■出口治明、毛受敏浩、河合雅司  文藝春秋11月号    


出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)、毛受敏浩(日本国際交流センター執行理事)、河合雅司(ジャーナリスト)3氏は『文藝春秋』11月号での鼎談亡国の移民政策で、2015年に日本に流入した外国人数は39万人で、「一部の人が“隠れ移民大国”と呼ぶほどの状況」(毛受氏)であるとの懸念を示した。在日外国人は約256万人、内訳は①永住者・特別永住者108万人②留学生31万人③技能実習生27万人➃日系人など定住者18万人となっているが、「できれば増えてほしい高度人材はごくわずか」の状況であるとしている。

 

出口氏は、留学生を「労働力」として受け入れるようになった遠因は、2008年の福田内閣における「留学生30万人計画」だとするとともに、その留学生の範囲に「日本語学校学生」も加えたことが劣悪な労働条件、低賃金という「単純労働の隠れ蓑」となったと批判し、「留学生を単純労働力として期待しているような国は、世界中どこを探しても、日本以外にはない」と強調した。また、河合氏は今回の入管法改正で外国人定住者を増加させることになるが、今後の問題として定住者の「参政権」という永年の課題にも取り組んでいかなければないと指摘した。

 

 

写真:AFP/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。    

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