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現代日本の政治構造

投稿日 : 2018年01月31日

小熊英二 「『3:2:5』の構図」 世界1月号

 

慶応義塾大学の小熊英二教授は、『世界』の論文で、2012年以降の国政選挙で自民、公明両党の連立与党が連続勝利を収めてきた政治的な要因は、「右が3割、左が2割、中道5割」という構造と「棄権率の上昇」によるものだと主張している。小熊氏によると、安倍晋三首相周辺から出てきたと言われる「3:2:5」の構図は、2010年以前には顕在化していなかったが、2012年衆院選以降、①「3:2:5」構造が顕在化し、棄権5割が常態化した②保守の総得票は一定数で安定しているが、政権運営に失敗した民主党(現民進党)の支持率急落で、「リベラル層」に流れていた無党派票が減少し、棄権が増加したーと分析する。

 

小熊氏は、選挙のカギを握る第3勢力としての「非自民・非リベラル」政党についても、得票できるのは有権者の約10%、1千万人でしかないとする。2017年総選挙では「希望の党」と「維新の会」両党の合計得票率は13%だったが、小熊氏は仮にこの10%が一つの政党に集まっても、「弱小政党にしか成長しえず、現状を大きく変えることにはつながらない」とする。このため小熊氏は、小池百合子都知事が意図したような「リベラル」層を排除した形で自民党に対抗する「保守2大政党」の実現について「当面は実行不可能だろう」と明言し、政権交代の可能性があるとすれば、2009年の民主党政権誕生のように「『リベラル』2割に無党派票が上積みされる形しかないようだ」と強調した。

 

さらに、小熊氏は2012年総選挙の民主党敗北は、保守連合の得票数が増えたからでなく、「野党が乱立し、新党が現れては消えていく90年代の事態が再現されたためであり、棄権がさらに増加したためだ」として、自公政権の安定は「大量の棄権に支えられたもので、強い信任によるものではない」と指摘した。最近の新党乱立についても、「新党の結成は有権者を混乱させ、投票率が下がって保守連合が有利になるだけ」と批判した。

 

写真:ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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