「非核三原則」に見直しを迫る議論
投稿日 : 2017年11月24日
■石破茂 衆議院議員・元防衛大臣
「『持ち込み』から共同保有まであらゆる議論が必要だ」
中央公論11月号
北朝鮮の核開発、ミサイル発射実験で日本周辺の安全保障環境は厳しさを増しているが、石破茂元防衛相は中央公論の論文で、日本の「非核三原則」(持たず、作らず、持ち込ませず)に関連して、日本の米軍基地への核の「持ち込み」問題から「共同保有」まであらゆる議論が必要だと強調した。
石破氏は、日本が「非核三原則」を国是としながらも、「核については『議論もせず』も加わって、いわば四原則でやってきた」との認識を示すとともに、北朝鮮情勢などに鑑み日米同盟に基づく米国の〝核の傘″が、「十分に日本を守るべく機能するのかを再検討すること」が必要だとする。特に非核三原則の「持ち込ませず」については可能性を広げた検討と議論が必要だとして、「それは日本の米軍基地に核ミサイルを持ち込み、配備することなのか。または共同保有、『ニュークリア・シェアリング』という道筋になるのか。結論まで、緻密な検討が必要になる」と主張した。
また石破氏は、「日本に核兵器を作る能力があるか」について、「爆縮実験できる広大な土地もなく、広島・長崎の被爆経験、福島原発事故の反省がある日本では、兵器級に洗練された核兵器の生産は相当困難」との認識を示した。
■加藤良三 元駐米大使「非核三原則は『持たず、作らず、撃ち込ませず』ではないか」
外交Vol. 45
元駐米大使の加藤良三氏は『外交』の論文で、米国のキッシンジャー、スコウクロフト、ウイリアム・ペリー氏らの名前を挙げ、「アメリカでも日本の核武装の論議が表面化してきている」と指摘しながらも、米国の対応いかんにかかわらず「日本の核武装は時期尚早であろう」と強調した。加藤氏は、日本の核保有について「現実にはため息が出るほど壮大な、かつ、忍耐と決断を要するプロセス」だとするとともに、日米安保体制の根幹を揺るがすプロセスとなりかねないとの懸念を示した。
その上で、加藤氏は非核三原則の「持ち込ませず」について、「被爆国の立場に立つのならば、第三項は『撃ちこまれず』、ないし『撃ちこませず』であるべきではないのか」と主張した。そうした議論ができないようであれば、「日本には自由民主主義の国にふさわしくない”タブー”が存在することになる」と指摘し、軍事的脅威への備えとともに、非核三原則の見直し議論を通じて、周辺国からの「政治的恫喝」への耐性を強化することが、日本の自立のために必要であると論じた。
■【往復書簡】渡部恒雄 笹川平和財団上席研究員 x 櫻田淳 東洋学園大学教授
「『日本核武装論』はいかに議論すべきか」 中央公論11月号
東洋学園大学教授の櫻田淳氏は『中央公論』における笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏との往復書簡で、日本の核武装論議について「『止むに止まれぬ』体裁での核武装の選択は、先々に禍根を残す」としながらも、「北朝鮮に核が存置される間」という期限付きでの「日本暫定核武装論」を考慮する必要があるのではないかと提言した。これは、朝鮮半島の核が除去されれば日本も主要国の魁として核武装を解くという条件付きとすることで「『唯一の被爆国』としての信条と齟齬(そご)を来すものではない」としている。さらに、櫻田氏は非核三原則についても、「その是非や米国との『核シェアリング』の可否が議論されなければならない」と指摘した。
これに対し渡部氏は、「日本暫定核武装論」が観念的な核武装論者でなく核武装否定論者から出てくるのは、北朝鮮と国交や通商関係を維持する国を制裁強化に協力させる圧力形成の一手になると一定の評価をした。他方で、民間の専門家の議論と日本政府の立場は明確に区別すべきとした上で、むしろ日本は北朝鮮の核保有により世界の不拡散体制が崩壊し、ヒロシマ、ナガサキ以来、封印されてきた核兵器使用のハードルが下がることを世界と共有すべきと強調。このため、「唯一の被爆国」として不拡散体制を支えてきた日本が暫定核武装論に拠るようなことになれば、そうしたことを世界と共有しようとしても説得力を損なうリスクがあると指摘した。
中国語:https://fpcj.jp/en/j_views-en/magazine_articles_cn-en/p=59814/
韓国語:https://fpcj.jp/en/j_views-en/magazine_articles_kr-en/p=59836/
写真:AP/アフロ
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