移民問題に日本がとるべき政策とは
投稿日 : 2017年06月27日
移民問題に日本がとるべき政策とは
■元警察庁長官 國松孝次 「スイスの移民政策を参考にせよ」
文藝春秋6月号
元警察庁長官の國松孝次氏は「文藝春秋」の論文で、人口減少社会を乗り切り、日本の現状の国力を保つためには、「好むと好まざるとにかかわらず、移民を受け入れざるを得ない」と主張する。特に、移民が増えれば国内治安が悪化するとの懸念についても、むしろ日本が将来も安心安全な社会であり続けるためには「しっかりとコントロールの利いた『移民』政策をとる必要がある」と強調した。
1999~2002年まで駐スイス大使だった國松氏は、スイスの移民政策に「統合」という理念があると紹介する。移民を「同化」すれば移民の反発を招くし、「多文化並存」を許すと移民だけの居住区ができてしまう。「統合」とは、移民に現地語教育をしっかり行うだけでなく職業訓練、文化教育を行い、ルールをしっかり守れば地域の一員として認めることだという。國松氏は、「日本にはスイスのような明確な理念に基づく受け入れ制度がないため、様々なところに歪みが出ている」と指摘。特に問題なのは、「日本人が外国人を単なる“労働力”としか見ていないこと」とし、今後は移民として実質的に受け入れている居住外国人を「『生活者』として受け入れる認識と覚悟は必要だ」と主張した。
■国士館大学 教授 鈴木江理子 「私たちは移民とどう向き合うか」 世界6月号
国士館大学教授の鈴木江理子氏は「世界」の論文で、日本は少子高齢化の中で持続的な発展のために移民・外国人の力が必要で、現実に在留外国人は238万2822人(2016年末)にも上っているにもかかわらず、政府が移民政策として対応していないため、在留外国人に対する格差拡大や社会的分断が助長されていると指摘する。
「移民」とは、国連では「居住国を1年以上離れ、移動先の新たな国が通常の居住国となった者」と規定されているが、鈴木氏によると「日本はドイツと同様、『移民』の明確な定義を持っていない」。また2000年代半ばから国レベルでの多文化共生政策が始動したものの、「持続的な経済成長を達成するために、成長戦略に資する『外国人材』受け入れ」が推進される中、建設就労者、介護士、家事労働者などの“単純労働者”の受け入れが進んでいるとする。
鈴木氏は、「外国人材の活用は移民政策ではない」との日本のスタンスが「移民を受け入れていないから、移民のための政策は必要ないという立場表明」につながっているとし、その結果、労働市場での日本人と外国人の経済格差の拡大、外国ルーツの子どもたちの就学の遅れなど経済社会問題が拡大していると指摘している。
写真:アフロ
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