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【イタリア】イル・ソーレ・24オーレ紙 ステファノ・カレール 東アジア特派員

投稿日 : 2014年07月01日

DSC_1119 イタリアの経済新聞、イル・ソーレ・24オーレ紙のステファノ・カレール東アジア特派員(53)=東京都。「今後、ますますマルチメディアタスクをこなせることが要求されてくる。これからは、ペン記者としてだけでは、生き残るのは難しいだろう。」と語るステファノ特派員から日本の印象や日々の取材活動について伺った。

 

-日本の印象についてお聞かせください。

はじめて来日したのは、1991年で観光目的。それから日本は、大きく変わった。お台場や表参道など東京の変わりようを見ると、「失われた10年、20年」といわれているのがウソのようだ。

 

-何故、東アジア特派員として日本に赴任したいと考えたのですか。

日本には、現代的なものと古いものが混在する文化的魅力がある。正直に言うと、ロンドンやニューヨークの特派員になることと比較して競争率がそれほど高くなかったという側面もある。もし、ミラン本社に留まるなら、取材分野が金融に限られただろう。特派員であれば、政治、経済、科学技術、文化など一人で広範囲を取材できる。また、日本だけでなく、韓国や東南アジアもカバーしている。これが東京にいる特派員の特権の一つ。

 

-取材をする上で、言語の壁は感じませんか。

もちろん言葉の問題はある。通常、取材は英語で行い、必要に応じ通訳を同行している。ここ数年の間に、日本企業の経営者へも、インタビューは英語でできるようになった。仕事をする上では、中級程度の日本語能力は必要だろう。記事を書く必要に迫られて、安倍総理が執筆した「美しい国へ」は、なんとか日本語で読んだ。日本語の勉強はミランで3年間したほか、石川県金沢市で1ヶ月ホームステイをしながら学んだこともある。忙しいことを言い訳にはできないが、ここ最近は、あまり上達できずにいる。

 

-記者の仕事のどのような所が好きですか。

仕事と余暇に明確な区切りがないこと。例えば、サッカー日本代表の試合を観戦し、ザッケローニ監督へのインタビューを行ったり、世界遺産に登録された富岡製糸場の取材をしたり、人々が、観戦、観光を楽しむ所で仕事ができる。反対に、休暇中に訪ねた土地のことを記事にすることもある。もちろん、世界的なニュースの現場に入ることもそうだろう。非常に厳しかったが、東日本大震災では、発災直後から数週間の間、東北から報じた。

 

-1日の仕事の流れを教えてください。

まず午前中には、オンライン版会員だけが購読できる記事を本社に2本送る。その後、ホームページで無料公開する記事とラジオニュースを送り、昼ごろにかけて、動画ニュースの撮影や編集を行う。夕方は、紙面掲載用の記事を執筆する。

 

-新しく日本で取材活動を始める記者のみなさんにアドバイスをお願いします。

メディアのおかれた環境は変わってきている。新聞購読者数は減少傾向にあり、経済の低迷で、広告収入も減少している。そんな中、海外に特派員をおく予算も限りがある。昨年からは、記事執筆だけでなく、動画ニュースの作成も求められた。いままで経験はなかったが、撮影から編集まで1人で行っている。この1年間だけで150本の動画を作成した。今後、ますますマルチメディアタスクをこなせることが要求されてくる。これからは、ペン記者としてだけでは、生き残るのは難しいだろう。

 

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il sole 24 oreイル・ソーレ・24オーレ紙

1865年創刊で、Confindustria(イタリアの経団連に相当)が所有する日刊経済紙でミラノ証券取引所上場企業。ヨーロッパの経済新聞としては、ファイナンシャル・タイムズ紙に次ぐ発行部数。オンライン版は、ラジオや動画(Stream 24)などのコンテンツが充実。「Pianeta-Giappone」というコーナーでは、ステファノ・カレール東アジア特派員が撮影・編集した動画がアーカイブされている。

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ステファノ・カレール 東アジア特派員

1961年9月生まれ。イタリア・ミラノ出身。ミラノ大学法学部卒。IFGミラノで、ジャーナリズムの修士課程修了。イル・ソーレ・24オーレ紙には1993年に入社。国際商品取引、国際金融の分野を担当後、ニューヨーク、ロンドン、東京(2006~2009年)など海外支局員を経験。2013年4月から現職。

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