実施日 : 2017年03月01日
案内:第2回京都大学プレスツアー ~iPS細胞と生命科学の最先端~
投稿日 : 2017年02月17日
第2回京都大学プレスツアー
~iPS細胞と生命科学の最先端~
「常に物事を疑って、性質を奥まで探求する」「上下関係なく、自由に討論できる場がある」など、山極壽一総長がその特徴について述べている京都大学。今回のプレスツアーでは「生命科学」に焦点を当て、京都大学の“創造性あふれる研究の場”を訪問します。
昨今のさまざまな研究成果から、ヒトの臓器や組織の再生や新しい薬の開発を目指した研究が始まり、これまで有効な治療法のなかった疾患に対しても、完全治癒の実現に向けて期待が高まっています。今回は、生命科学の最先端を走る京都大学の中で、山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)および同学大学院理学研究科をめぐるプレスツアーを実施します。
※本プレスツアーは京都大学が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
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<取材内容>
1.京都大学iPS細胞研究所 (CiRA:サイラ)
「iPS細胞発見から10年、臨床研究のステージへ」
世界の医学界を揺るがす研究結果が日本から発表されたのは10年前―。その内容は、生命科学の現場に革新をもたらしました。ヒトの皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を入れると、心臓や肝臓、神経などさまざまな部位の細胞に変化する可能性を持つ多能性細胞の発見です。その名は「iPS細胞」。名づけ親は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授です。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、山中教授率いる研究チームが2006年にマウスで、2007年にヒトで作製に成功し、再生医療や創薬研究への応用が期待されています。発見から10年たった今、基礎研究はもちろん、臨床研究のステージへの移行も始まっています。
今回の取材現場のひとつは、そんな世界最先端の研究の舞台である京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)。2008年に物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の中にiPS細胞研究センターとして設立され、2010年に改組されて研究所となり、山中教授が所長を務めている研究施設です。日本発の技術であるiPS細胞の基礎から応用を目指した研究推進に向けて、中長期的な戦略に基づき、5つの部門に分かれて研究を進めています。
本ツアーでは、まずiPS細胞の基本とCiRAで行われている最先端の研究内容をウォルツェン・クヌート准教授、櫻井英俊准教授、金子新准教授がご紹介します。
ウォルツェン准教授は、「未来生命科学開拓部門」に所属し、iPS細胞を用いた細胞の初期化メカニズムの解明や、ゲノム編集技術を利用し遺伝子をノックアウトしたiPS細胞の作製に向けた研究を行っています。このような研究は、さまざまな疾患が起こる仕組みの理解を深め、個別化医療につながる可能性があります。
櫻井准教授は「臨床応用研究部門」に所属し、iPS細胞を用いた筋ジストロフィーの治療を目指して研究を進めています。委縮してしまった筋肉へiPS細胞から分化させた筋肉の元となる細胞を移植する手法の開発と、薬剤開発のため筋ジストロフィーの患者さんの細胞からの病態再現が現在のテーマ。iPS細胞を筋肉へ効率的に分化させる手法などに取り組んでいます。
金子准教授は「増殖分化機構研究部門」に所属し、iPS細胞から免疫細胞を再生し、ウイルス感染症やがんを治療するための研究を行っています。免疫反応を調整する細胞をiPS細胞から分化させる手法の樹立を進めているほか、高品質なiPS細胞を安定して供給するためのシステム構築も行っています。
また、CiRAのサイエンスコミュニケーターの案内のもと所内の取材ツアーも実施。CiRAは欧米によくみられる「オープンラボ」の構造をとっており、研究室間の敷居がなく、吹き抜けの“オープン”な環境で研究が進められています。話題のiPS細胞を顕微鏡で観察できます!
2.山中伸弥(やまなか・しんや)教授/CiRA所長 インタビュー
CiRAの所長である山中教授は、ノーベル賞受賞者であることはもちろん、フルマラソンにチャリティーランナーとして参加し、クラウドファンディングで寄付を募集するなど、iPS細胞の研究普及に尽力されていることでも知られています。文字通り、iPS細胞の代名詞でもある山中教授に、ご自身の研究内容やiPS細胞の可能性などについてお伺いします。
<PROFILE>
1962年大阪府出身。医学者。京都大学iPS細胞研究所所長・教授。iPS細胞の発見により2012年ノーベル生理学・医学賞、文化勲章を受賞。2010年からiPS細胞研究所の所長として、iPS細胞研究を牽引するとともに、マラソンを通じた寄付募集を行うなど、研究への寄付文化を広めることにも取り組んでいる。
3.理学研究科 高橋淑子(たかはし・よしこ)教授
「ニワトリの卵から動物発生学を解明」
今から何十年も前から、iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)など、日本の再生医療研究の礎を築いてきたのが、発生生物学の第一人者、京都大学の岡田節人(ときんど)名誉教授(2017年1月17日に逝去、享年89歳)。その岡田教授の愛弟子であり、現在、京都大学理学研究科で研究に取り組んでいるのが、高橋淑子教授です。
iPS細胞の発見前から、同じく万能細胞として注目されていたES細胞。高橋教授は今から30年以上前、日本国内で初めてそのES細胞を扱った研究者として知られています。当時は日本にまだES細胞はなく、京都大学の研究者の一人がイギリスの大学から持ち帰ってきたとか。周りに取り扱い方を知っている人もいなかったため、高橋教授は研究室に張り付いて培養に取り組み、同分野の数少ない女性研究者としてES細胞を用いた研究普及に貢献しました。
現在、高橋教授が主に取り組んでいるテーマは、動物の発生のしくみ。その研究に欠かせない“主役”が「ニワトリの卵」です。ニワトリは、殻の中で変化する「胚」の様子を、殻に丸い穴をあけることで、受精卵の段階から見ることができます。高橋教授らは、その穴から針を入れてたり、墨で染めたりすることで、細胞がどのように変化しているかを細かく観察しています。
観察後は、穴の部分にセロテープを貼っておけば、なんの問題もなく元気なヒヨコが生まれます。つまり、動物が“生きたまま”進めることができる研究で、これはマウスではできなかったことです。
もちろん、ニワトリとヒトは姿形が大きく異なりますが、発生の初期においては、かなり似たプロセスで細胞が分裂していきます。高橋教授は「ニワトリの卵」というオリジナリテイーあふれる研究を通じて、ヒトのからだの成り立ちを知るとともに、将来的にはがんの転移の仕組みを解明し、治療に役立てる可能性も探っています。
当日は、高橋教授から研究の内容を詳しく解説していただくとともに、研究室の学生とともにニワトリの卵を取り扱う様子も取材します。
<PROFILE>
広島大学理学部卒業、京都大学理学研究科博士課程修了(理学博士)。同年、フランス発生生物学研究所ポスドク。米オレゴン大学、コロンビア大学のポスドク、理化学研究所CDBチームリーダーや奈良先端科学技術大学院大学教授を経て、2012年より京都大学大学院理学研究科教授。2010年、自然科学分野の第一線で活躍する女性科学者に贈られる「猿橋賞」を受賞。2016年、アン・マクラーレン賞を受賞(国際細胞分化学会)。個体発生における器官形成のしくみを、分子・細胞生物学的に解析している。
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<実施要領>
1. 日程:2017年3月1日(水)
時間 |
取材内容 |
7:00 |
東京駅集合 |
7:10-09:25 |
のぞみ9号(東京→京都) |
移動(電車) |
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10:30-13:30 |
京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ) |
昼食 |
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14:15-14:30 |
山中伸弥教授インタビュー |
移動(タクシー) |
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15:15-16:45 |
理学研究科 高橋 淑子教授研究室 |
移動(バス) |
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18:26-20:43 |
のぞみ250号(京都→東京) |
※上記日程、登壇者には変更が生じる可能性があります。
2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用: 1人5,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当: 深澤、古田(TEL: 03-3501-5251)
6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)京都大学とFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
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<CiRA登壇予定者プロフィール>
ウォルツェン・クヌート 准教授(未来生命科学開拓部門)
1998年アルバータ大学分子遺伝学部卒業。2006年カルガリー大学医学部 生物化学・分子生物学科博士課程修了。サミュエル・ルネンフェンド研究所博士研究員、オンタリオ ヒトiPS細胞研究所小児病院 研究所マネージャーを経て、2013年より京都大学iPS細胞研究所准教授。iPS細胞を誘導する手法の改良や新規の遺伝子導入法の開発に取り組んでいる。
櫻井 英俊 准教授(臨床応用研究部門)
1998年名古屋大学医学部卒業。05年名古屋大学大学院医学系研究科博士課程修了。名古屋大学分子細胞免疫学講座研究員、京都大学iPS細胞研究センター特定研究員を経て、2015年よりCiRA准教授。筋ジストロフィーなどの筋疾患の治療法開発を行っている。
金子 新 准教授(増幅分化機構研究部門)
1995年筑波大学医学部卒業。2002年筑波大学大学院医学延久科博士課程修了。サンラファエレ科学研究所(ミラノ)客員研究員、東京大学医科学研究所助教を経て、2012年よりCiRA准教授。2013年よりCiRA附属細胞調製施設(Facility for iPSC Therapy)施設長を兼任。iPS細胞から再生した免疫細胞を用いた感染症やがんの治療法開発を研究している。
*本ページに掲載されている京都大学iPS細胞研究所関係の写真の著作権は、同研究所に帰属します。