プレスツアー(案内)

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実施日 : 2023年04月10日 - 11日

長崎プレスツアー

投稿日 : 2023年03月17日

【取材テーマ】

感染症研究、被ばく医療、離島・へき地医療

-世界の保健医療課題に最前線で挑む、日本における西洋医学伝来の地・長崎-



 SARSや新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、気候危機や自然災害、核戦争などとともに、感染症の流行が人類にとって今後大きな脅威であることを見せつけた。

 

 貿易が閉ざされた江戸時代の日本において、約200年間にわたり、日本で唯一「外国に開かれた町」だった長崎。海外から持ち込まれる感染症の日本への入り口であると同時に、日本における西洋医学伝来の地でもあることから、古くから日本における感染症研究の最前線に立ってきた。その歴史を受け継ぐ長崎大学は、感染症研究の分野で世界的にも知られ、新型コロナウイルスの次の感染症危機に備えた新たな取組も始まっている。また、長崎は広島とともに原子爆弾の惨禍を経験した被爆地である。世界で唯一、被爆を経験した医科大学である長崎大学は、被爆者の治療や、放射線の人体への影響などを中心に研究を展開してきたが、1986年に起きた旧ソ連(現ウクライナ)のチョルノービリ原子力発電所事故の際に、被ばく者の治療や現地人材の育成に従事。さらに、2011年の福島第一原子力発電所事故後は、これまで蓄積してきた被ばく医療の実績を活かし、住民への医療支援や復興に尽力している。

 

 今年5月に長崎県で開催されるG7保健大臣会合では、すべての人が適切な保健・医療サービスを支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」などが議題になる予定だ。大部分を海に囲まれ、日本で一番島が多い長崎県では、人口減少と高齢化によって離島の医師不足が深刻な課題となるなか、五島列島で、DXによる遠隔医療の導入が本格的に始まっている。遠隔診療や無人ドローンによる医薬品の配送など、五島で行われている離島・へき地医療の取組は、日本全国で医療過疎地が生まれているなかで、日本の近未来の医療を先取りするものとして注目を集めている。

 

本ツアーでは、長崎県を訪れて、感染症研究や被ばく医療、離島・へき地医療という、世界が直面する医療課題と常に最前線で戦ってきた取組を取材する。

 

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取材内容


1.感染症研究の最前線の地、長崎 


 17世紀前半、江戸幕府はキリスト教を禁止し、外国との貿易を統制するために鎖国政策を行っていた。日本が開国するまでの間、日本で唯一ヨーロッパに開かれた窓口であったのが、長崎県にあった出島である。外国と交流するなかで、それまで日本にはなかったコレラや天然痘などの感染症が出島に入り、日本中に広がることとなったが、同時に、西洋の進んだ学問や技術、西洋医学が出島を通してもたらされ、感染症の治療についても研究が進んだ。

 

 

 

 

 西洋医学教育の拠点として、日本で最初に開かれた「医学伝習所」

が源流となって誕生したのが、今の長崎大学だ。島の多い長崎県の特性から、離島を中心に流行した地域の感染症(風土病)の克服が最重要課題だったこともあり、長崎大学では戦前の長崎医科大学の時代から感染症の研究が本格的に行われた。1967年に風土病研究所が改組されて誕生した熱帯医学研究所は、寄生虫病、マラリアなどの感染症が猛威を振るっていたアジアやアフリカの途上国に研究活動を拡大し、特色ある熱帯医学研究を展開、医療支援や、教育などの面から国際協力も行ってきた。同研究所は熱帯医学研究を目的とする国内唯一の公的機関であり、新型コロナウイルス感染症の流行に対しても、国内メディアでの発信、診断法の確立支援、研究、国際的な支援など、感染症の制圧にむけて最前線で取り組んだ。

 

 2022年4月には、新型コロナに続く感染症の発生に備えて、エボラウイルスなど致死率の高い重篤な感染症の病原体を扱える設備(BSL4=バイオセーフティーレベル4施設)を持つ高度感染症研究センターが発足。今後、世界各国との連携や、ワクチン、治療薬開発などの進展も期待されている。


本ツアーでは、復元整備事業が行われている「出島(国指定史跡 出島和蘭商館跡)」を訪れ、西洋医学をはじめとするさまざまな文化が日本に入ってくる窓口となった場所、出島について説明を受ける。その後長崎大学熱帯医学研究所の金子修(かねこ・おさむ)所長から説明を受ける。加えて、長崎大学高度感染症研究センターの栁雄介(やなぎ・ゆうすけ)センター長からBSL-4施設について説明を受け、外観を視察する。


※BSL-4施設の中には入ることはできません。


          

 

【文章内上:復元された出島場内(出島復元整備室蔵)】

【画像提供:文章内下:長崎大学熱帯医学研究所】

 



 

2.被ばく医療分野の国際貢献

 

 1945年8月、広島に次いで長崎に原子爆弾が落とされ、約7万人超が命を落とした。また、放射線被ばくによって多くの人が白血病やがんといった後障害(放射線被ばくから数年から数十年後に発症する疾患)に苦しんできた。そのような被爆者の治療や、放射線の人体への影響に関する研究をするために設置されたのが、長崎大学原爆後障害医療研究所(原研)である。原研では被爆者の治療だけでなく、健康状態や手術記録などのデータ収集、臓器の保存等も行ってきた。

 

 チョルノービリ原発事故が起こった際、原研は大学病院と連携して現地へ医師や専門家を派遣して医療支援や健康影響調査を行ったり、現地人材育成のために研修生を受け入れたりした。また、東日本大震災が起こり、福島第一原発事故が起こった時はその経験を活かし、現地の病院に対する被ばく医療の支援や、福島県民に正しい知識や情報を伝えるリスクコミュニケーション、福島県民健康調査の立ち上げなどの迅速な支援を行った。高村昇教授は、チョルノービリの現地にも何度も行った経験があり、福島の事故直後から福島県放射線健康リスク管理アドバイザーも務めた。現在高村教授は、東京電力福島第一原子力発電所が立地する福島県双葉町に2020年に開館した東日本大震災・原子力災害伝承館の館長でもある。

 

本ツアーでは、長崎原爆資料館を館長の案内で視察した後、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館で高村昇(たかむら・のぼる)教授から、放射線が健康に与える影響、チョルノービリや福島県での調査について説明を受ける。

 

                      

【写真提供:左:(一社)長崎県観光連盟】

 

 

3.出島メッセ長崎(G7長崎保健大臣会合の会場)


 2023年5月13~14日に「G7保健大臣会合」が、感染症研究や被ばく医療において世界に貢献してきた長崎で開催される。今回の会合では、感染症の拡大といった公衆衛生上の緊急事態に対応するための国際的な枠組みの強化などについて、議論されると見込まれている。

 その会場となるのは、202111月に開業した「出島メッセ長崎」である。ここは、長崎の新しい交流拠点、海の向こうに広がる世界と長崎・日本をつなぐ「新しいDEJIMA」として、会議や展示会、イベントなどの会場利用ができるMICE施設だ。

 感染症対策やSDGsに対する取り組みがなされているなど、最新鋭の設備で安全安心な利用が可能である。また、建物内には「長崎らしさ」の細工がちりばめられており、機能性だけではなく、視認的にも楽しめる工夫が凝らされている。


本ツアーでは、鹿尾正博(しかお・まさひろ)館長の案内で施設内を見学する。


【画像提供:出島メッセ長崎 (🄫Toshihisa Ishii)】



4.離島の暮らしを支える離島医療や企業


 五島列島は、九州の西部に位置していて、大小約150の島々で構成されている。主な5島は、福江島(ふくえじま)、久賀島(ひさかじま)、奈留島(なるしま)、若松島(わかまつじま)、中通島(なかどおりじま)。その五島列島で、いま全国の若者世代やファミリーの人気の移住先となっているのが、列島の南側を占める五島市だ。日本中の多くの市町村が過疎に悩むなか、五島市は、この5年間で1,000人を超える移住者を受け入れてきた。市では、「五島スマートアイランド構想」を策定し、離島地域特有の課題を民間企業等が持つ新技術を使って解決しようとする取組も実施。そのなかで、ドローンを作った新たな物流網構築も行われているほか、地域資源を活用した洋上風力発電等によるエネルギーの地産地消も目指している。

 

   

【画像提供:五島市】

   

【画像提供:Zipline International Inc.】


※画像はイメージです。

 

 

(1)長崎大学離島医療研究所


 五島列島は、海によって他地域と隔てられている特性から、医療や介護資源の不足、高齢化といった問題に直面している。長崎大学では、①離島・へき地医療支援、②地域医療研究、③地域医療を担う人材育成を目的に、2004年、長崎県と五島市による寄付講座として「離島・へき地医療学講座」が開講した。本講座は、五島市の中核病院である五島中央病院内に「離島医療研究所」という活動拠点を有し、2名の教員が常駐している。

 

本ツアーでは、離島医療研究所の前田隆浩(まえだ・たかひろ)教授と野中文陽(のなか・ふみあき)助教から離島医療について説明を受ける。
※離島医療研究所には訪問せず、五島市役所の会議室で説明を受けます。



(2)モバイルクリニック(巡回診療車両)事業


 五島市では、65歳以上の人口が全体の41%を上回るが、医療機関が点在しており、医師も不足している。その課題を解決するために、五島市では本年1月より医療機器を搭載し、専属の看護師が同乗したマルチタスク車両(モバイルカー)を派遣するモバイルクリニック事業が開始された。医療機関へのアクセスが難しい、主に高齢等の患者の自宅付近に配車され、医療機関にいる医師がモバイルカー内にいる患者に向けてオンライン診療を行う仕組みである。医師は医療機関にいながら、患者は自宅近くからモニター越しに顔と顔を合わせて診察をすることができる。また、遠隔聴診システムや簡単な検査が施行できる体制が整っている。この事業は五島市が東京にあるMONET Technologies株式会社へ業務委託し、市内のタクシー会社が運行を担当している。

 

本ツアーでは五島市役所内で離島医療、モバイルクリニック事業について説明を受けた後、実際に駐車場に止めてある巡回診療車両を見学する。オンライン診療についてはデモンストレーションを視察する。


          

 

【画像提供:五島市】

 

 

(3)そらいいな株式会社


 豊田通商株式会社のグループ会社として、20214月に設立されたそらいいな株式会社は、米国「Zipline」社製の固定翼ドローンを用いた自動配送を20225月から定期的に行っている。このドローンはパラシュート付きの箱を使用して、事前に定められた場所に配送品を投下し、自動で拠点まで戻ってくることができる。今までは、福江島内にある拠点から、トラックや船便で五島列島にある医療機関に医薬品を配送する物流体制だったが、従来の配送手段に加え、ドローン物流事業を通じて、緊急時などといった必要なタイミングで、また、天候や海の状況に左右されにくい、安定した医薬品のドローン配送が可能になってきている。

 また、医薬品だけでなく、日用品・食品に関しても、スーパーや商店が1軒しかない島や、商店がない島に向けて、配送を行っている。そのような島の方々の多くは、定期船や個人船、海上タクシーを利用し、週に1回から2回の頻度で福江島まで出掛け、必要な日用品・食品をまとめ買いして暮らしているが、高齢化が進み、今後まとめ買いの継続に懸念がある。20229月から嵯峨野島、202212月から久賀島の島民の方を対象に、食品や日用品を1回あたり最大4kgまでドローンで配送する実証事業を行っている。

 そらいいな株式会社は、五島地域の医療・生活を支える物流ネットワーク、「そらの物流網」を構築し、地域の物流課題の解決に向けて取り組み、事業を展開している。また、従業員数4名のうち3名が五島市で新規雇用されており、地域の雇用創出や、地域振興にも貢献している。


本ツアーでは、そらいいな株式会社を訪問し、ドローンの機材庫を視察する。また、タイミングが合えばドローンの発射現場を視察する。


※取材時にドローンが飛ばされる現場やデモを見られるかどうかは当日の状況次第です。必ず見られるかどうかは当日まで分からないことをご承知おきください。


              

 

【画像提供:左:そらいいな株式会社、文章内右上:Zipline International Inc.

 

 

 

(4)五島の椿プロジェクト


 移住者が増えつつある五島では、地域をより活性化するために、新たな取組が行われている。

 その取組の一つでもある「五島の椿プロジェクト」は、長崎県を中心とする産学官民の力を集結し、五島列島に自生する椿をベースに、商品開発から消費までを循環させることで、持続可能な産業と雇用を創出し、新たな地域活性のモデルケースを目指している。

 五島の椿株式会社は、2018年に設立された企業で、五島の椿を使ったさまざまな製品を展開。花や種、葉、果皮、酵母を利用し、商品開発を行っている。

 もともと、五島列島には椿が多く自生していたが、椿油以外にも椿を活用できないかと、研究が進められてきたのが、「五島つばき酵母」だ。当時、椿の活用に力を入れてきた五島市商工会の会長であった立石光德氏が、椿から酵母が採れるのではないかと考え、研究機関に調査を依頼し発見したのが、この五島つばき酵母だった。現在この酵母の所有権を保有しているのが五島の椿株式会社である。酵母の販売先は原則的に五島の企業とし、地元企業と一緒に酵母を使った、スキンケア商品をはじめ、日本酒、焼酎、ワイン、魚醤油、パン酵母といった多種多様なビジネスを展開している。

 また、20212月には、免疫力を向上させる乳酸菌「椿花乳酸菌」を椿の花から発見、分離にも成功し、地元の大学や研究機関と連携し、引き続き研究に取り組んでいる。

 

本ツアーでは、椿農園を視察しながら、五島の椿株式会社代表の谷川富隆(たにがわ・とみたか)代表取締役から説明を聞く。
※荒天の場合には、椿農園に行けない可能性があります。


          


【画像提供:左:五島の椿株式会社】

※椿の花は咲く季節ではないため、見られない可能性があります。



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【実施要領】

 

1.日程

2023年410日(月)~11日(火)

 

2.スケジュール

【4月10日(月)】

07:25-09:20    羽田空港→長崎空港(JAL605)

10:45-11:45    出島(国指定史跡 出島和蘭商館跡)

12:00-13:00    昼食(四海楼)

13:30-14:40    長崎大学熱帯医学研究所

15:00-15:50    長崎原爆資料館

16:00-17:00    長崎大学原爆後障害医療研究所 高村昇教授取材

 (※取材場所:国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館)

17:30-18:00    出島メッセ長崎

19:00-19:15    稲佐山展望台(夜景の自由撮影)

19:15-20:15    夕食(稲佐山レストランITADAKI

20:45      宿舎着   

 (長崎市内泊)

 

【4月11日(火)】

07:10      宿舎発

07:40-09:05    長崎港→福江港(ジェットフォイル)

09:30-12:15    長崎大学離島医療研究所及びモバイルクリニック(巡回診療車両)事業

 (※取材場所:五島市役所)

12:25-13:15    昼食(食事処武家屋敷)

13:30-15:00    そらいいな株式会社

16:00-17:00    五島の椿プロジェクト(椿農園)

18:35-19:05    五島福江空港→長崎空港(ORC78

20:25-22:05    長崎空港→羽田空港(JAL616

 

3.参加資格

原則として、外務省発行外国記者登録証保持者

 

4.参加費用

15,000円

(全行程交通費、宿泊費(朝食つき)、2日間の昼食を含みます)

※お支払い方法、キャンセル料等については、参加者にご連絡します。

 

5.募集人数

10名(各社ペン又はカメラ1名、TVは1社2名まで)

※定員を超えた場合は主催者側で調整することがあります。

 

6.備考:

1)本ツアーはG7長崎保健大臣会合推進協議会が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が運営を担当しています。

2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。

3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

4)本ツアー中に発生した事故や怪我・病気、トラブル等について、G7長崎保健大臣会合推進協議会及びFPCJは一切の責任を負いかねます。

5)新型コロナウイルスの感染が大きく拡大している場合や、取材先の状況によっては、一時的に場面に応じてマスク着用を呼びかけることがあります。

6)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。

7)ツアーの様子を記録した動画・写真・記事を、長崎県やFPCJのホームページやSNS等に掲載することがありますので、予めご了承ください。

 

7.FPCJ担当:

取材協力課 高橋、菅原 (Tel: 03-3501-3405E-mail: ma@fpcjpn.or.jp

 

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【写真左:稲佐山の夜景】

   

【写真右:五島市 武家屋敷通】

 

【写真提供:(一社)長崎県観光連盟】

 

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